オンコロの鳥井です。
12月1日に厚生労働省(健康局がん・疾病対策課)主催の、第1回小児・AYA世代のがん医療・支援のあり方に関する検討会」に参加をしてきました。2時間の検討会で内容がかなりボリュームがあるので、その一部をまとめレポートします。
第1回小児・AYA世代のがん医療・支援のあり方に関する検討会(ペーパーレス)(開催案内)
小児・AYA世代のがん医療・支援のあり方に関する検討会とは
『この検討会では、小児・AYA世代のがん患者とその家族が安心して適切な医療や支援を受けられるような環境の整備を目指し、小児がん拠点病院のあり方や、がん診療連携拠点病院等との連携を含めた医療や支援のあり方と具体策について検討する。(資料1より)』
この目的の下、開催されました。
小児がんとは
15歳未満で発症した患者さんのことを指し、年間2000〜2500人が小児がんと診断を受けています。罹患するがん種は血液がん、脳腫瘍の順で多いです。小児がん患者は体が未成熟の時期に治療を行うために、晩期合併症や二次がんといった問題もあり、治療を終えても長期フォローアップが必要となります。
これまでの小児がん対策について
まず初めに、今までの小児がん対策の経緯について説明がありました。かなりその一部を抜粋します。この5年間で小児がん拠点病の選定をはじめとして、様々な動きがあったことがわかります。
2012年5〜6月に「小児がん医療・支援のあり方に関する検討会」が開催され、2013年2月に小児がん拠点病院(15施設)、2014年2月小児がん中央機関(2施設)が選定された。これらの取り組みは治療体制の整備等を目的としている。小児がん患者数が少なく、またがん種も多岐に渡るための医療格差が起こっていました。例えば病院単位で、年間2、3症例しか小児がん患者を見ていないといった現状があった。
小児がん拠点病院・中央機関のこれまでの取り組みと課題
その次に、国立研究開発法人国立成育医療研究センター 小児がんセンター長 松本 公一先生から、この5年間で行われた取り組みの成果とその課題についての説明がありました。
これまでの取り組み
・年間4割の小児がん患者さんを2013年選定の小児がん拠点病院でカバーできた。
・中央機関として、国立成育医療研究センターと国立がん研究センターが連携をして、人材育成や小児がん登録等を行った。
・TV会議システムを立ち上げ研修会などを開催して、地域間の連携を計っている。
課題
・小児がん長期フォローアップ体制の整備が必要
└長期フォローアップ外来整備、 長期フォローアップ計画提供の仕組み、データベース作成を検討。
・遺伝子解析を取り込んだ個別化医療の推進
└小児がん拠点病院のネットワークを活用して、十分な治験・臨床研究の行える体制整備が必要。
・小児がんに携わる看護師やその他コメディカルの育成
└早急な専門教育プログラムを確立し、小児がん看護の専門性をもつ看護師を専任配置すべき。
・小児がん患者の教育体制の整備
└人員、内容面で充実する特別支援学校による教育支援を目指し、高校教育の充実が必要。
・AYA世代がん患者の診療体制の整備
└疾患、年齢に応じた成人診療科との連携が必要。
思春期・若年成人(AYA)世代のがんの現状と課題】
国立がん研究センター中央病院 乳腺・腫瘍内科 清水千佳子先生からは若年性(AYA世代)がんの課題と現状について説明がありました。
思春期・若年成人(AYA)世代のがんの現状
清水先生は現状としてその希少性、多様性から発生する現状をまとめ、下記の様に挙げました。医療だけの問題ではない、社会的な問題もあることも言及されていました。
• AYA世代のがん患者には、この世代に特有の悩みやニーズがある。
• AYA世代のがん患者の悩みやニーズは多岐にわたり、必ずしも医療機関の中だけで対応できるものばかりではない。
• 医療機関あたりのAYA世代がん患者の診療数は少なく、医療従事者がAYA世代がん患者の支援に関する知識や経験を蓄積しにくい。
• AYA世代がん患者の診療数の多い施設でも、AYA支援に必要なリソースが充足しているとは言い難い
思春期・若年成人(AYA)世代のがんの課題
参考資料として、2014年に若年成人(AYA)がん患者に行ったアンケートです。十分な情報、または足りなかった情報についてまとめられています。
思春期・若年成人(AYA)世代のがんの課題
課題として体制や連携の必要性について触れ、3つの課題を挙げました。
• ネットワークの構築
└小児、成人や生殖医療、精神科等の連携を推進させる
• 情報、相談支援窓口の拠点化
└AYA世代の悩みに対する相出来るようにする
• 自律、自己管理の支援
└患者の主体性に主眼をおいた患者教育
参加してみて・・・
上記の資料をご覧いただくと、小児もAYA世代も患者数が少なく、がん種の多様性が様々な課題の根本をなしているがわかります。解決するためには体制、仕組みを変えていく以外にも清水先生がおっしゃった、患者教育が大切だと思いました。情報を教えてもらうことを待つだけでなく、患者自身で調べる必要があると思いました。もちろん信憑性の低い情報等もありますが、調べることで様々な情報にアクセスすることが出来ます。その情報の取捨選択方法を患者教育に取り入れて、患者自身が能動的に情報を得ようとすることで、スライドにもあるアンメット・ニーズの多くを解決できるのではないかと思いました。
実際に調べていただくと数多くの患者会等の団体が情報を出していることがわかると思います。しかしその情報の中には紙や冊子のみで、インターネットで見ることが出来なかったり、点在してしまっているのが現状です。患者の方が情報を得やすいように一元化する等の対策はオンコロで行っていかねばと感じました。
資料1:開催要綱
当日資料:第1回小児・AYA世代のがん医療・支援のあり方に関する検討会(資料)