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肝臓がんの治療=肝動脈化学塞栓療法=

[公開日] 2014.03.01[最終更新日] 2014.03.01

肝動脈化学塞栓療法について

 肝動脈化学塞栓療法は、がんに栄養を送っている肝動脈に塞栓物質を詰めて血流を止め、がんを兵糧攻めにするとともに、抗がん剤で攻撃する治療法です。手術やラジオ波焼灼療法では治療の難しい進行したがんに行われます。  肝臓がんは、栄養を得るためにほかのがんよりも多くの血液を必要とし、肝動脈から栄養をもらいながら成長します。一方、正常な肝細胞は、門脈という肝動脈とは別の血管からも血流を受けています。そこで「がんに栄養を運んでいる肝動脈に塞栓物質を詰めて血流を遮断すれば、兵糧攻めによりがんを死滅させられる」という考えに基づいた治療法の開発が進められました。  当初は、肝動脈に塞栓物質だけを詰める肝動脈塞栓療法が行われていましたが、その後、抗がん剤を併用したほうが効果的だということがわかってきました。今では、抗がん剤と油性の造影剤との混合液を肝動脈から強く注入し、がんやその周辺の血管に長く留めることが行われています。これにより、効果を持続させるとともに、血管をしっかり塞栓できるため、より高い腫瘍壊死効果が得られます。  ガイドラインでは、肝動脈化学塞栓療法は「肝障害度(Child-Pugh分類を含む)がAかBで、がんの個数が3個以内であれば3cmを超えているか、がんの個数が4個以上」の肝臓がんに推奨されています。その対象は、手術を行えず、ラジオ波焼灼療法では効果を得るのが難しい場合となります。  肝動脈化学塞栓療法では、がんに栄養を送る肝動脈を確実にふさがなければなりません。患者さんによって血管の太さや位置が違うため、血管の位置を確認し、塞栓する場所を念入りに調べる必要があります。そのため、これらの検査が行える血管造影室で、治療は行われます。  実際の治療は、まず血管造影室の治療用ベッドに横になり、右足のつけ根を消毒・局所麻酔してから、そこにある血管(大腿動脈)を針で刺し、X線で血管の状態を透視しながら、カテーテルと呼ばれる管を肝動脈に向かって挿入していきます。  カテーテルが肝動脈に到達したら、肝動脈の全体像やがんの位置を確認し、がんに栄養を送っている血管を探します。それが見つかれば、カテーテルの中にマイクロカテーテルを入れ、再びX線で血管の状態を透視しながら目標の血管まで挿入していきます。  目標とする血管へ抗がん剤や油性造影剤を注入し、がんに行き渡らせた後、塞栓物質を詰め込んで、がんに流れ込んでいる血流を止めます。しっかり塞栓できていることが確認できたら、カテーテルを抜いて治療は終了です。治療時間は平均1時間です。治療後は病棟に戻り、出血予防のためにベッド上で安静にします。38℃ぐらいの発熱がみられますが、がんの死滅による一種の好反応なので心配はいりません。翌日からは通常の生活が可能で、経過が順調であれば、5~7日間ほどで退院できます。  退院1か月後と、以後、3か月ごとに受診し、ダイナミックCT/MRIで腫瘍の大きさや壊死率を、血液検査で腫瘍マーカーや肝機能を調べ、治療効果を確認します。抗がん剤の副作用がみられたら、その治療も行います。肝動脈化学塞栓療法をすると、がんが小さくなったり、十分な壊死になったりすることもありますが、根治を得られることはむしろ少なく、また大きくなっていくがんもあり、再治療が必要になることがあります。この治療は傷口が小さく、体への負担が軽いので、繰り返し治療を受けることが可能で、それにより予後を延ばすことが目的です。  ただし、この治療によって肝臓の正常な細胞や血管を傷めることがあり、治療回数が増えるほどそのリスクは高まります。治療間隔は3か月くらい空けることが望ましく、それより短い期間でがんが大きくなるようであれば、別の方法を試すことも含め、担当医とよく相談し、肝機能を低下させない治療を選んでください。 本コンテンツは認定NPO法人キャンサーネットジャパンが2014年3月に作成した「もっと知ってほしい肝臓がんのこと」より抜粋・転記しております。
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