非小細胞肺がん(NSCLC)
Amivantamab Plus Chemotherapy vs Chemotherapy Alone in EGFR Exon20ins NSCLC: Phase 3 PAPILLON study Japanese subgroup EGFR エクソン20 挿入変異陽性NSCLCを対象としたアミバンタマブと化学療法の併用療法と化学療法を比較した第Ⅲ相PAPILLON 試験日本人サブグループ解析 PAPILLON 試験に登録された全308例(全体集団)のうち、34例(アミバンタマブ+化学療法群:19例、化学療法群:15例)の日本人サブグループの解析結果について報告された。 日本人集団における無増悪生存期間(PFS)の中央値はアミバンタマブ+化学療法群で15.5ヵ月(95%信頼区間(CI) 8.0-NE)に対して化学療法群で5.6ヵ月(95%CI 3.0-7.0)、ハザード比が0.22(95%CI 0.09-0.53)であり、全体集団と同様に有意な改善が認められた。また、日本人集団における安全性プロファイルは、全体集団と同様の傾向であり、新たな安全性シグナルは認められなかった。 今回アミバンタマブ+化学療法の有効性が日本人集団でも認められたことから、EGFR エクソン20 挿入変異を有する新しい治療薬となることが期待される。 なお全体集団における有効性は、既に昨年の欧州腫瘍学会(ESMO2023)にて発表されている。 RELAY: Final Overall Survival with Erlotinib+Ramucirumab or Placebo in Untreated, EGFR-Mutated Metastatic NSCLC (mNSCLC) 未治療EGFR遺伝子変異陽性NSCLCに対するエルロチニブ+ラムシルマブの有効性を比較検証した第3相RELAY試験のOS最終解析 RELAY試験は、未治療のEGFR 遺伝子変異exon19欠失又はL858R変異を有する進行NSCLCを対象に、エルロチニブ(製品名:タルセバ)+ラムシルマブ(製品名:サムライザ)の有効性を検証した二重盲検プラセボ対照グローバル試験。主要評価項目であるPFSの改善に関しては既に発表されており、今回全生存期間(OS)の結果が世界に先駆けてOSの結果解析を発表した。 データの詳細はこちらの記事をご覧ください。消化器がん
Analysis of ctDNA Changes in Locally Advanced Rectal Cancer that Underwent Neoadjuvant Treatment -GALAXY Trial- 局所進行直腸癌に対する術前治療における血漿循環DNA(ctDNA)の解析 -GALAXY trial- 直腸がんにおける術前療法では、化学両社線療法(CRT)に加え、近年では化学療法や化学放射線療法+化学療法(total neoadjuvant therapy)の有効性も認められている。 そこで、今後のctDNAを使った適切な術前治療判定を見据え、今回は術前治療前後のctDNAの変化を解析した結果が報告された。 解析対象は、CIRCULATE-Japan GALAXY trialの直腸癌コホートの中の術前治療症例を登録するコホートB2(II, III期の直腸腺がんで、上部直腸Raと下部直腸Rbの病変を含む)。診断時と術前治療後のctDNAが揃った151例に関して、診断時にctDNA陽性であった147例中69例でctDNAは陰性化した (陰性化率47%)。手術で摘出した組織の病理検査結果と併せて解析した結果、ctDNA陰性症例では術前治療が奏効している割合が高かった。また術前治療後のctDNA陽性症例は陰性症例と比べて無病生存期間が有意に不良であった (P=0.0024)。 今回の結果は、術前治療後のctDNAが術後の予後を予測できる可能性を示唆しており、過剰な術前介入を避けるために、ctDNAを使った術前治療の強度の個別化につながることが期待される。 Chemotherapeutic Sensitivity of Colorectal Cancer (CRC) With Low RNA WT Homologous Recombination (HRec) Gene Expression 野生型の相同組み換え修復遺伝子の発現が低下している大腸がんにおける化学療法に対する感受性 相同組換え修復(homologous recombination: HRec)欠損を有する大腸がんにおいて、DNA損傷に関わる薬物療法の効果が高いことが示唆されている。 今回の発表では、未治療RAS野生型進行再発大腸がんに対してmFOLFOX6 + パニツムマブとmFOLFOX6 + ベバシズマブを比較したランダム化第3相PARADIGM試験のデータを使い、7つの野生型HRec遺伝子(ATM、BLM、BRCA1、BRCA2、CHEK2、PALB2、RAD51)のRNA発現レベルとOSとの関連を解析した結果が報告された。 DNAおよびRNAのデータが得られた262例のうちHRec遺伝子が野生型であったのは243例。野生型RAD51又はBLMのRNA発現量が少ない症例(下位25%)は発現量が多い症例(上位25%)に比べてOSが有意に長かった(RAD51:OS中央値43.6ヵ月vs. 27.1ヵ月、HR:0.63、p=0.033;BLM:41.5ヵ月 vs. 22.4ヵ月、HR:0.52、p=0.0021)。他のHRec遺伝子に関してもOSとの関連が見られたが、その差は統計的に有意ではなかった。 今後野生型HRec遺伝子発現低下と機能欠損に関する研究が更に進むことで、DNA損傷に関わる薬物療法による予後予測マーカーとしての利用が期待される。 Zolbetuximab + mFOLFOX6 in 1L advanced gastric/gastroesophageal junction cancer: Japanese subgroup analysis in SPOTLIGHT CLDN18.2陽性HER2陰性の進行胃腺がん/食道胃接合部腺がんに対するゾルベツキシマブ+mFOLFOX6併用療法を検討したSPOTLIGHT試験の日本人サブセット解析 SPOTLIGHT試験に参加した日本人65例(ゾルベツキシマブ群32例、プラセボ群33例)を対象とした解析。患者背景は、全体集団と比較して日本人では、年齢中央値が高く(ゾルベツキシマブ群で67.5歳、プラセボ群で68.0歳)、PSが0の割合が高く(ゾルベツキシマブ群で67.7%、プラセボ群で62.5%)、組織型はびまん型が多かった(ゾルベツキシマブ群で68.8%、プラセボ群で60.6%)。 主要評価項目であるPFSの中央値は、ゾルベツキシマブ群で18.07カ月(95%信頼区間:8.64-NE)、プラセボ群で8.28カ月(95%信頼区間:6.28-10.58)、ハザード比が0.493(95%信頼区間:0.223-1.089;p=0.0375)であり、ゾルベツキシマブによる改善が認められた。OSの中央値は、ゾルベツキシマブ群で23.10カ月(95%信頼区間:16.43-25.26)、プラセボ群で17.71カ月(95%信頼区間:9.63-25.13)、ハザード比0.719(95%信頼区間:0.389-1.329;p=0.1450)であった。また奏効率は、ゾルベツキシマブ群で70.8%、プラセボ群で53.8%であった。 安全性に関しては、ゾルベツキシマブ群で最も多くみられた有害事象は、悪心(ゾルベツキシマブ群90.3% vs プラセボ群53.1%)、末梢感覚神経障害(74.2% vs 46.9%)、食欲減退(71.0% vs 53.1%)であったが、重篤な有害事象の発現率は両群間で同程度であった(32.3% vs 31.3%)。 以上の結果から、CLDN18.2陽性HER2陰性の進行胃腺がん/食道胃接合部腺がんに対する初回治療としてのゾルベツキシマブ+mFOLFOX6併用療法は、日本人においても全体集団と同様の有効性・安全性が認められた。 なお全体集団においては、既にに2023年の米国臨床腫瘍学会消化器癌シンポジウム(ASCO GI 2023)で有効性が報告されている。乳がん
Dato-DXd vs chemotherapy for patients with inoperable/metastatic HR+/HER2- breast cancer: TROPION-Breast01 Asian subset ホルモン受容体(HR)陽性かつHER2陰性手術不能または転移・再発乳癌患者を対象にダトポタマブ デルクステカン(Dato-DXd)と化学療法を比較したTROPION-Breast01試験の東アジアサブセット解析 TROPION-Breast01試験の全体集団732例のうち、東アジア(日本、中国、韓国、台湾)で登録された273例におけるDato-DXdの有効性と安全性が解析された。 主要評価項目であるPFSの中央値は、Dato-DXd群で6.9カ月に対して学療法群で4.9カ月、ハザード比0.63(95%信頼区間:0.52-0.76;p<0.0001)であり、Dato-DXd群で有意な改善が認められた。また。もう一つの主要評価項目である全生存期間については、フォローアップ期間が未達であることから引き続き評価を継続するようだ。 安全性に関しては、Dato-DXd群の主な治療関連有害事象(TRAE)はドライアイと口内炎であった。またグレード3のTRAEの頻度は、Dato-DXd群で21%に対して化学療法群で45%であった。 以上の結果から、Dato-DXdは東アジアの集団に対しても、全体集団と一貫した有効性と安全性を示すことが明らかとなった。 なお全体集団においては、既に2023年の欧州臨床腫瘍学会(ESMO 2023)で有効性が報告されている。 Final OS analysis from the phase 3 TROPiCS-02 study: sacituzumab govitecan in HR+/HER2- metastatic breast cancer ホルモン受容体(HR)陽性/HER2陰性転移性転移性乳がんに対するサシツズマブ ゴビテカンの有効性を検証した第3相TROPiCS-02試験のOS最終解析 内分泌療法、タキサン系抗がん剤、CDK4/6阻害剤、化学療法2~4ラインの前治療を受けたHR陽性/HER2陰性進行乳がんを対象に、サシツズマブ ゴビテカン(SG)群(n=272)と化学療法群(n=271)を比較、既に中間解析によりOSの延長が認められていた。 今回は追跡期間を延長した最終解析の結果が発表され、SG群は化学療法群に対して引き続きOSの改善を示した(OS中央値は14.5ヵ月 vs 11.2ヵ月、ハザード比0.79(95%信頼区間:0.65-0.95;p=0.01))。また、Trop2遺伝子の発現にかかわらずOSの改善傾向が認められ、PFSの中央値に関しても、SGで改善が認められた。SG群268例のうち、UGT1A1 *28/*28遺伝子型を有する患者(n=25、9%)は、UGT1A1 *1/*28遺伝子型を有する患者(n=119、44%)または*1/*1遺伝子型を有する患者(n=104、38%)と比較して、好中球減少症(それぞれ64%、57%、45%)および下痢(24%、13%、6%)を含むグレード3の治療緊急有害事象(TEAE)の発生率が数値的に高かったが、UGT1A1の遺伝子型に関係なく、標準的な対処により管理可能であった。 以上の結果から、SGは前治療歴のあるHR陽性/HER2陰性進行乳がんにおいて、追跡期間を延長しても化学療法と比較して臨床的に意義のあるベネフィットを示すことが実証された。膵がん
GnP vs. mFOLFIRINOX or S-IROX in metastatic pancreatic cancer: Additional data from the GENERATE (JCOG1611) trial 遠隔転移を有するまたは再発膵癌に対するゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法/modified FOLFIRINOX療法/S-IROX療法の第II/III相比較試験: GENERATE (JCOG1611)試験 遠隔転移を有するまたは再発膵がんに対する標準療法といて広く用いられていたゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法(GnP 療法)と、modified FOLFIRINOX療法(mFOLFIRINOX療法)およびS-1+イリノテ カン+オキサリプラチン併用療法(S-IROX療法)の優越性を検証したランダム化第2/3相試験。 今回の中間解析では登録者527例中426例が解析対象であった。主要評価項目であるOSの中央値は、GnP群で17.1カ月、mFOLFIRINOX群で14.0カ月(HR 1.31、95%CI 0.97-1.77)、S-IROX群で13.6カ月(HR 1.35、95%CI 1.00-1.82)。mFOLFIRINOX群とSIROX群が優越性を示す予測確率が両群とも1%未満であったため、同試験は早期中止となった。 更にS-IROX群において治療との因果関係が否定できない死亡が1例認められた。感染、食欲不振、倦怠感、吐き気、下痢は、mFOLFIRINOX群とSIROX群で多く認められた。 同試験により、転移性膵がんまたは再発膵がんに対し、mFOLFIRINOX療法、S-IROX療法は、標準治療であるGnP療法のOSに対する優越性を示さないこと、またmFOLFIRINOX療法とS-IROX療法は、GnP療法と比較して有害事象が強いことが世界で初めて明らかとなった。 今後も転移性膵がんまたは再発膵がんに対しては、現在の標準治療であるGnP療法が第一選択治療として推奨される。固形がん
Landscape of Clonal Hematopoiesis by PBMC-Informed Liquid Biopsy in Advanced Solid Tumors: SCRUM-Japan MONSTAR-SCREEN-2 血液を使ったリキッドバイオプシーは、低侵襲で簡便であるメリットがある一方で、がんとは関係なく遺伝子異常をもった血液細胞が増殖するクローン性造血(CH)由来の遺伝子異常を誤ってがん細胞由来であると判断する偽陽性が懸念されている。 そこでSCRUM-Japan*1 MONSTAR-SCREEN-2*2において、進行固形がんを対象に血漿だけでなく血液細胞を使ったリキッドバイオプシー検査(PBMC-informed LBx)を実施し、CH由来の遺伝子異常の割合を検討した結果が発表された。 30種類以上の様々ながん患者さん計1,456人の解析により、3,190の病的遺伝子異常が検出され、このうち730(22.9%)はCH由来と分類された。その中には、CHと関連が深いとされているDNMT3A、TET2などの遺伝子のみならず、がんの治療標的であるBRCA2、KRAS、CDK12などの遺伝子異常も含まれていた。特に相同組み替え修復関連の遺伝子はCH由来の遺伝子異常を高頻度に含み、PARP阻害剤などの治療適応の判断に重要とされるBRCA2遺伝子では、がんの種類によっては40%を超えるCH由来遺伝子異常が検出された。また多変量解析により、加齢と喫煙がCHと強く相関していることが示唆された。 今後PBMC-infomed LBxが実臨床にも導入され、CH由来の偽陰性を除外し、治療標的となる遺伝子異常を正確に評価することが望まれる。 *1 SCRUM-Japan 2013年に開始した希少肺がんの遺伝子スクリーニングネットワーク「LC-SCRUM-Japan」(現:LC-SCRUM-Asia)と、翌2014年に開始した大腸がんの遺伝子スクリーニングネットワーク「GI-SCREEN-Japan」(現:MONSTAR-SCREEN)が統合してできた日本初の産学連携全国がんゲノムスクリーニングプロジェクト。 *2 MONSTAR-SCREEN-2 肺がん以外の進行固形がん患者さんを対象に、がん組織だけでなく、血液によるリキッドバイオプシーを用い、がんのDNA・RNA・タンパク質の異常を網羅的に解析する産学連携プロジェクト。 関連リンク:第21回日本臨床腫瘍学会学術集会