この記事の3つのポイント
・EGFRエクソン20挿入変異陽性進行性非小細胞肺がんを対象とした第3相のPAPILLON試験
・初回治療としてのEGFRとMETに対する二重特異性抗体アミバンタマブ+化学療法の有効性・安全性を検証
・アミバンタマブ+化学療法により無増悪生存期間が有意に改善
2023年10月20~24日、スペイン・マドリードで開催されたESMO(欧州臨床腫瘍学会)にて、未治療のEGFRエクソン20挿入変異陽性進行性非小細胞肺がんに対するEGFR/METを標的とした二重特異性抗体アミバンタマブ+化学療法の有効性、安全性を検証した第3相のPAPILLON試験の結果がUniversité Paris-SaclayのNicolas Girard氏らにより公表された。
PAPILLON試験は、未治療のEGFRエクソン20挿入変異陽性進行性非小細胞肺がんに対して、アミバンタマブ+化学療法併用療法を実施する群、もしくは化学療法単独療法を実施する群に無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として客観的奏効率(ORR)、全生存期間(OS)などを比較検証した第3相試験である。
本試験の結果、主要評価項目であるPFSの中央値は、アミバンタマブ+化学療法併用群の11.4ヶ月(95%信頼区間:9.8-13.7ヶ月)に対して化学療法単独群で6.7ヶ月(95%信頼区間:5.6-7.3ヶ月)と、アミバンタマブ+化学療法併用群で病勢進行または死亡のリスクが60.5%(HR:0.395,95%信頼区間:0.30-0.53,P<0.0001)改善した。
18ヶ月無増悪生存率は、アミバンタマブ+化学療法併用群の31%に対して化学療法単独群で3%を示した。なおサブグループ解析の結果、年齢(65歳未満/65歳以上)、人種(アジア人/非アジア人)、喫煙歴(あり/なし)の因子でも同様に、アミバンタマブ+化学療法併用群によるPFSの改善傾向が確認されている。
副次評価項目であるORRは、アミバンタマブ+化学療法併用群の73%に対して化学療法単独群で47%(Odds Ratio:3.0,95%信頼区間:1.8-4.8,P<0.0001)を示した。
OSは本解析時点ではデータ未成熟であったが、化学療法単独群に比べてアミバンタマブ+化学療法併用群で死亡のリスクが32.5%(HR:0.675,95%信頼区間:0.42-1.09,P=0.106)減少傾向を示した。
一方の安全性として、本試験で多くの患者で確認されたアミバンタマブ+化学療法併用群の治療関連有害事象(TRAE)は好中球減少症、爪周囲炎、発疹、貧血、インフュージョンリアクション、低アルブミン血症であり、TRAEによる治療中止率は7%であった。
以上のPAPILLON試験の結果よりNicolas Girard氏らは「未治療のEGFRエクソン20挿入変異陽性進行性非小細胞肺がん患者に対するアミバンタマブ+化学療法は、単独化学療法に比べて病勢進行または死亡のリスクを改善し、この疾患へのアミバンタマブの上乗せ効果の臨床意義が確認されました」と結論を述べた。
参照元:Girard N, et al. Amivantamab plus chemotherapy vs chemotherapy as first-line treatment in EGFR exon 20 insertion-mutated advanced non-small cell lung cancer (NSCLC): primary results from PAPILLON, a randomized phase 3 global study. ESMO Congress 2023, LBA5