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第44回OMCE 大腸がん セミナーレポート


  • [公開日]2019.09.25
  • [最終更新日]2019.10.12

講演タイトル:『大腸がん』
演    者:吉野 孝之 先生(国立がん研究センター東病院 消化管内科)
日    時:8月23日(金)
場    所:日本橋ライフサイエンスハブ8F D会議室

今月は、大腸がんをテーマにご来場頂きました。

クローズドセミナーであるため全ての情報は掲載できませんが、ポイントとなる情報をお伝えしていきます。

今回は「基礎知識と切除不能大腸がんの1次・2次治療、大腸がんの術後補助化学療法、大腸がんの未来」を中心にご講義頂きました。

基礎知識と切除不能大腸がんの1次・2次治療

大腸がんの基礎知識

まず、基本的知識として、「標準治療」「治験」「プレシジョンメディシン」について解説をして頂きました。

「標準治療」とは、「現在の最高治療」という意味です。この標準を作るために沢山のエネルギーと時間が費やされてできています。

「治験」とは、「夢のある次世代治療」です。リスクを伴い、必ずしも成功するとは限らないが、成功すると次の標準治療となります。

「プレシジョンメディシン」とは、その患者さんにあった最適化治療です。

大腸がんは男女計で罹患数1位で、最も発生しやすいがんと言えます。死亡率も男性では第3位、女性では第1位で、依然として死亡率が高いがんです。(国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」による)

大腸の主な仕事は、水分を吸収し、ドロドロの便を固形にし、便の通り道となります。大腸がんの発生部位は、直腸とS状結腸だけで7割ほどを占めます。

早期大腸がんの症状はありませんが、がんが進行してくると血便などの異常が現れます。検診は便潜血検査をし、内視鏡検査、CTなどの精密検査へと進みます。

短期間で発生するものや、見つかりにくい物もあり、見つかった時には進行がんで見つかる事も少なくありません。一番大切なことは、ちゃんと検診を受け、早期に見つける事です。

大腸がんの診断のための分類は、日本では「大腸がん取り扱い規約」を用いる事が主流です。

患者さんで、がんの大きさを心配する方が多いそうですが、大事なことは、大きさより、深さより、広がりである、と先生は仰いました。

大腸がんの5年生存率は、がんが早期なほど高く、予後は良好です。早く見つかる事が最善ですが、進んだ状態で見つかっても、これに対する適切な治療をすると、治らない訳ではありません。再発を防止するための治療開発が必要です。

では、大腸がんの化学療法の治療方針を左右するのは何かというと、「根治切除ができるか、できないか」です。それにより、治療の目的も変わってきます。

まず状態を把握し、根治切除が可能かどうか調べます。可能であれば、目的は「根治」となり、手術・術後補助化学療法と治療が進みます。
根治切除が不能な場合は、目的は「延命」となり、治療は全身化学療法となります。

この化学療法が最近では予想より効果が現れ、手術が可能になるという進歩もあります。手術可能になる患者さんが増えるのが、未来型治療です。

未来型治療を増やすには、1次治療がとても大切になります。「延命目的」の化学療法では、「治らないなら、治療はしない」という方もいらっしゃるそうですが、現代では、何もしないのと治療をするのでは、半年の生存が3年になる、といった臨床試験の結果も出ています。

切除不能大腸がんの1次・2次治療

どんな治療をすれば良いかとネットで調べる患者さんも多いそうですが、ネットで良く出てくるのは民間治療です。しかし、問題のある治療もあります。

一番正しいのはガイドラインです。ガイドラインは、国内の沢山の大腸がん専門医が年月をかけ、必死で作成したものです。ガイドラインは約4年毎に改訂されており、今年2019年度版が刊行されました。

現在、用いられている薬は以下の通りです。

これらを1つずつやるのではなく、組み合わせて治療に使用します。どの組み合わせでやるのが良いか、というのが研究されて分かってきています。


【切除不能大腸がんの一次治療二次治療

抗がん剤をちゃんとやることが大切で、1次・2次治療では抗がん剤に分子標的薬を組み合わせます。どの組み合わせが良いかは、患者さんの状態や想い(副作用の考え方)で決めます。

1次治療を決める際には、①全身状態②がん遺伝子検査③原発部位 を参考にします。

採血をして、糖尿病や高血圧などの既往疾患の状態、年齢、元気があるかなどを参考に全体状態を知ります。次に遺伝子の検査をすることで薬が決まります。最後に、がんの原発部位は左か右か(左の腸/直腸、S状結腸 か、それよりも奥/上行結腸などか)を調べ、これら3つを掛け合わせて1次治療を決めます。

薬物療法の切り替えのタイミングは、①効かなくなった時②患者さんが続けていくのが辛い時③医師が副作用が強いと判断する時 になります。

1次治療を始めると、止められないと思う患者さんもいらっしゃいますが、そうではありません。治療であり、指導ではないので、苦しいのを頑張る必要はなく、気にせず2次治療へと薬を変えながらも治療を続けていく事が大切だそうです。

XELOX療法では、持続注入ポンプもポートの埋め込みも不要で飲み薬になります。元々患者さんの既往疾患で処方されている薬の服薬状況を確認し、ちゃんと飲めていない場合は注射のFOLFOX療法を選択することも有ります。

起こりやすい副作用が発生した時に使用してもらう薬をあらかじめ出しておくと、患者さんの不安も軽減します。

FOLFOX・XELOX療法による吐き気・下痢は放置しておくと命取りになることがあります。薬を出しておき、発熱や下痢の症状が止まっていると、多少は動くことが出来るので、その状態で必ず翌日に病院に行くことが大切です。

切除不能大腸がんの1次治療・2次治療のまとめとして、

・FOLFOX(XELOX)とFOLFIRIはどちらから始めても治療成績は変わりません。
RAS遺伝子野生型では、ベバシズマブとセツキシマブ/パニツムマブはどちらから始めても治療成績は変わりません。
・2次治療は、1次治療で使用していない薬を使います。
・(必ずしも当てはまらない事もありますが)どちらから始めるかは、副作用の種類で決めることが多いです。
・一般的にはFOLFOX(XELOX)+分子標的治療薬から開始することが多いです。(脱毛をさける、使いやすさから)

大腸がんの術後補助化学療法

術後補助化学療法とは、根治切除手術が行われた後に、再発を抑える目的で行う化学療法のことです。目では見えない、微小ながんを標的としています。

術後補助化学療法をすると、再発率は減りますが、誰が再発するのかは、現在分かりません。例えば、100人が術後補助化学療法をやっても、手術単独治療後に再発の方が40人いらっしゃったとして、術後補助化学療法をすると再発は30人にできます。

その場合、本当に化学療法が必要な方は10人しかいなかったという事になります。

再発後にまた手術をすれば良いのではないか、という意見も出そうですが、再発した場合、約70%の方は切除不能(ほぼ治らない段階での再発)となってしまいます。

術後補助化学療法は、「現在は治せるチャンスがあるので、抗がん剤を追加しよう」という考えで行われます。

では、術後補助化学療法にどのような方法があるかというと、XELOX療法(ゼローダ+オキサリプラチン)を行うのが標準で、オキサリプラチンの有害事象等を許容できない場合は、5-FU系単剤(ゼローダ)を行います。

治療期間は、半年間施行するのが標準ですが、再発低リスク例ではXELOXの3カ月間投与も治療選択肢となる、新しい研究結果もあります。

また、基本的にイリノテカン(FOLFIRI療法)、分子標的治療薬は有効性が証明されていないため、使用しません。

更に、最初に説明のあったように、この方が再発するであろう、という事はわかりませんでしたが、未来では手術後に採血をするだけで高リスクな患者さんが分かるような治療が生まれる可能性もあるそうです。

大腸がんの未来

有望な治験結果を知ろう

2019年6月18日に、ロズリートレク(一般名:エヌトレクチニブ)が製造販売承認を取得し、また、Foundation One CDxの効果にNTRK1/2/3融合遺伝子が追加されました。これは、世界に先駆けて日本で一番早い承認です。

NTRK融合遺伝子陽性固形がん患者さんは、正確な頻度は分かっていませんが大腸がんでは0.2%いらっしゃるとも言われています。小児では割と多く、27%程の方にいらっしゃるそうです。

日本では5%の方にいらっしゃる、BRAF遺伝子変異のある大腸がんの方への新しい治療薬は、BRAF阻害薬のエンコラフェニブ、抗EGFR抗体薬ではセツキシマブ、MEK阻害薬ではビニメチニブなどがあります。

プレシジョンメディシン実現への挑戦

がんに罹患し、何も治療しない場合は亡くなってしまいますが、従来の治療をすることで、死までの経過を緩やかにすることが出来ます。

特定の遺伝子異常に対する個別化医療(プレシジョンメディシン)では、進行がん患者さんの予後は劇的に改善されています。

また、現在のプレシジョンメディシンは、患者さんのがん細胞から調べているので、内視鏡や針生検など、痛みが伴います。しかし、これからは更に進歩し、リキッドバイオプシーという、血液中のがん細胞を用いた検査の開発がされています。

従来の腫瘍組織を用いたパネル検査では、結果が出るまでに早くても6週間ほど、長い場合は2カ月ほどかかっていました。しかし、リキッドバイオプシーによるパネル検査では、1週間で結果が判明します。

がんの遺伝子異常は、様々な治療をした後で確認すると、遺伝子異常が変わる事があります。リキッドバイオプシーでは、その患者さんの今の状態が分かります。


先生は最後に、「患者さんは目の前の先生が人として付き合えるか、付き合えるならその先生を信じる事。医療者には、患者さんを幸せにするためには自分自身も幸せになる必要がある」と語り、締めくくりました。

質問コーナでは「腫瘍マーカーとリキッドバイオプシーの違いは」「遺伝子検査はいつ頃整備されるか」「リキッドバイオプシーで偽陽性の確率は」などの質問が寄せられました。

「腫瘍マーカーとリキッドバイオプシーの違いは」という質問には、
腫瘍マーカーはがん細胞に特徴的なものではなく、正常な腸の細胞にあり、特にがん細胞に多く出る、という事に過ぎないそうです。がん細胞から分泌されたものを診ます。また、がんが再発してもマーカーは上がらないこともあります。マーカーを上回る分泌物をがんが作っていない時もあるそうです。

一方、リキッドバイオプシーはがん細部から漏れ出たがんのDNAを診ます。腫瘍由来のDNAは、腫瘍の物なのでがんが大きくなると確実にわかります。しかし、肺転移では検出されずらい、小さく・数も少ないとがん由来のDNAは血液に漏れ出にくい、という点もあります。

「遺伝子検査はいつ頃整備されるか」という質問には、
がんゲノム中核病院では整っているはずです。整っていない理由は、遺伝外来がない、などの理由があるかもしれません。整備を待つより、整っている病院へ行く事も勧められます。

「リキッドバイオプシーでで偽陽性の確率は」という質問には、
0ではありません。加齢などにより、がんの異常ではなく、正常遺伝子から検出される場合もあります。逆に偽陰性は、膵臓がんでは2-3割、胃がんでは1-2割、大腸がんでは5%以下、とがん腫により異なります。

組織で検査する方が良いか、血液で診る方が良いかは研究中だそうです。

当日ご聴講された方々より、「非常にわかりやすく説明してくれてよかった」「知識がない方向けにもわかりやすかった」「知りたいことを教えてくれた」など、多くのご感想が寄せられました。

ますます進化する大腸がんの最新治療を、リキッドバイオプシーの第一人者である吉野先生にご講義して頂く貴重な機会でした。吉野先生、ご参加された皆様、本当にありがとうございました。

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