がん薬物療法に伴う皮膚障害アトラス&マネジメント 出版


  • [公開日]2018.09.20
  • [最終更新日]2018.09.20

 こんにちは、メディカル・プランニング・マネージャーの川上です。

 今回の記事は、タイトルである書籍「がん薬物療法に伴う皮膚障害アトラス&マネジメント」(金原出版株式会社、2018年8月31日発刊)のご紹介です。

昨年に続くシリーズ第2冊目

 昨年は、10月末に開催された第2回日本がんサポーティブケア学会学術集会のタイミングで発行された、「がん薬物療法に伴う末梢神経障害マネジメントの手引き 2017年版」のご紹介をさせていただきましたが、(記事はこちら )今年は、8月31日〜9月1日に福岡で開催された、第3回日本がんサポーティブケア学会学術集会のタイミングで、がん支持医療ガイドシリーズの2冊目として本書が出版されました。

新たな治療薬登場に伴う、新たな副作用

 前回の書籍ご紹介の際にも書きましたが、がんの薬物療法の進歩は目覚ましく、ステージⅣの診断を受けた方でも、治療効果により長期生存し、活躍する方も増えてきました。長くがんと向き合えるようになったことで、命の長さに加え、生活の質QOL : quality of life)も治療の有効性を評価する重要な指標となってきており、効果のあるお薬を最大限に活かすためには、副作用をきちんとマネジメントすることが重要です。とくに近年は、分子標的薬免疫チェックポイント阻害薬など、新たな作用機序の薬物がどんどん出てきており、患者さんの副作用も、新たなものと向き合わなければならなくなってきています。 

治療の継続を悩むほど辛い副作用

本シリーズ1冊目「がん薬物療法の副作用のマネジメント〜抹消神経障害マネジメントの手引き 2017年版」は、患者さんの日常生活に大きな影響を及ぼす「しびれ」を扱ったもので、今回は「皮膚障害」です。皮膚障害も、見た目(アピアランス)への影響や、手足などの動作への影響など、日常生活に大きな支障を及ぼし、治療の継続を悩む患者さんも多いと聞きます。
 

皮膚障害にもいろいろ

皮膚障害と一口に言っても、お薬の作用機序により、出てくる症状はさまざまです。具体的なイメージについては、ここでは写真を掲載することは控えたいと思いますが、顔面の皮疹、潰瘍、爪囲炎、爪の変色、広義には脱毛も・・・。皮膚障害をもたらす薬の分類としては、EGFR阻害薬、マルチキナーゼ阻害薬、タキサン系抗がん薬、免疫チェックポイント阻害薬、低分子性分子標的薬があり、本書は、それぞれの系統ごとに章立てし、具体的な症例と予防・対処・ケアの方法が解説されています。

CTCAEに基づく評価

症例写真を拝見すると、こんな症状が出たら、患者さんは(ご家族も)どれだけ辛いだろう・・と思うものばかりで、胸が痛くなります。一方で、皮膚障害の度合いと奏功に相関関係がある場合もあり、副作用をいかにコントロールしていくか、はとても重要な課題です。本書では、各症例について、障害の度合いをアセスメントするためのCTCAE(Common Terminology Criteria for Adverse Events) に基づくグレード評価を行い、どのようなケアを行って改善されたかについて解説しています。適切なケアを行うことで、こんなに改善できるのか・・!と、患者さんやご家族にもぜひ知ってもらいたいと思い、今回、ご紹介させていただきました。

オンコロにできることは・・

私は、看護師だったこともあり、こうした副作用のマネジメントには、看護師や薬剤師がもっと貢献できる、と考えています(が、まだまだ、なのが現状かと思います)。今年3月に参加した、日本臨床腫瘍薬学会学術大会2018 でも、がん治療の副作用マネジメントに関する演題が多く、先進的な取り組みが数々発表されており、大変勉強になりました。オンコロとして、副作用マネジメントがもっと普及していくために貢献できる啓発や情報発信について、これから少し考えていきたいと思っています。

ある肝がん患者さん

過去に、マルチキナーゼ阻害薬(分子標的薬)で治療中の男性肝がん患者さんに、医療従事者向けセミナーで体験談をお話いただいたことがありました。手足への皮膚障害(手足症候群)が出ると、靴が履けない、歩けないほどに痛いとのことでした。水疱ができ、裂けて真皮が露出すると感染の危険もあります。看護師さんから、予防のために保湿剤を常時たっぷり塗布するように、と言われ、日常生活でそれを守るために、100円ショップで売っている綿手袋を活用した、という工夫も紹介してくれました。この方は、症状の辛さは正直に先生に伝え、減薬したり、休薬したりしながら1年以上継続して内服を続けており、「初めて副作用を経験したときは先行きがとても不安だったけれど、先生や看護師さんと相談しながら、副作用が出るタイミングや予防・対処法がわかってきたら、自分なりの工夫もできるようになったし、前向きに治療と向き合えるようになった。」と言っておられました。そんなふうに患者さんが思ってくれたら、医療者冥利につきますね!

医療者だけでなく、患者さん、ご家族も

本書は、がん治療に携わる医師、看護師、薬剤師の方々だけでなく、皮膚障害で悩まれている患者さんやご家族にもぜひ、手にとっていただきたいと思います。これをもとに、先生とコミュニケーションをとってみてもいいですよね。
*ただし、症例写真が多く、症例写真に慣れていない方には、ちょっと辛いかもしれません・・

 シリーズ2冊目となった本書。続編はあるのでしょうか。楽しみです。

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