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非ホジキンリンパ腫の治療法

[公開日] 2017.12.25[最終更新日] 2024.10.24

日本で比較的多くみられる非ホジキンリンパ腫(NHL)の治療法

●びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL) NHLの30%から40%を占めるびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)は中悪性度の病型で、限局期(I期またはII期)で10cm以上の巨大腫瘤がない場合、標準薬物療法である化学療法+リツキシマブ併用療法のR-CHOP療法3コースと放射線療法の組合せ、または放射線を使用せずにR-CHOP療法のみ6コースから8コースが推奨されています。 巨大腫瘤がある場合はR-CHOP療法6コースから8コースを実施し、治癒目的の放射線療法を追加することもあります。いずれにおいても、治療により完全奏効(CR)が得られない場合は放射線療法をさらに実施し、それでもCRが得られない時は二次治療として救援化学療法に移行します。初回治療でCRが得られた後に再発した場合も救援化学療法を実施します。 進行期(AIII期またはIV期)に入っているDLBCLの標準治療はR-CHOP療法6コースから8コースで、巨大腫瘤が存在していた部位に放射線照射を追加することもあります。初回治療で完全奏効(CR)、または部分奏効(PR)が得られた後の無治療経過観察中に再発した場合、あるいは初回治療でも不変、または進行した場合は二次治療として救援化学療法に移行します。65歳以下で救援化学療法により奏効した場合は、造血幹細胞移植を実施することができます。 *R-CHOP療法:CD20を標的とする分子標的抗体医薬リツキシマブと、化学療法のシクロホスファミド+ドキソルビシン+ビンクリスチン+プレドニゾロンの5剤併用療法 *救援化学療法:DHAP療法(デキサメタゾン+シスプラチン+シタラビン±リツキシマブ)、ESHAP療法(メチルプレドニゾロン+エトポシド+シタラビン+シスプラチン±リツキシマブ)、ICE療法(イホスファミド+カルボプラチン+エトポシド±リツキシマブ)など ●濾胞性リンパ腫(FL) NHLの7%から15%を占める濾胞性リンパ腫(FL)は代表的な低悪性度B細胞リンパ腫で、限局期(I期またはII期)で発見されることは少なく、進行期(III期またはIV期)で初めて診断されることが多いため、限局期では特に推奨される初回標準治療はありません。病変すべてが1照射野内に入れば、放射線療法による高い根治率が期待されます。 進行期(III期またはIV期)の標準治療は化学療法±リツキシマブで、主にR-CHOP療法、またはR-CVP療法(リツキシマブ+シクロホスファミド+ビンクリスチン+プレドニゾロン)が推奨されています。放射線免疫療法、および造血幹細胞移植の選択肢もあります。 濾胞性リンパ腫(FL)は年単位で緩やかに進行するため抗がん剤が効きにくいです。全身症状や巨大腫瘤がない場合は、診断後直ちに治療を開始した場合の生存期間延長を示す明確なデータがないため、限局期、進行期ともに無治療で経過を観察することがあります。病勢進行(PD)や全身症状が出現した時からの薬物療法開始を前提とする「無治療経過観察」という1つの選択肢であり、低腫瘍量の規準に該当する患者に適用されます。 治療開始規準や低腫瘍量の統一された国際規準はありませんが、実臨床ではBNLI(British National Lymphoma Investigation)規準、GELF(Groupe d'Etude des Lymphomes Folliculaires)規準、GLSG(German Low Grade Lymphoma Study Group)規準に基づく病変長径や骨髄機能、全身症状などの該当項目により判断されています。 濾胞性リンパ腫(FL)は難治性で再発率が高いものの、再発時の標準治療は確立されていません。というのも、再発時には初回診断時とは異なるがん細胞が出現している可能性があり、実際にはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に変わっていることが多いです。そのため、再度、病理組織検査により診断を確定します。DLBCLに変化した場合はDLBCLの治療法に準じます。その他、リツキシマブ±化学療法、放射線免疫療法、造血幹細胞移植などが選択されます。 ●末梢性T細胞リンパ腫(PTCL) 中悪性度リンパ腫の10%から15%を占める末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)では、T細胞表面のCD30発現が陽性の場合は未分化大細胞リンパ腫、さらに未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)が発現陽性の場合はALK陽性未分化大細胞リンパ腫と診断されます。PTCLの基本的な治療法は化学療法で、全体では4つに分けられる病型のうち、ALK陽性未分化大細胞リンパ腫はCHOP療法が推奨されており、治療成績も良好です。 それ以外のALK陰性未分化大細胞リンパ腫、非特定型末梢性T細胞リンパ腫、および血管免疫芽球性T細胞リンパ腫の3つはCHOP療法の効果があまり期待できないのが実情で、標準治療も確立されていないため、新規治療薬の臨床試験への参加や造血幹細胞移植が選択肢として試みられています。 なお、B細胞リンパ腫細胞に発現するCD20を標的とするリツキシマブはPTCLには用いられません。CD30発現陽性が確認された未分化大細胞リンパ腫は、2014年からCD30標的抗体医薬のブレンツキシマブ ベドチン(商品名アドセトリス)が使用可能になっています。 ●バーキットリンパ腫(BL) 腫瘤形成性の高悪性度B細胞リンパ腫であるバーキットリンパ腫(BL)は小児や若年成人に多く、小児悪性腫瘍全体の25%から40%を占めます。1日単位でがん細胞が倍増すると考えられますが、強力な多剤併用化学療法で効果が期待できます。推奨されている化学療法はCODOX-M/IVAC療法、hyper-CVAD療法などで、B細胞リンパ腫細胞がCD20発現陽性であればリツキシマブの追加が検討されます。 完全奏効(CR)の後に再発した場合、CRが得られない場合は救援化学療法を実施します。救援化学療法の標準は確立されておらず、初回の併用化学療法で選択しなかった治療法や、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)で用いられる救援化学療法を選択します。救援化学療法が奏効すれば、65歳以下の患者は造血幹細胞移植を行うことが可能になります。 *CODOX-M/IVAC療法:CODOX-M(シクロホスファミド+ビンクリスチン+ドキソルビシン+メトトレキサート)、IVAC(イホスファミド+エトポシド+シタラビン)の組合せ *hyper-CVAD療法:シクロホスファミド+ビンクリスチン+ドキソルビシン+デキサメタゾン、MA療法(メトトレキサート+シタラビン)を組み合わせる場合もある 参考:日本血液学会造血器腫瘍診療ガイドライン、日本癌治療学会がん診療ガイドライン、国立がん研究センターがん情報サービス、国立がん研究センター希少がんセンター、日本造血細胞移植学会ガイドライン
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