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未治療の慢性リンパ性白血病高齢者患者に対するBTK阻害薬イムブルビカ単剤、リツキサン併用療法、無増悪生存期間(PFS)を統計学有意に改善

この記事の3つのポイント
・未治療の慢性リンパ性白血病の高齢患者対象の第Ⅲ相試験
・イムブルビカ単剤療法群と併用療法群の無増悪生存期間全生存期間などを比較
・イムブルビカベース治療は無増悪生存期間を統計学有意に改善

2018年12月1日、医学誌『The New England Journal of Medicine(NEJM)』にて未治療の慢性リンパ性白血病高齢者患者に対するBTK阻害薬(ブルトン型チロシンキナーゼ)であるイブルチニブ(商品名イムブルビカ;以下イムブルビカ)単剤、化学療法併用療法の有効性を比較検証した第Ⅲ相試験(NCT01886872)の結果がThe Ohio State University College of Medicine Columbus・Jennifer A. Woyach氏らにより公表された。

本試験は、65歳以上の未治療慢性リンパ性白血病患者に対してイムブルビカ単剤療法を投与する群(N=182人)、またはイムブルビカ+リツキシマブ(商品名リツキサン;以下リツキサン)併用療法を投与する群(N=182人)、またはベンダムスチン(商品名トレアキシン;以下トレアキシン)+リツキサン併用療法を投与する群(N=183人)に分けて、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として全生存期間(OS)、客観的奏効率ORR)などを比較検証した第Ⅲ相試験である。

本試験が実施された背景として、慢性リンパ性白血病に対するイムブルビカ単剤療法は2016年以降より標準治療薬として位置づけられている。しかし、既存の標準治療である化学療法と直接比較して有効性が検証されていない。また、既存の標準治療である化学療法は年齢の増加と伴に副作用が増加する。そこで、忍容性の高い治療法であるイムブルビカベースの治療の有用性が本試験で検証された。

本試験に登録された患者背景は以下の通りである。

年齢中央値はイムブルビカ単剤群71歳(65-89歳)、イムブルビカ+リツキサン併用群71歳(65-86歳)、トレアキシン+リツキサン併用群70歳(65-86歳)。

・性別はイムブルビカ単剤群で男性68%(N=123人)、イムブルビカ+リツキサン併用群で男性69%(N=125人)、トレアキシン+リツキサン併用群で男性65%(N=119人)。

ECOG Performance Statusはイムブルビカ単剤群でスコア0が48%(N=87人)、スコア1が49%(N=90人)、スコア2が3%(N=5人)、イムブルビカ+リツキサン併用群でスコア0が47%(N=86人)、スコア1が52%(N=94人)、スコア2が1%(N=2人)、トレアキシン+リツキサン併用群でスコア0が54%(N=98人)、スコア1が41%(N=75人)、スコア2が5%(N=10人)。

・FISHにより遺伝子ステータスはイムブルビカ単剤群でDel17pが5%(N=9人)、Del11qが19%(N=35人)、12トリソミーが22%(N=40人)、イムブルビカ+リツキサン併用群でDel17pが6%(N=11人)、Del11qが21%(N=37人)、12トリソミーが21%(N=38人)、トレアキシン+リツキサン併用群でDel17pが8%(N=14人)、Del11qが18%(N=33人)、12トリソミーが22%(N=40人)など。

なお、3群間で患者背景に大きな偏りはなかった。

以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。

■主要評価項目である無増悪生存中央値は(PFS)はイムブルビカ単剤群は未到達、イムブルビカ+リツキサン併用群は未到達、トレアキシン+リツキサン併用群は43ヶ月(38ヶ月-未到達)を示した。

■2年無増悪生存率(PFS)はイムブルビカ単剤群87%(95%信頼区間:81%-92%)、イムブルビカ+リツキサン併用群88%(95%信頼区間:81%-92%)、トレアキシン+リツキサン併用群74%(95%信頼区間:66%-80%)を示した。

■病勢進行または死亡(PFS)のリスクはトレアキシン+リツキサン併用群に比べてイムブルビカ単剤群で61%減少(HR:0.39,95%信頼区間:0.26-0.58,P<0.001)トレアキシン+リツキサン併用群に比べてイムブルビカ+リツキサン併用群で62%減少(HR:0.38,95%信頼区間:0.25-0.59,P<0.001)した。

■イムブルビカ単剤群とイムブルビカ+リツキサン併用群の病勢進行または死亡(PFS)のリスクに統計学有意な差は確認されなかった(HR:1.00,95%信頼区間:0.62-1.62,P=0.49)。

■副次評価項目である2年全生存率(OS)はイムブルビカ単剤群90%(95%信頼区間:85%-94%)、イムブルビカ+リツキサン併用群94%(95%信頼区間:89%-97%)、トレアキシン+リツキサン併用群95%(95%信頼区間:91%-98%)を示し、3群間の2年死亡(OS)のリスクで統計学有意な差は確認されなかった。

■客観的奏効率(ORR)はイムブルビカ単剤群93%(95%信頼区間:88%-96%)、イムブルビカ+リツキサン併用群94%(95%信頼区間:89%-97%)、トレアキシン+リツキサン併用群90%(95%信頼区間:85%-94%)を示し、イムブルビカベースの治療で客観的奏効率(ORR)が高率であった。

完全奏効率(CRR)はイムブルビカ単剤群7%(95%信頼区間:4%-12%)、イムブルビカ+リツキサン併用群12%(95%信頼区間:8%-18%)、トレアキシン+リツキサン併用群26%(95%信頼区間:20%-33%)を示し、トレアキシン+リツキサン併用群で完全奏効率(CRR)が高率であった。

安全性として、グレード3以上の貧血、好中球減少症、血小板減少性等の血液関連治療関連有害事象(TRAE)発症率はイムブルビカ単剤群41%、イムブルビカ+リツキサン併用群39%、トレアキシン+リツキサン併用群61%を示し、イムブルビカベースの治療で低率であった。

■グレード3以上の感染症等の非血液関連治療関連有害事象(TRAE)発症率はイムブルビカ単剤群74%、イムブルビカ+リツキサン併用群74%、トレアキシン+リツキサン併用群63%を示し、イムブルビカベースの治療で高率であった。

以上の第Ⅲ相試験の結果よりJennifer A. Woyach氏らは以下のように結論を述べている。“未治療の慢性リンパ性白血病高齢者患者に対するイムブルビカベースの治療はトレアキシン+リツキサン併用療法に比べて無増悪生存期間(PFS)を統計学有意に改善しました。なお、イムブルビカ単剤、イムブルビカ+リツキサン併用療法間で無増悪生存期間(PFS)の統計学有意な差は確認されませんでした。”

Ibrutinib Regimens versus Chemoimmunotherapy in Older Patients with Untreated CLL

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