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国内初の二重特異性抗体ライブリバントを含む新規の抗がん剤が承認へ

8月30日に開催された厚生労働省薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会において、審議事項のうち2製品が、また報告事項のうち5製品が抗がん剤関連であった。

審議品目

オータイロカプセル40mg(レポトレクチニブ)

申請企業:ブリストル・マイヤーズ スクイブ

効能・効果:
「ROS1融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品

オータイロは、ROS1遺伝子の融合により異常に活性化したシグナルを選択的に阻害することで、がん細胞の増殖を抑える経口チロシンキナーゼ阻害剤。
またオータイロは、ROS1同様に遺伝子融合を引き起こすTRKA/B/CやALKに対する阻害活性も持っている。

なお、今回オータイロが承認となったROS1融合遺伝子陽性の非小細胞肺がんに対しては、既に経口チロシンキナーゼ阻害剤であるザーコリカプセル(一般名:クリゾチニブ)とロズリートレクカプセル(一般名:エヌトレクチニブ)の二剤が国内で承認されている。

ライブリバント点滴静注350mg(アミバンタマブ(遺伝子組換え))

申請企業:ヤンセンファーマ

効能・効果:
「EGFR遺伝子エクソン20挿入変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品

ライブリバントは、EGFR(上皮成長因子受容体)およびMET(間葉上皮転換因子)を標的とした完全ヒト型二重特異性抗体。EGFRやMETに直接結合することでシグナル伝達を抑える他、免疫細胞を介した抗腫瘍活性の誘発や、EGFRおよびMETの細胞内への取り込みを促進させることで、がんの増殖を抑えると考えられている。

なお、非小細胞肺がんに対する二重特異性抗体の承認は、国内では今回が初めてである。
またライブリバントは、「EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんに対する第3世代EGFR-TKIラゼルチニブとの併用療法」および「第3世代EGFR-TKIに耐性後のEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんに対する化学療法との併用療法」においても、国内で承認申請中となっている。

報告品目

①アラグリオ顆粒剤分包1.5g、②同内用剤1.5g(アミノレブリン酸塩酸塩)

申請企業:SBIファーマ

効能・効果:
「経尿道的膀胱腫瘍切除術時における筋層非浸潤性膀胱がんの可視化」を効能・効果とする新用量・その他の医薬品

アラグリオは、経口投与により腫瘍組織に取り込まれ、青色光源下で、赤く発光した腫瘍組織と正常組織を見分ける体内診断薬。膀胱鏡を使った膀胱がんの腫瘍摘出術の際に使われる。

これまでの用法である「膀胱鏡挿入3時間前(範囲:2-4時間前)」から「膀胱鏡挿入2-8時間前」に変更され、投与できるタイミングの幅が広がった。

パドセブ点滴静注20mg、同30mg(エンホルツマブベドチン(遺伝子組換え))

申請企業:アステラス製薬

キイトルーダ点滴静注100mg(ペムブロリズマブ(遺伝子組換え))

申請企業:MSD

効能・効果:
「根治切除不能な尿路上皮がん」を効能・効果とする新効能医薬品

パドセブは、がん細胞表面に発現しているネクチン-4というタンパク質を標的とする抗体に、微小管阻害活性を持つ抗がん剤を結合させた抗体薬物複合体ADC)である。

これまでパドセブは、化学療法後に増悪した進行尿路上皮がんに対して単剤療法で使われていたが、今回の審査により、抗PD-1抗体キイトルーダとの併用により、1次治療としての使用が可能となった。

①タフィンラーカプセル50mg、②同カプセル75mg、③同小児用分散錠10mg(ダブラフェニブメシル酸塩)

申請企業:ノバルティスファーマ

①メキニスト錠0.5mg、②同錠2mg、③同小児用ドライシロップ4.7mg(トラメチニブジメチルスルホキシド付加物)

申請企業:ノバルティスファーマ

効能・効果:
BRAF遺伝子変異を有する低悪性度神経膠腫」を効能・効果とする、①②は新効能医薬品、③新効能・新用量・剤形追加に係る医薬品

BRAF遺伝子変異陽性のがん細胞は、BRAFによる細胞増殖シグナルが過剰に活性化している状態となる。BRAFシグナルはMEK介して伝達されることから、BRAF遺伝子変異陽性のがんに対しては、BRAF阻害剤であるタフィンラーとMEK阻害剤であるメキニストの併用の有効性が認められている。

タフィンラー+メキニストは、BRAF遺伝子変異を有する悪性黒色腫や進行非小細胞肺がん、再発又は難治性の有毛細胞白血病、また標準的な治療が困難なBRAF遺伝子変異を有する進行・再発の固形がん(結腸・直腸がんを除く)に対して、既に国内で承認を得ている。
特に、固形がんに対する承認では、2023年11月に、体重26kg以上の小児に対する適応追加も承認されていた。
今回の審査により、小児に対する体重の制限がなくなり、小児脳腫瘍のひとつである神経膠腫に対する同薬剤の適応範囲が広がった。

参照元:
厚生労働省 薬事・食品衛生審議会(薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会)

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