ネット検索の落とし穴:間違った情報に気づくために必要なこと


  • [公開日]2024.01.18
  • [最終更新日]2024.01.16

こんにちは。オンコロ編集部の浅野です。

昨年末に、もっとも権威ある科学雑誌のひとつ「Nature」誌に、とても興味深い論文が掲載されました。タイトルは「Online searches to evaluate misinformation can increase its perceived veracity(誤情報を検証するためにネット検索をすることが、その情報を真実だと確信してしまうことにつながる)」というものです。つまり、虚偽のニュースの信憑性を確かめようとネットで情報検索すると、かえってそのニュースを正しいと信じてしまう傾向が高まる、ということです。

今回の研究は、アメリカの被験者3006人に対して実施されたもので、虚偽の情報の真偽をネット検索で調べる群と調べない群と比較した結果、ネット検索で調べた方が間違った情報を正しいと評価してしまう確率が約19%高くなるという結果でした(同様の試験が合計5回実施されましたが、全て同様の結果でした)。

このような結果が得られた原因は、被験者がネット検索で得た情報の「質」にあるようです。虚偽の情報に関してネット検索をすると、質が担保されていない情報源にたどり着いてしまう確率が高く、その結果虚偽の情報を正しいと思い込んでしまう、という悪循環が起きるのです。

論文の中では、ネット検索を行う人が検索結果の質を評価する手助けができるように新しいプログラムの開発が不可欠である、と解決策が提案されています。しかしそれが実現するにはまだまだ時間がかかります。
AIの進歩やSNSの普及に伴い、情報操作や情報拡散が簡単にできてしまう時代です。虚偽の情報に振り回されないために今私たちができることは、「これは正しいのだろうか?」と感じたものをむやみにネットで検索することで「正しそうだ」と答えを出すことはせず、ネット検索は信用できる情報源だけに留め、時にはパソコンの前から離れてみることかもしれません。

ネット検索は、キーワードを入れさえすれば何かしら情報をくれる便利な方法ですが、その真偽は保証されていません。毎日当たり前にネット検索をしている方も多いと思いますが(私自身もそうです…)、この記事がちょっと立ち止まって考えるきっかけになればうれしいです。

そしてオンコロは、皆さんにとって“信用できる情報源”になれるよう、今年も気を引き締めて活動していきたいです。

参考文献:
Online searches to evaluate misinformation can increase its perceived veracity(Nature. 2023 DOI:https://doi.org/10.1038/s41586-023-06883-y)

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