肺がん医療向上委員会 患者の声を尊重する医療 山岡氏WCLC2015参加報告


  • [公開日]2015.10.21
  • [最終更新日]2017.06.13

 


■この記事のポイント

・山岡鉄也氏が世界肺癌学会議のアドボカシートラベルアワードに日本人で初めて選出。肺がん医療向上委員会で参加報告された。

・今年の世界肺癌学会会議には、がん患者(サバイバー)は無料で参加でき、誰でも最新情報を入手できた。

・そういった学会を目指すべく、日本肺癌学会の新たなチャレンジはつづく。。。


 10月20日、日本肺癌学会が運営する第9回肺がん医療向上委員会が開催されました。肺がん医療向上委員会は、肺がん患者さんとそのご家族に安心して最良の医療を提供できるような環境にし、肺がんの予防推進と診断・治療成績向上を目指すことを目的として2013年に設立され、今回は、製薬企業、マスメディアおよび患者会代表者など50名程度が参加していました。

 今回の委員会では、今年2015年9月に開催された国際肺癌学会(IASLC)主催の第16回世界肺癌学会議(WCLC)にて、アドボカシートラベルアワードに選出された山岡鉄也氏の学会参加報告がなされました。山岡氏は2010年にステージ4非小細胞肺がんと診断され、現在も治療中ですが、国立がん研究センターがん対策情報センターと「がんと就労」プロジェクト等、一連のがん患者に向けた啓発活動が評価され日本人で初めて受賞されました。

 なお、今回のアドボカシートラベルアワードには、山岡氏の他に米国から3名、ナイジェリアから1名、トルコから1名選出されています。

患者と共に歩む学会

 がん患者(サバイバー)は無料で学会に参加でき、患者団体等関係者も含め一般人も多数参加されました。
どのセッションにも参加でき、企業ブースにも訪れることができたとのことです。日本では、患者の参加を認められることはあっても、参加できるセッションが限定的であったり、企業ブースには参加できないことが多いそうです。そのため、患者側も学会に参加するという考えには至りにくいかもしれません。

 そんな中、開会式では、「肺がんはこれから慢性疾患になる!!」と世界肺癌学会学会長であるFred R. Hirsch氏は力強いコメント述べ、参加した多くのがん患者やその家族に希望を与えたと感じたとのことです。

 また、「一世代前と違って肺がんには希望(HOPE)がある!」(Bonnie J. Addario Lung Cancer Fundation, Bonnie J. Addario氏)もコメントし、同団体のEmily Bennet Taylor氏が肺がんステージ4の体験談では、医療者を含む会場全員がスタンディングオベーションに感銘を受けたとのことです。

 日本では、医薬品医療機器法等(旧名:薬事法)66条~68条(誇大広告等、特定疾病用の医薬品の広告の制限および承認前の医薬品等の広告の禁止)の企業側の解釈により、こういった患者との一体感のある学術集会の開催はハードルは低くありません。しかしながら、そうった所を打破しようとする学会側の動きがあるのは事実です。

 しかしながら、現在、インターネットで海外サイトをアクセスすれば最新情報を閲覧することは可能であり、日本だけこの奇妙な法規制をひいているのも不思議な感じがするのは、山岡氏と同感です。

 その中で、日本肺癌学会は第56回日本肺癌学会学術集会にて3日間に及ぶアドボカシープログラム「そうだ、がん診療の専門家と会ってみよう」が開催されます。

ePatientを目指すべき

 山岡氏はePatientという言葉を聞いたとのことです。
 ePatientとは、「Equipped(ストレスなくインターネットを使える)」、「Enabled(患者力をもつ)」、「Empowered(周囲に啓発して分身をつくる)」、「Engaged(周囲との絆を大切にする)」、そして「Equal Partnaership in the care(医療者も含め、関係するすべてのステークホルダーと対等な立場で治療を進める、そのためにはリテラシー(知識や理解力)が求められる)」です。

 欧米では患者団体の影響力が大きく、多数のアクションプランが構築されていとのことです。
 たとえば、治験実施計画段階から製薬企業に患者団体が関与する「LUNG-MAP」というプロジェクトや、最新の治療が受けれない地域では、製薬企業等をスポンサーとして専門医師を派遣するネットワークプログラムが始動しているとのことです。

 「ePatientは患者力を高め、情報を収集し、それを周囲に啓発する」、一方、「医療者にも対等にディスカッションが話せるようになる。また、国、医療者や製薬企業などはそういった患者を受け入れる」。
そういった時代になれば、また新しい波がおとずれるのではないかと感じました。
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Health2.0 ASIA – Japan

 山岡氏は、 11月4日~5日に開催される医療・ヘルスケア分野における最新のテクノロジー(ヘルステック)とそれを活用した先進事例を紹介するグローバルカンファレンス「Health2.0 ASIA – Japan」にて、患者にフォーカスした「Patient2.0」にて登壇されます。
 Health2.0 ASIA – Japan

日本肺癌学会関連のイベント情報

・医療従事者に知ってほしい肺がん医療 福岡(10月24日)
・もっと知ってほしい肺がんのこと in 東京(11月8日)
・そうだ、がん診療の専門家と会ってみよう(第56回日本肺癌学会学術集会)(11月26日~28日)

記事:可知 健太

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