第38回OMCE 急性骨髄性白血病(AML)セミナーレポート


  • [公開日]2019.03.28
  • [最終更新日]2019.05.24

講演タイトル:『急性骨髄性白血病(AML)』
演    者:照井 康仁 先生(がん研究会有明病院 血液腫瘍科)
日    時:2月22日(木)
場    所:日本橋ライフサイエンスハブ8F D会議室

今月は、急性骨髄性白血病(AML)をテーマにご来場頂きました。

クローズドセミナーであるため全ての情報は掲載できませんが、ポイントとなる情報をお伝えしていきます。

今回は、急性骨髄性白血病(AML)について、基礎知識・治療・最近の話題を中心にご講義頂きました。

急性骨髄性白血病(AML)の基礎知識

白血病とは

まず、白血病とは血液がんのひとつです。血液細胞(赤血球、血小板、白血球)が骨髄で造られる段階でエラーが起き、がん化したものです。がん化した細胞(白血病細胞)は骨髄内で増殖します。

正常な血液細胞の減少や貧血、発熱・感染、出血傾向、脾臓腫大などの症状が出ます。また、日本では1年間に10万人あたり男性で11.4人、女性で7.9人の方が罹患されます。(2011年データ)

また、白血病の原因について一般的には遺伝子や染色体が傷つくことで発症すると言われています。基本的に遺伝はしません。

急性骨髄性白血病(AML)とは

造血幹細胞から血液細胞(白血球、赤血球、血小板)へと成熟する途中の細胞ががん化したものです。リンパ球以外の白血球、赤血球、血小板に成熟する予定である細胞ががん化した場合に、急性骨髄性白血病(AML)となります。

原因は不明で、放射線や抗がん剤などの化学物質が原因と考えられる症例もあります。稀に先天性遺伝子異常に関連した小児白血病がありますが、遺伝や伝染はしません。(ウイルスの関与ははっきりしていない)

診断には病状の確認や血液検査、骨髄検査(骨髄穿刺吸引、骨髄生検)の結果を参考にします。骨髄検査は重要な検査です。白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫などの確定診断や病期診断、治療効果判定に必要です。

主な症状は、赤血球減少による貧血症状(疲労・倦怠感)、好中球減少による発熱(感染・腫瘍熱)、血小板減少による出血症状(歯肉出血・鼻血・皮下出血)です。

分類法

白血病は治療方針を決定するために血液検査や骨髄検査の結果から診断後、形態所見や細胞化学所見、染色体・遺伝子検査などをもとに分類します。

40年程FAB分類と呼ばれる分類法が使用されてきましたが、徐々にWHO分類に統一されてきています。 この6~8年で遺伝子異常をみる技術が優れ、分類が細かくなりました。

急性骨髄性白血病(AML)の治療(抗がん剤を中心に)

近年、急性骨髄性白血病(AML)の治療は非常に進歩しています。治療の基本は、骨髄中に増えた白血病細胞を死滅させ、正常な血液細胞を増やすことです。

抗がん剤を用いた化学療法は、急性骨髄性白血病(AML)の第一の治療法です。化学療法による治療は、「寛解導入療法」「地固め療法」の順で行います。

寛解導入療法

第一段階となる寛解導入療法は「寛解」を目標とします。寛解とは、骨髄中の白血病細胞が全体の5%以下の状態を言います。通常7~10日間抗がん剤を投与することで、白血病細胞だけではなく正常な血液細胞も骨髄の中から減少します。

赤血球や血小板が極端に減少した際には輸血をしますが、白血球は輸血できません。抗がん剤投与後、自然に白血球が増えるのを約4週間待ちます。

白血球が回復した時に骨髄穿刺を行い、寛解状態であるかどうかを検査します。約8~9割の患者さんがこの段階で寛解状態になることを期待します。

前骨髄球性白血病(M3)の治療

急性前骨髄球性白血病(M3)は難治の白血病と言われており、治療に用いる抗がん剤が異なります。M3では、他のタイプの治療で用いられる抗がん剤に加えてレチノイン酸(ビタミンA誘導体、ATRA)を使用します。

寛解導入療法中には他のタイプの白血病の治療ではみられないATRAによる副作用と、出血を起こしやすい状況(ATRA症候群)です。しかし、これを乗り切ることが出来れば、M3は急性骨髄性白血病(AML)の中でも非常に予後の良いタイプと言えるそうです。

地固め療法

寛解導入療法で、寛解が得られたと判定されたら、血球細胞が回復を確認後、すぐに第二段階となる地固め療法を行います。 地固め療法の目標は、白血病の再発を防ぐことです。

寛解導入療法で5%以下になった白血病細胞を更に死滅させ、根治を狙います。地固め療法が終了し、効果判定にて寛解を維持していた場合、急性骨髄性白血病(AML)のタイプや年齢・体の状態を考慮し、治療を行わずに経過を見る場合と造血幹細胞移植を行う場合があります。

移植について

造血幹細胞移植(特に同種移植)は、ミニ移植、HLA不適合移植、臍帯血移植の開発により、対象患者さんの幅は広がっています。

抗がん剤や放射線だけではなく、移植後に起こるドナー(提供者)の免疫反応の力も使って白血病細胞を死滅させる治療です。

また、移植片対宿主病(GNHD)の克服も課題となっています。これは、ドナー由来のリンパ球が患者さんの正常細胞を異物として認識して攻撃する現象の事を指します。(移植片=ドナー、宿主=患者)

抗がん剤の副作用と対策

急性骨髄性白血病(AML)の最近の話題

新たに承認された薬

日本では2018年12月にギルテリチニブフマル酸塩(商品名:ゾスパタ)が承認されました。適応は、再発または難治性のFLT3遺伝子変異陽性の急性骨髄性白血病(AML)の患者さんです。

FLT3変異は、急性骨髄性白血病(AML)の患者さんの約30%で認められます。これは、保険承認が通っているので、遺伝子検査をすると使用が可能です。

また、移植片対宿主病(GNHD)の新薬も承認(イブルチニブ/FDA承認)、治験(ルキソリチニブ/国内医師主導治験)がされています。

先生は最後に、「急性骨髄性白血病(AML)の症状は様々で、治療薬の開発が進んでいます。治療はチーム医療で行われています。血液のがんは他のがんと比べると、よく抗がん剤が効く分類なので、乗り越えましょう」と仰り、締めくくりました。

質疑応答では、会場からは、地固め療法は必ずしなければいけないのか、最新の5年生存率は、辛い副作用で注意することは何か、などの質問が挙がりました。

地固め療法については、医師は標準的なことを言うが、患者さんの気持ちや状態などで変わる物なので、患者さんごとの結論で大丈夫です、とお答えいただきました。

最新の5年生存率については、昔は3-4割でしたが現在は6-7割になっているそうです。治療法は特に変化はありませんが、支持療法(無菌室、制吐剤など)の向上もあり、生存率が変わってきたそうです。

更に、副作用で注意することについては、「食べられること」が大切だそうです。吐き気・下痢などの緩和が大切だと仰いました。

当日ご聴講された方々より、「ネットで情報は得られるが、実際に先生のお話を聞けて良かった。」「非常に複雑な内容をわかりやすく説明して頂いた。」「分かりやすく講義をして頂いたので、理解できた。」など、多くのご感想が寄せられました。

先生のご講義で、病気の基礎知識から最新の新薬に渡り丁寧かつ簡潔に教えていただき、理解が深まりました。 照井先生、ご参加された皆様、本当にありがとうございました。 (赤星)

3月22日(金)は、山﨑 直也 先生(国立がん研究センター中央病院 皮膚腫瘍科)をお迎えし、『皮膚がん(メラノーマ)』をテーマにご講義いただきます。

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