講演タイトル:『慢性リンパ性白血病(CLL)』
演 者:伊豆津 宏二 先生(国立がん研究センター中央病院 血液腫瘍科)
日 時:10月25日(金)
場 所:日本橋ライフサイエンスハブ8F D会議室
今月は、慢性リンパ性白血病(CLL)をテーマにご来場頂きました。
クローズドセミナーであるため全ての情報は掲載できませんが、ポイントとなる情報をお伝えしていきます。
今回は「CLLの診断・関連疾患、未治療CLLの治療、再発・難治性CLLの治療(未承認薬を含む)」を中心にご講義頂きました。
CLLの診断・関連疾患
CLLとは
まず、慢性リンパ性白血病(以下CLL)はどんな病気かというと、血液細胞を作る場所である骨髄で、腫瘍性B細胞という病的なリンパ球が増え、血液中で増える病気です。リンパ節や脾臓にもその細胞が入り込み、腫れます。 骨髄は、本来限られたスペースで畑のようなものであり、その中に病的な細胞(雑草)が増えると、正常な細胞(穀物)が育たなくなってしまいます。 その結果、貧血や血小板減少などの症状が現れます。 その他リンパ節が腫れると、周りの臓器を圧迫します。更に、骨髄やリンパ節に病的な細胞が多いと、病的な細胞が出したサイトカインという物質が熱を出したり、体重を減少させたり、夜間に汗が出るなど、B症状と呼ばれる全身症状が現れます。 CLLと診断されても非常に経過が大人しく、命に関わらず、場合により治療を必要としないまま一生を終える人もいらっしゃいます。 CLLは成熟したB細胞というリンパ球から起こる病気です。(上図参照) 慢性リンパ性白血病と急性リンパ性白血病の違いは、経過の違い(慢性か、急性か)だけではありません。慢性リンパ性白血病は、成熟したB細胞の腫瘍で、急性リンパ性白血病は、未熟な造血幹細胞という血液の元になる細胞から起こる腫瘍です。 慢性リンパ性白血病と慢性骨髄性白血病の違いは、骨髄性は造血幹細胞の異常です。骨髄系細胞といい、白血球のうちリンパ球以外の好中球・好酸球・好塩基球などの、顆粒球と言われる種類の白血球が増える腫瘍です。 CLLの定義は、こちらになります。 【慢性リンパ性白血病の定義】 CLLは成熟B細胞が血中に1μlあたり、5000以上を占めるときにCLLと定義します。また、リンパ節が腫れる場合もありますが、進行していない人は全く腫れていない人もいらっしゃいます。 SLLはCLLと同じような細胞がリンパ節にあり、リンパ節が腫れているか、血液を採取してみると、腫瘍の細胞が全くいない、あるいはいても5000より少ない場合をいいます。 MBLはリンパ節も腫れていないし、病気の細胞も少ない病態ですが、最近注目されています。CLL患者さんの診断
CLL患者さんは、どのように診断されるかというと、多くの患者さんは無症状・全く症状がなく、検査で分かります。なぜ分かるかというと、検診の時に血算という白血球の数や貧血がないかをみる検査があり、その検査で白血球が多いことで分かります。(第1段階) そして、検診では白血球分画という白血球の中身を診ます。(第2段階) 更に、まだ診断はしきれないので、最終的には精密検査として血液を用いてフローサイトメトリー検査をします。その結果、フローサイトメトリーの結果や染色体検査(FISH)、病理検査の結果を総合的に判断してCLLと診断されます。単クローン性Bリンパ球増加症
また、最近CLLのような細胞が血中にあるが、CLLではない、がんではない、という状態がある事が分かってきました。これは単クローン性Bリンパ球増加症(MBL)と呼ばれます。 1つのリンパ球(単クローン)に由来するリンパ球の増殖で、単クローン性のリンパ球が500~4999/μLの場合、経過観察の対象となります。なおかつ、CTなど様々な検査をしても、リンパ節などは腫れていない時にこの病気と言われます。 これはフローサイトメトリー検査で初めて診断され、経過観察をしていると年に1-2%、CLLやSLLに進行するリスクがあります。(しかし、20年経っても80%内外の方は進行しないので、MBLと診断されても血液がんになったと心配する必要はありません) また、単クローン性のリンパ球が<500μLの場合は、CLLやリンパ腫に進行することは稀で、経過観察は不要とされています。CLL類縁疾患
【CLL類縁疾患】 血液中にリンパ球が多い場合、CLL以外に考えるべき血液がんがいくつかあります。 多くはB細胞性やT細胞性腫瘍です。 病名に白血病とリンパ腫が混在していますが、これはどんなパターンで出現するかにより、名前が変わりますが、本質的には変わりません。CLLの病期分類と予後
CLL疑いであると来院される患者さんでも、フローサイトメトリー検査や病理検査などで、CLLか他の病気と分けて診断されます。 CLLと診断された患者さんでは、ステージ(病気の進行具合・病期)を分けて診断されます。診断の方法には2つあり、Binet病期とRai病期があります。 CLLは血液の病気で、全身に散らばっている為、従来のがんの病期分類で使用される限局か・広がっているか、といった病期分類ではなく、腫瘍の細胞がどれだけ体内にあるか「量」としての分類になります。 Binet病期、Rai病期は、共に「リンパ節が腫れているか否か、腫れている程度、ヘモグロビン(赤血球の指標)、血小板減少の程度」により分類します。 しかし、これらの分類毎の予後として書かれているデータはいずれも古いものですので、気にしない方がよいです。 Binet病期Aの、無症候性の患者さんは、治療を始めず、経過観察をするのが一般的です。無治療経過観察というのは、病院に行かなくても良い、という意味ではなく、症状が出なくても定期的に病院で検査数値を確認しておくことで、そろそろ治療を開始した方が良いという判断ができます。 また、無症候性のうちにすぐに治療を開始するのと、「症候性」となってから治療を開始するのでは、生存期間には差がなく、不利にはならないそうです。CLL治療開始のタイミング
では、どんな時になれば治療を開始するのかというと、病期で言うと、先ほどのBinet病期分類のCになると、治療が必要になります。 例えば、 ・貧血(Hb<10g/dl)・血小板(10万/μl) ・脾臓が非常に腫れて、患者さん自身が触れて分かる程になる(季肋下≥6㎝) ・リンパ節の腫れ(≥10㎝) ・進行性リンパ球増加(2カ月でリンパ球が1.5倍に増加するのが半年以内で起きるなど) ・ステロイド不応性の自己免疫性貧血・血小板減少症 ・全身症状(B症状/CLLのために発熱・夜間に汗が出る・体重減少など 、顕著な倦怠感) などが挙げられます。
CLL患者さんの予後
ではCLL患者さんの予後はどうかというと、CLL患者さんの半数以上の方は治療の必要なく一生を過ごせます。しかし、従来の治療で完全に治癒することは難しいのが現状です。 CLLと診断された患者さんで、いくつかの予後を左右する因子というものが幾つか知られています。 【CLL細胞生物学的予後不良因子】 「免疫グロブリン遺伝子重鎖可変領域(IGHV)」 ・IGHVなし(Unmutated/未変異) ・IGHV3.21 「フローサイトメトリー」 ・CD38(単鎖Ⅱ型膜糖タンパク)陽性 ・ZAP70(非受容体型タンパク質チロシンキナーゼ)陽性 「染色体異常(FISH)」 ・Del(17p)17p欠失 TP53遺伝子変異 ・Del(11p)11p欠失 ATM遺伝子変異 まず、免疫グロブリン遺伝子変異と予後についてですが、 CLLは成熟B細胞由来の腫瘍だが、成熟B細胞には2つのタイプがあるのではないかと言われています。それに合わせてCLLも2つのタイプがあると言われています。具体的には、免疫グロブリン遺伝子重鎖可変領域(IGHV)に変異があるタイプと、ないタイプで、化学療法の効き目や、生存期間の長さがちがうといわれています。 染色体異常と予後については、 FISH(詳細に染色体異常を見る方法。10~20年以上前から使用されている検査)で検査した場合、17p欠失であれば、非常に予後が悪いと言われます。 17p欠失という染色体異常では、TP53遺伝子(細胞が元気に生きていくうえで、遺伝子に傷がついた時に、その傷がついた細胞がちゃんといなくなるために必要な、または抗がん剤を使用した時に、抗がん剤の効き目が出るために必要なもの)というものがあり、これに遺伝子変異が有るか無いかによっても予後が変わる事が分かっています。 また、近年CLL患者さんの予後予測モデルという、生存期間の長さを予測するものが発表されました。TP53変異(17p欠失の有無)や免疫グロブリン遺伝子変異、ステージ、年齢などにスコアポイントがついていますが、TP53変異が有ると、非常に高い点数が付き、生存期間が短くなります。 したがって、CLLと診断された方にはこのスコアが治療方針を決めるために重要となりますが、現在日本ではTP53、IGHV変異を検査で調べる事が出来る病院が少ない、という問題があります。 更に、CLL患者さんの経過を診ていると、リヒター症候群(リヒター形質転換)を発症される方がいます。リンパ節が腫れ、数カ月で徐々に大きくなる経過の事をいい、別のタイプの速い悪性リンパ腫が続発します。 ここまでが総論で、これからは治療の話になります。未治療CLLの治療
以下の物は、欧米でガイドラインに掲載されているものです。その中の水色枠が、2016年8月までに日本で使用できたものです。 赤枠は現在日本で承認されているものです。 【未治療CLL/SLLに対する治療選択肢の図】 最近は、使用できる薬がかなり増えました。それでもまだアメリカでの承認に比べて遅れています。CLLに対するフルダラビン
治療として、しばらくカギになる薬だったのが、フルダラビンです。これはプリン誘導体という種類の薬です。元々抗がん剤は、増える細胞に対して効くもので、CLLのように経過がゆっくりなものには効きづらいと言う点がありました。 しかし、このフルダラビン(FLU)は、増えていない腫瘍細胞に対しても効果的です。 フルダラビンにシクロホスファミドという薬の併用療法(FC)と、フルダラビン単剤療法(FLU)やアルキル化剤(クロラムブチル/CB)を比べた試験では、併用療がより効果が高く、長く効き、副作用も軽いという結果が出ました。 フルダラビンは、若干毒性があり、好中球数やリンパ球数が減り、感染症のリスクが上がる、といったような問題があります。特に高齢の方で、腎機能が弱っている方にはキツイ薬で、副作用も多くあります。 65歳以上で、フルダラビンとクロラムブチルを比べた試験では、フルダラビンは長く効きますが、無増悪生存期間は変わらず、副作用もきつく、これで亡くなる方も多いので、高齢の方ではフルダラビンの有用性が低いと言えます。 しかし、治療の選択は年齢で区切る事は妥当かという問題があります。区切りの年齢には科学的根拠が乏しく、年齢で区切るよりも臓器障害や併存疾患の有無を参考にする必要が、あるのではないかと言われています。 それを数値化する方法として、臨床試験や海外の治療の選択として使われている、CIRSというスケールがあります。これが高いほど臓器障害は多く、リスクがあります。 心臓系・呼吸器系・腎系などの臓器毎に項目があり、それぞれの臓器系で重症度(軽度、中等度、臓器障害などがある重症など)スコアを足していき、各臓器の合計点がCIRSの点数となります。点数が高いほど、臓器障害があり、合併症もあり、強い治療をする場合にはリスクになります。 フルダラビン・シクロホスファミドにリツキシマブを上乗せする併用療法(FCR)と、フルダラビン・シクロホスファミド(FC)の比較試験では、FCR療法が効いている期間が長いだけではなく、生存期間が長いという結果が出ました。 これにより、臓器障害や合併症などが無い人は、治療が必要になれば、FC療法よりFCR療法をした方が良いと言われるようになりました。IGHV遺伝子変異有と17p染色体異常欠失のフルダラビン
IGHV遺伝子変異有無によるFCR治療後の方の無増悪生存期間は、アメリカの長期フォローアップの結果によると、FCR療法ではIGHV遺伝子変異がある患者さんの生存曲線で10年目以降には治ったのではないか、とも思われるような結果が出ました。 17p染色体異常欠失のある患者さんの初回治療後の予後は、残念ながらFCR療法でも限界があり、他のよりよい治療をさがす必要があります。フルダラビンの副作用について
FCR療法には好中球減少などの血液毒性があります。遷延性好中球減少症といって、治療後1年を経てもまだ好中球が少ない方が10-20%いらっしゃいます。 FCより副作用の軽い治療としてBR(ベンダムスチンとリツキシマブの併用療法)があり、BRとFCRの比較試験が行われました。ベンダムスチンはフルダラビンよりも好中球減少症の程度が軽く、腎臓が多少悪くても使用できます。 しかし、無増悪生存期間ではやはりFCR療法の方が良いという結果が出ました。ただし、生存期間で差がなく、副作用も軽いのでBRも治療の選択肢として挙がっています。高齢のCLL患者さんに対する治療
ここまでは、60歳未満や臓器障害や合併症がない方のお話しでした。しかし、実際多くの患者さんは65歳以上の高齢の方になります。 そこで、高齢のCLL患者さんに対する治療が別に必要となります。高齢の未治療CLL患者さんに対するベンダムスチンとクロラムブチル(CB)の比較試験では、ベンダムスチンが無増悪生存期間が長く、より長い間効果が続くという結果が出ました。なお、CBは、今でも日本で承認されていません。 ベンダムスチンはCLLに有効な治療法の1つであると言えます。CLLに対する「新しい治療薬」
BTK阻害薬、BCL2阻害薬、PI3K阻害薬などCLLに対する新しい治療薬が登場し、CLLの治療は大きく変わってきています。 CLLは成熟B細胞ですが、B細胞は細胞の表面に免疫グロブリンタンパク(別名 B細胞受容体/BCR)を出しています。このBCRは、腫瘍・正常のB細胞でも生きていく上で非常に重要で、B細胞に抗原が付着すると、刺激が伝わり、その細胞が長生きするように・増えるようにという信号が伝わります。 腫瘍のB細胞では、信号を伝えるリレー選手のような役割を果たすタンパク質の働きを抑える作用の薬が開発されています。代表的なものがBTK阻害薬です。 高齢の方で未治療CLL患者さんに対する治療で、BTK阻害薬で一番代表的なイブルチニブとCBの比較試験では、無増悪生存期間・生存期間は共にイブルチニブが良いという結果が出ました。 CLL患者さんでは、多くの方は治療前に倦怠感や貧血、血小板減少などがありますが、イブルチニブは従来の抗がん剤のように細胞を壊す薬ではないので、骨髄抑制という副作用がありません。 イブルチニブでは、完全奏効といってリンパ節の腫れが完全に消失したり、血液からCLL細胞が消失する状態になること(完全奏効)は少ないですが、だいぶ改善して、ある程度腫瘍は残った状態でとどまる、部分奏効になることが多いのが特徴です。 同じく、高齢の方で未治療CLL患者さんに対するイブルチニブ単剤とイブルチニブとリツキシマブ併用(IR)、BRの3つの比較試験では、イブルチニブ単剤とIRの無増悪生存期間は同じくらいで、BRよりイブルチニブを含む治療の方が良いが、リツキシマブを併用するメリットはあまりないそうです。 若年者で未治療CLLの方へのIRとFCRの比較試験では、無増悪生存期間や生存期間でIRの方が良いという結果が出ました。有害事象はIRの方が軽度ですが、IRには頻度は低いが注意するものとして、心房細動や重大な出血が挙げられます。 イブルチニブを使用すると、リンパ節や脾臓の腫れは2,3週間で収まりますが、採血をすると治療はよく効いているように見えても、白血球(リンパ球)数が増加するようになり、急に悪化したようにみえます。ただ、一過性の現象であり、悪くなっているわけではないそうです。 先生によると、CLLに対する初回治療選択肢として若年者でも高齢者でもイブルチニブが勧められるそうです。ただし、若年者でIGHV変異がある場合にはFCR療法も選択肢になるようです。 イブルチニブは、効果が見られている場合、副作用で継続できなくなるまで継続する必要があり、中止すると治療効果は消失するそうです。再発・難治性CLLの治療(未承認薬を含む)
CLLではイブルチニブなど分子標的薬は、副作用で使用できなくなるまで、効いている限り、その薬を使用することが勧められます。(ベネトクラクスは除く) しかし、従来の抗がん剤を使用する際、一定期間使用すると一定期間は休む必要があります。 よって、前の治療が長く効いて、再発が2,3年以降であれば再び前の治療を行う事も選択肢の1つになります。BCL2阻害薬 ベネトクラクス
今、再発や難治性の方に一番注目されているのはベネトクラクスというBCL2阻害薬という薬です。BCL2は、細胞のミトコンドリアという機関にあるたんぱく質で、細胞のアポトーシス(細胞の自然死。個体をより良い状態に保つために積極的に引き起こされる、プログラムされた細胞死。)を抑制する働きがあります。 BCL2があると、細胞が死ににくくなり、CLLもBCL2が頑張って働いているため、細胞が死ににくい状況になります。ベネトクラクスは、このBCL2の働きを抑えるという薬です。 ベネトクラクス・リツキシマブの併用とBRの比較試験では、無増悪生存期間はベネトクラクスとの併用が明らかによく、生存期間も良いという結果が出ましたが、腫瘍崩壊症候群(不整脈など命に関わる副作用がある)という、CLLが壊れる事により起こる副作用があり、注意深く治療する必要があります。 腫瘍が大きい時は、徐々に薬の量を増やして、入院など様子を見ながらリスク管理をします。 ベネトクラクスは基本は併用療法ですが、リツキシマブの副作用が強く出る方などには単剤療法も可能です。17p欠失の抗がん剤が効きにくい方や、イブルチニブ治療後の方でも効果が認められています。PI3k阻害薬
また、PI3k阻害薬も海外では使用されるようになりました。(日本では未承認) 一番最初に承認されたのは、イデラリシブです。これはPI3Kδ阻害薬で、リツキシマブとイデラリシブの併用療法とリツキシマブ単独の比較試験では、イデラリシブを併用した方が効果が長く効くという事が分かりました。 下痢・腸炎・肝臓(薬剤性)障害などの特徴的な副作用があります。 もう1つ海外で承認されているPI3k阻害薬にデュベリシブというPI3kγδ阻害薬があります。こちらも日本では未承認ですが、CLLの患者さんを対象とした第2相治験が実施されています。CLLに対する同種移植
多くの患者さんは化学療法では治せず、特に若い人でFCRをしてすぐに再発をするような方では同種造血幹細胞移植が治療選択肢となっていました。 しかし、近年ではイブルチニブやベネトクラクスなど使用できる薬が増えてきたので、同種移植の意義を検討する必要が出てきました。 また、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の再発・難治例に対する治療として登場してきたCAR-T細胞療法もCLLに対する臨床試験が海外で始まっていますが、CLLに対して移植に代わるものになるかは、まだ分かっていません。(日本で承認されているCAR-T細胞療法のキムリアは、CLLでは適応外)まとめ
全体のまとめです。 ・CLLはゆっくり進行するタイプのB細胞腫瘍です。 ・血球減少、全身症状、リンパ節腫大による圧迫症状が見られたら治療開始が勧められます。(IWCLL基準)これらが無ければ、経過観察を行います。 ・BTK阻害薬、BCL2阻害薬が開発され、この数年間で治療法がh2大きく変わっており、経口薬(飲み薬)が治療の中心になってきました。 日本でも治療薬の欧米とのギャップが大分解消されてきました。 ・一方で、治療選択に必要な検査や管理は複雑になっており、治療の専門性が高まっています。質疑応答・感想
質問コーナでは「日本にはCLL専門医はいるか」「CLL患者が他のがんにかかりやすいがんはあるか」「グロブリン遺伝子変異や染色体異常の検査のタイミングは」などの質問が寄せられました。 「CLLは日本では少ないが、日本では専門医がいるか。またどれ位いるか」という質問には、CLLが専門と名乗れるだけ専門性が高い医師はいないと思います。血液内科ではどこでも診るが、症例が少ないので、臨床経験が豊富な医師は少ない現状です。血液内科医では悪性リンパ腫が得意な医師が診ている事が多いので、そちらの先生を探すのが良いかもしれません。 「CLL患者が他のがんにかかりやすいがんはあるか」という質問には、個々に患者さんが気を付けるものはないが、治療との関連でFCRなど従来の抗がん剤では、頻度は少ないですが別の血液がんが二次的に出る可能性があります。 「グロブリン遺伝子変異や染色体異常の検査のタイミングは」という質問には、免疫グロブリン重鎖変異などは、1人の患者さんで変わる事はないので診断前か治療前に一度調べれば大丈夫です。 染色体異常の17p欠失は、再発時に出現する事もあるので、治療が必要なタイミングのたびに検査する事を勧めます。 当日ご聴講された方々より、「知りたいことを簡潔に説明していただき、不安も随分解消された」「総論から最新の治療まで教えて頂けるのが素晴らしいです」「CLLのイベントは少ないので、またあったら参加したい」など、多くのご感想が寄せられました。 日本では症例が少ない慢性リンパ性白血病について、総論から最新の治療薬について詳細に渡り、分かりやすい言葉を用いながら説明して頂き、理解が深まりました。伊豆津先生、ご参加された皆様、本当にありがとうございました。