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【聴講レポート】メラノーマを知る・学ぶ・聞く 2019~ミート・ザ・エキスパート!専門医に聞いてみよう~


  • [公開日]2019.06.10
  • [最終更新日]2019.06.10

2019年5月11日(土)、国立がん研究センター中央病院にて 
メラノーマを知る・学ぶ・聞く ~ミート・ザ・エキスパート!専門医に聞いてみよう~
が開催され、オンコロスタッフも参加してきました。

イベントの前半は堤田先生と山﨑先生の講演、後半が質疑応答パートでした。質疑応答のパートでは40個以上の質問があがりましたが、そのすべての質問に先生方が回答してくれました。
参加された方は、疑問は不安が解消出来きる良い機会になったのではないでしょうか。

ここでは、イベントで聴講した内容をご紹介したいと思います。

主催:メラノーマ患者会「Over The Rainbow」
共催:国立がん研究センター 希少がんセンター
協賛:がん情報サイト「オンコロ」

第1部 講演

堤田 新 先生「悪性黒色腫の最新の治療について」


メラノーマのことを日本では悪性黒色腫と言いますが、必ずしも黒くはありません。そのためこのセミナーでは「悪性黒色腫」ではなく「メラノーマ」という呼び方を使いました。

■診断について
まずは肉眼的な診断を行い、その後、腫瘍の一部または全体を取って病理診断をしてから治療を開始することが大切です。肉眼的には、境界不明瞭、色が多彩、大きさが大きい、隆起している場合に、メラノーマが疑われます。早期病変は、ほくろと区別がつきにくいことがあり、肉眼よりも情報量が得られるダーモスコープが使われるようになりました。メラノーマは様々な部位に見られ、粘膜(鼻腔、直腸、膣等)、結膜などに出来ることがあります。アジア人は爪に出来ることも多いです。

■治療
状態に応じた適切な治療(手術、薬物治療、放射線治療)が大切です。

・手術
手術はステージⅠからⅢ期の場合に行われます。Ⅳ期は遠隔転移を起こしているため手術適応外となります。切除範囲は腫瘍組織から1~2センチ広めに、深さは皮膚の下の脂肪組織まで切除することが多いです。次の段階として、リンパ節郭清があります。リンパ節郭清は、がんが転移している可能性がある部分を取り除いて、再発を防ぐために行います。欠点としては切除後にリンパの流れが遮断されるので、足や手がむくむことあり(リンパ浮腫)、場合によっては神経の障害が出ることがあります。

リンパ節を郭清する意味があるのか昔から議論されています。センチネルリンパ節転移(みてわかる、ふれてわかるリンパ節ではなく、病理診断をしないとわからないような大きさのものをセンチネルリンパ節転移という、つまり微小転移)がある場合、大きなリンパ節に転移している確率は10~20%と言われていて、決して高い値ではありません。
海外で白人を対象に行われた大規模な臨床研究結果では、センチネルリンパ節転移がある人でリンパ節郭清をした人としていない人で、生存率に差は認められませんでした。ただし、白人を対象にしたデータであり、白人に多いメラノーマのタイプと、日本人に多いメラノーマは違うため、注意が必要です。

・放射線治療
メラノーマに対して行われる放射線治療の例として下記があります。
粘膜に出来たメラノーマ:重粒子線や陽子線治療
脳転移がある場合:サイバーナイフガンマナイフ
骨に転移し痛みが出る場合:緩和的な放射線照射

・薬物療法
ステージⅢ、Ⅳで進行している場合に薬物治療が行われます。
治療薬の開発については、2011年に革命的な治療変化が米国でおきました。それは免疫チェックポイント阻害薬イピリムマブ(商品名ヤーボイ)発売です。これが発端となり、急激な薬物治療の変化が起きています。2014年4月世界に先駆けて日本でニボルマブ(商品名オプジーボ)が発売され、その後免疫チェックポイント阻害薬であるペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)が承認されました。また、メラノーマに出ている目印(BRAF遺伝子変異)に作用する分子標的薬も承認されました。昨年からは術後補助療法として、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ダブラフェニブ/トラメチニブが承認されています。

■再発と再発予防
原発巣とリンパ節を手術したにも関わらず、なぜ再発するのでしょうか。目に見える部分を取り除いても、目に見えないがんが残っていることがあり、それが時期を経て出てくると再発します。この目に見えないがんを何とかしようとすること(再発のリスクを下げる治療)が術後補助療法です。術後補助療法は、明らかながんが無い状態で行われ、がんが残っていない可能性があります。術後補助療法は本当に必要なのでしょうか。これを調べるためには、多くの方に参加して頂く臨床試験を行う以外に調べる方法がありません。臨床試験では再発を確認するため長く経過を見る必要があり、研究に時間がかかり、難しいです。イピリムマブは術後補助療法として効果があると海外で証明されています。ペムブロリズマブとプラセボを比較する臨床試験が行われました。臨床試験では、プラセボ群であっても再発しない人、ペムブロリズマブを使用しても再発した人がいます、つまり術後補助療法を受けたすべての人が再発しないわけではなく、また、その人にとって必要なのかはわかりません。再発を抑える可能性を高めるために術後補助療法があります。

■まとめ
・今後は手術に薬物治療を組み合わせることによって、再発転移を起こす可能性が減らせる
・転移を起こしても治癒する時代がやってくることを期待
・希望を持って生きる

山﨑 直也 先生「悪性黒色腫の新しい治療を受ける際の注意すべき副作用」


メラノーマの治療薬は免疫チェックポイント阻害薬と分子標的薬2本の柱で進行してきましたので、それぞれの副作用についてお話します。

■免疫チェックポイント阻害薬の副作用
免疫チェックポイント阻害薬の副作用はなぜ起こるのでしょう。
がんは自分の抵抗力(免疫力)を抑えてしまいます。抑えられた抵抗力を元に戻し、さらに強くし、がんをやつける薬が免疫チェックポイント阻害薬です。免疫チェックポイント阻害薬を使うと、免疫力が強くなりすぎて、勢いが余って自分自身も攻撃してしまうことがあり、これが副作用として現れます。免疫チェックポイント阻害薬による副作用は原則としてステロイドで治療しますが、糖尿病や甲状腺ホルモン異常の場合はホルモンを補充します。

副作用が起こる順番は、「皮膚病→肝臓の数値の上昇→下痢・大腸炎→肺炎」と言われていますが、必ずしもこのような順番とは限らないので注意が必要です。

【代表的な副作用と症状】
間質性肺炎(息苦しい)、肝臓(自覚症状なし)、下痢大腸炎(7回以上の下痢は要注意)、皮膚病、点滴した途端の過敏反応、甲状腺ホルモン異常(元気がなくなることから始まる)、重い糖尿病(一般的な糖尿病の症状と違い、頭痛、腹痛等、漠然とした症状から始まる。体調の変化に注意)、重症筋無力症

免疫チェックポイント阻害薬の新しい治療法として、オプジーボとヤーボイの併用があります。オプジーボとヤーボイを併用した場合、単独で使用するより、副作用が出るタイミングが早い、強い、頻度が高いといわれています。代表的な副作用として、肝臓の数値の上昇、下痢、ホルモン異常があげられます。ホルモン異常については、早く見つけてホルモンを補充出来れば命を落とすことはありません。

また、免疫チェックポイント阻害薬は他の薬との相乗効果、悪循環で副作用が出ることがあるので注意が必要です。

■分子標的薬BRAF阻害薬の副作用
BRAF阻害薬単独治療には弱点があります。
弱点①効き目が短い(半年程度で耐性が出来る)
弱点②他の皮膚がん(有棘細胞がん)が出来ることがある

BRAF阻害薬単独治療の弱点を克服する治療として、MEK阻害薬とBRAF阻害薬を併用する治療法を行うようになりました(タフィンラー/メキニスト)。併用した場合の副作用は発熱です。重い副作用(発熱等)が出た場合、薬をお休みし、熱が下がったら再開するという方法を取ります。

■副作用まとめ
・効果と副作用のバランスを考えて治療は行われます。
・各治療のメリット・デメリットを理解しましょう。
・副作用に早く気付くことが大切です。
・がんに勝たなくても、時には引き分けでもいいのではないでしょうか。攻撃に攻撃を加えて副作用に苦しまなくても、引き分けでも寿命をまっとう出来るのではないでしょうか。

第2部 ~ミート・ザ・エキスパート 専門医にきいてみよう~


パネリスト
国立がん研究センター中央病院 山﨑 直也 先生 / 中野 英司 先生
がん研究会有明病院 堤田 新 先生
大阪国際がんセンター 爲政 大幾 先生

個人的にピックアップした質問を掲載します。

Q.治療後の経過観察は一般的に何年くらいですか。
A.何年と決まっていません。早期の方以外は10年程度、10年を超えた場合、患者さんの希望次第で観察を続けます。半永久的に経過観察を続けることもあります。
          
Q.免疫療法のメラノーマへの適応の可能性はありますか。
A.メラノーマはメラニンをたくさんを持っています。もし腫瘍細胞がたくさんメラニンを持っていた場合、光が入りません。この点が解決出来ていないので、研究が進んでいません。

Q.メラノーマの疑いがある場合、どのような病院に行ったらいいでしょうか。
A.まずは、ダーモスコーピー診断をしている病院をインタネットで検索し、受診してください。ダーモスコーピー診断の結果、メラノーマの可能性があるのであれば、専門医を紹介してもらってください。

Q.メラノーマは遺伝しますか。
A.日本人では遺伝することはありません。稀に海外から家族性のメラノーマが報告されたことはありますが、基本的に遺伝しません。

終わりに

このイベントは総勢72名の方が参加されました。参加された患者さんやご家族の質問に、先生方がとても丁寧に回答して下さったので、疑問は不安が解消出来きる良い機会になったのではないでしょうか。オンコロもこのようなすばらしいイベントに参加させて頂いたことをとても光栄に思います。また来年も参加出来ることを楽しみにしています。

記事:大内 明香

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