第58回日本肺癌学会学術集会 患者・家族向けプログラム レポート


  • [公開日]2017.10.21
  • [最終更新日]2017.10.21

こんにちは、メディカル・プランニング・マネージャーの川上です。

 10月14日(土)と15日(日)の2日間、パシフィコ横浜で、第58回日本肺癌学会学術集会(以下、JLCS)(会長:淺村尚生先生:慶應義塾大学医学部外科学(呼吸器) 教授)が開催されました。

 日本肺癌学会学では、2014年に京都で開催された第55回JLCS(会長:中川和彦先生:近畿大学内科学腫瘍内科部門 教授)より、患者・家族向けプログラムを学術集会内で実施してきました。また同学術集会は、患者を中心に、医師だけでなく看護師・薬剤師などの医療者、行政、企業らと連携し肺がん医療向上に取り組むことを宣言した「京都宣言」を採択しました。


京都宣言スライド(スライド1)

 この京都での第55回JLCSでは、初めての取り組みとして、「患者・家族向けプログラム(以下PAP:Patient Advocate Program)」を導入し、それ以来、毎年の学術集会でPAPが企画されるようになり、私も継続してサポートさせていただいています。

 今回のPAPには2つの特徴がありました。1点に、第58回JLCSは、IASLC(国際肺癌学会)が開催する第18回WCLC(世界肺癌学会議)との同時開催だったこともあり、PAPでも、海外からのゲストを迎え意見交換することができたこと。2点目は、全国の肺がん患者会の連合組織である、日本肺がん患者連絡会の有志の方々が、各セッションの司会役を務めたことです。

 海外ゲストとして参加してくださったのは、IASLCのメンバーシップ担当Kristin Richeimer さん、同じくIASLCのファンドレイジングボードを務める、肺がんサバイバーのKathy Weberさん、 ROS1ders(ROS1遺伝子変異がある患者さんたちのグローバルなネットワーク)からLily Huang さん(写真)。


左:Kristin Richeimer 中:Kathy Weber 右 Lily Huang / 写真:増森健

 日本のサバイバーがWCLCに初めて参加したのは、2015年のデンバーでの会議でした。当時ステージⅣの肺がんと向き合っていた山岡鉄也さんが、日本人として初めてIASLCのトラベル・アワード(渡航費・宿泊費を助成するプログラム)を受賞し、参加されました。翌2016年には、日本肺がん患者連絡会の代表、長谷川一男さんが、ウィーンで開催されたWCLCに同じくトラベル・アワードで参加され、山岡さんとともに、ポスター発表もされました。


2015年のデンバー、2016年のウィーンに続く今年の開催。  写真:増森 健

 海外のゲストを迎えたセッションでは、課題や知恵を共有する目的で、日本の患者会の活動が紹介され、海外でも経済的資源、人的資源、ネットワークの構築には苦労されており、SNS等を駆使して、さまざまなチャレンジに取り組んでいることがコメントされました。海外ゲストの3名は、たまたま看護師のバックグランドを持っており、私自身も看護師資格を持つ者として、大変刺激を受けました。

 海外ゲストの皆さんが退出された後は、患者会の皆さんの企画により、「患者力アップ」をテーマに医師とのコミュニケーションについて共に考える時間となりました。

 参加された会場の皆さんから「医師の言葉や態度で良かったこと、悪かったこと」のアンケートを事前に集め、それに基づき、4名の医療者の方々をゲストに、討議が進められました。


討議に加わってくださったのは、石黒崇先生、青野ひろみ先生、浜谷千絵子さん(がん看護専門看護師)、釼持喜之先生。  写真:増森 健

 先生の機嫌が悪そうだと、聞きたいことも聞けなくなってしまう、との患者さんの声に、医師からは「医師も人間。当直明けなどは疲れていて、患者さんに笑顔を見せられないこともある」との本音も。「医師が不機嫌そうにしていても、患者さんが原因でないことが殆ど」とも。患者側からできる工夫として、事前に質問や伝えたいことをメモに簡潔にまとめる、医師が不機嫌な時は「先生も大変なのかな」、等の思いやりの目で見てみる、などの意見も出て、会場とも双方通行で、医師と患者が本音で語り合えた時間となりました。

 討議に加わって下さった先生方からは、患者さんの生の声を聞けたことは大変参考になった、とのご意見もいただき、PAPは、患者・家族が学術集会で最新の知識を学ぶだけでなく、医療者が患者の声に触れる機会にもなることを改めて感じました。

 今回のPAPでは、日本の肺がんアドボカシーの確かな高まりを実感することができ、私自身も大いに力をいただきました。

 このアドボカシーの高まりの種を撒いてくださったのは、今年7月に旅立たれた山岡鉄也さんでした。ご冥福をお祈りするとともに、感謝とお礼の気持ちを天国に届けたいです。第18回WCLCでは、山岡さんのご遺志を継ぎ、奥様の聡子さんが、がんと就労に関してポスター発表をされました。

 京都宣言から少しずつ前進してきた日本肺癌学会学術集会のPAP。これからも、よりよい肺がん医療のために寄与するプログラムとして、継続して企画されることを祈念してやみません。

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