皮膚の構造とメラノーマ(悪性黒色腫)
皮膚は大きく分けて表皮・真皮・皮下組織の3層構造になっています。また、表面に一番近い表皮は、更に角質層・顆粒層・有棘層・基底層に分かれています。
基底層には、ところどころメラニン色素(皮膚の色素)を産生しているメラノサイトという細胞があります。メラノーマ(悪性黒色腫)とは、このメラノサイトが悪性化してできるがんのことです。
メラノーマ(悪性黒色腫)の罹患率と生存率
日本におけるメラノーマ(悪性黒色腫)の罹患者数は欧米と比較してかなり少なく、1年間で人口10万人あたり2人ほどと言われています。厚生労働省の調査によると、2017年の日本におけるメラノーマ(悪性黒色腫)の患者さんの数は約5,000人と報告されています。
メラノーマ(悪性黒色腫)の種類と原因
はっきりとした原因は分かっていませんが、外的刺激や紫外線などが引き金となることもあるようです。
見た目と顕微鏡所見、予後の観点から、下記の4つに分類されます。
悪性黒子型
高齢者の顔面に頻発し、10年以上にわたる水平方向への増殖を経て、病変内に腫瘤や潰瘍が生じます。慢性の紫外線照射や、BRAF、NRASなどの遺伝子変異が発症に関連していると言われています。
表在拡大型
主に体幹、下腿に発症するがんで、あらゆる年齢層に見られます。強い紫外線照射による刺激との関連が指摘されていて、白人では最も多い型です。
結節型
短期間で垂直方向の増殖へと移行するため、色素斑を認めないまま結節性の病変や腫瘤として潰瘍が形成されていきます。一般的に予後が悪く、特に腫瘍の厚みが予後と関連すると言われています。
末端黒子型
日本人で最も多い型です。50歳以降の発症が多く、足底や手足の爪に生じます。機械的刺激や外傷が引き金となるとも言われており、数ヵ月から数年を経て色素斑内に結節や腫瘤、潰瘍が生じてきます。c-KIT遺伝子変異やBRAF遺伝子変異との関連も報告されています。
粘膜型
中年から高齢者の口唇、口腔内、眼瞼、鼻腔、外陰部粘膜に発症するがんです。反復する外的刺激が引き金となると考えられています。皮膚にできるメラノーマ(悪性黒色腫)と比較して、血管やリンパ管などが多く治療が難しい場所にできるため、一般的に予後がよくありません。
メラノーマ(悪性黒色腫)の症状
多くは黒色調の色素斑として認識されます。表皮にとどまっている段階ではシミのような形態を示しますが、その後基底膜を破壊し真皮内に浸潤して水平方向に増殖していきます。
ほくろとの区別が難しいことがありますが、一般的に下記に示す5つの特徴が重要視されます。
- 左右非対称の不規則な形
- 形がぎざぎざしていて境界が不明瞭・不均一
- 色調にむらがある
- 大きさがやや大きい(直径6mmを超える場合は特に注意が必要)
- 時間の経過とともに大きくなる、色・形・かたさなどが変化する
メラノーマ(悪性黒色腫)の予後
メラノーマ(悪性黒色腫)は、早期発見・早期治療が大切であり、IA期では手術のみでほぼ治癒が望めます。
リンパ節転移や皮膚、肝臓、肺、脳転移などの遠隔転移を生じやすいため、治療後も定期的なチェックが重要です。特にリンパ節がある部位を触ってしこりの有無などを確かめるセルフチェックが大切です。