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ホルモン受容体陽性HER2(超)低発現の転移再発乳がんに対するエンハーツ、無増悪生存期間を改善

この記事の3つのポイント
ホルモン受容体陽性HER2(超)低発現転移再発乳がんを対象とした第3相のDESTINY-Breast06試験
・抗HER2抗体薬物複合体エンハーツの有効性安全性を検討
併用療法により、良好な奏効率および持続的な効果を示す

2024年9月14日、医学誌『The New England Journal of Medicine』にてホルモン受容体陽性HER2低発現の化学療法未治療の転移再発乳がんに対する抗HER2抗体薬物複合体(ADC)であるエンハーツ(一般名:トラスツズマブ デルクステカン単剤療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のDESTINY-Breast06試験の結果がAditya Bardia氏らにより公表された。

DESTINY-Breast06試験は、内分泌療法及びCDK4/6阻害剤または複数の内分泌療法による前治療を受けたホルモン受容体陽性HER2低発現の化学療法未治療の転移再発乳がん患者(N=866人)に対してエンハーツ単剤を投与する群、主治医選択の化学療法を実施する群に1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目としてHER2低発現患者群における無増悪生存期間PFS)、副次評価項目として全患者群における無増悪生存期間(PFS)、全生存期間OS)、安全性等を比較検証した国際多施設共同オープンラベルの第3相試験である。

本試験の結果、主要評価項目であるHER2低発現患者群におけるPFSの中央値は、エンハーツ単剤群の13.2ヶ月(95%信頼区間:11.4-15.2ヶ月)に対して主治医選択の化学療法群で8.1ヶ月(95%信頼区間:7.0-9.0ヶ月)と、エンハーツ単剤群で病勢進行または死亡のリスクを38%減少(HR:0.62,95%信頼区間:0.51-0.74,P<0.001)した。探索的な解析として、HER2超低発現の患者群においても、PFSの改善傾向は一貫していた。副次評価項目であるOSは未成熟であった。

一方の安全性として、グレード3以上の有害事象(AE)発症率はエンハーツ単剤群の52.8%に対して主治医選択の化学療法群で44.4%を示した。間質性肺疾患または肺炎を発症した患者は49人(11.3%;グレード5は3人)、1人(0.2%;グレード2)であった。

以上のDESTINY-Breast06試験の結果よりAditya Bardia氏らは「ホルモン受容体陽性HER2低発現あるいは超低発現の化学療法未治療の転移再発乳がん患者に対するエンハーツ単剤療法は、化学療法に比べてPFSを改善し、安全性の懸念はありませんでした」と結論付けた。

参照元:
Trastuzumab Deruxtecan after Endocrine Therapy in Metastatic Breast Cancer(The New England Journal of Medicine 2024 DOI: 10.1056/NEJMoa2407086)

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