未治療のEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんに対するエルロチニブ+ラムシルマブ、L858R変異患者で高いOS延長効果第21回日本臨床腫瘍学会学術集会より


  • [公開日]2024.02.28
  • [最終更新日]2024.03.27

2月22日~24日、第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO 2024)が名古屋国際会議場で開催された。同学術集会の「Presidential Session 1:呼吸器」にて、「RELAY: Final Overall Survival with Erlotinib+Ramucirumab or Placebo in Untreated, EGFR-Mutated Metastatic NSCLC」というタイトルで中川和彦先生(近畿大学病院 腫瘍内科)が発表した。

国際共同二重盲検プラセボ対照第3相試験であるRELAY試験(NCT02411448)においては、未治療のEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)において、エルロチニブ(製品名:タルセバ)+ラムシルマブ(製品名:サイラムザ)が無増悪生存期間PFS)を有意に改善することが既に示されている。

今回のJSMOでは、intention-to-treat(ITT)および日本人サブセットの最終的な全生存期間OS)の結果が初めて公表された。

同試験では、2016年1月から2018年2月までの間に、EGFRエクソン19delまたはL858R変異が認められ、脳転移を有さない449例を、エルロチニブ(150mg/日)+ラムシルマブ(10mg/kg q2w、n=224)を投与する群、またはプラセボ群(n=225)に無作為に割り付けられた。登録症例の半数近い211例が日本人であった。

データカットオフ時点で297例の死亡が報告された(66%が成熟)。追跡期間中央値45.1ヵ月におけるITT集団のOSの中央値は、エルロチニブ+ラムシルマブ群の51.1ヵ月に対し、プラセボ群で46.0ヵ月であり、OSの改善認められた(HR 0.98 [95%信頼区間:0.78-1.24])。また日本人サブセットでも同様の傾向が認められた(OSの中央値は54.3ヶ月 vs 46.0 ヶ月:HR 0.91[95%信頼区間:0.65-1.26])。

遺伝子変異タイプ別で見ると、L858RのITT集団(n=204)におけるOS中央値は、51.6ヵ月 vs 45.8ヵ月、HR 0.87(95%信頼区間:0.62-1.22)、日本人集団(n=110)で54.3ヵ月 vs 43.2ヵ月、HR 0.63(95%信頼区間 0.40-0.99)であった。一方エクソン19delのITT集団(n=243)におけるOS中央値は、49.0ヵ月 vs 51.4ヵ月、HR 1.13(95%信頼区間:0.83-1.55)、日本人集団(n=100)で53.9ヵ月 vs 62.1ヵ月、HR 1.40(95%信頼区間 0.86-28)であった。

また、ITT集団におけるTP53変異陽性症例のOS中央値は45.7カ月 vs 36.3カ月でHR 0.84(95%信頼区間:0.59-1.20)、日本人集団では45.8カ月 vs 40.5カ月でHR 0.86(95%信頼区間:0.53-1.42)であった。一方、ITT集団におけるTP53野生型症例OS中央値は、55.9カ月 vs 67.2カ月でHR 1.25(95%信頼区間:0.88-1.25)、日本人集団では62.2カ月 vs 67.2カ月でHR 1.11(95%信頼区間:0.69-1.77)であった。

増悪後のT790M陽性率は、ITT集団において47.0% vs 46.0%、日本人集団では52.0% vs 51.0%であった。後治療でオシメルチニブ(製品名:タグリッソ)の投与を受けていたのは、ITT集団において54.0% vs 55.1%、日本人集団で60.4% vs 55.2%であった。

エルロチニブ+ラムシルマブ群の安全性プロファイルは過去の報告と一致しており、経時的な毒性の増加も認められなかった。

今回の結果は、既報のエルロチニブ+ラムシルマブによるPFS改善のメリットがOSの改善に反映されたことを示している、と中川先生。特にEGFR変異の中でも予後が悪いとされているL858Rにおいて高い効果が認められたことを高く評価した。

関連リンク:
第21回日本臨床腫瘍学会学術集会

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