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アロマターゼ阻害薬治療後のホルモン受容体陽性HER2陰性閉経後の進行性乳がん患者に対するアルペリシブ+フルベストラント併用療法、無増悪生存期間を統計学的有意に改善する

この記事の3つのポイント
アロマターゼ阻害薬治療後のホルモン受容体陽性HER2陰性閉経後の進行性乳がん患者が対象の第3相試験
・PI3Kα特異的阻害薬アルペリシブ+フルベストラント併用療法有効性を比較検証
・PIK3CA変異を有する患者群で病勢進行または死亡のリスクを35%統計学有意に減少

2019年5月17日、医学誌『The New England Journal of Medicine』にてアロマターゼ阻害薬治療後のホルモン受容体陽性HER2陰性閉経後の進行性乳がん患者に対するPI3Kα特異的阻害薬であるアルペリシブ+フルベストラント併用療法の有効性を比較検証した第3相のSOLAR-1試験(NCT02437318)の結果がGustave RoussyのFabrice André氏らにより公表された。

SOLAR-1試験とは、アロマターゼ阻害薬治療後のホルモン受容体陽性HER2陰性閉経後の進行性乳がん患者(N=572人)に対して28日を1サイクルとして1日1回アルペリシブ 300mg+1日目(1サイクル目は1、15日目)にフルベストラント500mg併用療法を投与する群、または28日を1サイクルとしてプラセボ+1日目(1サイクル目は1、15日目)にフルベストラント500mg併用療法を投与する群に1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目としてPIK3CA変異を有する患者群における無増悪生存期間PFS)、副次評価項目として客観的奏効率ORR)、PIK3CA変異のない患者群における無増悪生存期間(PFS)などを比較検証した無作為化二重盲検プラセボ対照の第3相試験である。なお、本試験に登録された全患者群の内、341人の患者でPIK3CA変異陽性が確認されている。

本試験が実施された背景としてホルモン受容体陽性乳がん患者の約40%でPIK3CA変異陽性が確認され、PIK3CA変異を有する患者ではホルモン療法に対する抵抗性を示す。他の臨床試験にて、PI3Kα特異的阻害薬であるアルペリシブ療法は、PIK3CA変異を有する患者に対しても抗腫瘍効果を示すことが判っており本試験が実施された。

本試験のフォローアップ期間中央値20.0ヶ月時点における結果、主要評価項目であるPIK3CA変異を有する患者群における無増悪生存期間(PFS)中央値はアルペリシブ群11.0ヶ月(95%信頼区間:7.5−14.5ヶ月)に対してプラセボ群5.7ヶ月(95%信頼区間:3.7−7.4ヶ月)、アルペリシブ群で約2倍の無増悪生存期間(PFS)を示し、病勢進行または死亡(PFS)のリスクを35%統計学有意に減少(HR:0.65,95%信頼区間:0.50–0.85, P<0.001)した。また、副次評価項目であるPIK3CA変異のない患者群における無増悪生存期間(PFS)は、アルペリシブ群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを15%減少(HR:0.85,95%信頼区間:0.58–1.25)するものの統計学有意な差は確認されなかった。

また、PIK3CA変異を有する患者群における客観的奏効率(ORR)はアルペリシブ群35.7%に対してプラセボ群16.2%、PIK3CA変異のない患者群における客観的奏効率(ORR)はアルペリシブ群26.6%に対してプラセボ群12.8%であった。

一方の安全性として、最も多くの患者で確認されたグレード3または4の治療関連有害事象(TRAE)は高血糖でアルペリシブ群36.6%に対してプラセボ群0.7%、皮膚障害でアルペリシブ群9.9%に対してプラセボ群0.3%、下痢でアルペリシブ群6.7%に対してプラセボ群0.3%であった。なお、治療関連有害事象(TRAE)による治療中止率はアルペリシブ群25.0%に対してプラセボ群4.2%であった。

以上のSOLAR-1試験の結果よりFabrice André氏らは以下のように結論を述べている。”アロマターゼ阻害薬治療後のホルモン受容体陽性HER2陰性閉経後の進行性乳がん患者に対するPI3Kα特異的阻害薬アルペリシブ+フルベストラント併用療法は、PIK3CA変異を有する患者群で無増悪生存期間(PFS)を統計学的有意に改善しました。”

Alpelisib for PIK3CA-Mutated, Hormone Receptor–Positive Advanced Breast Cancer(N Engl J Med. 2019 May 16;380(20):1929-1940. doi: 10.1056/NEJMoa1813904.)

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