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尿路上皮がん 免疫CP阻害薬PD-L1抗体アベルマブ(バベンチオ)が有効である可能性 ASCO GU2016


■この記事のポイント
・進行尿路上皮がんに対する免疫チェックポイント阻害薬PD-L1抗体アベルマブ(バベンチオ)の第1b相試験結果
・プラチナ系製剤に対する効果が乏しくなった方が対象
安全性結果は良好。有効性も概ね良好で、腫瘍にPD-L1タンパクが存在する方の方が効果が高い傾向


1月7日から9日まで米国サンフランシスコで開催された米国臨床腫瘍学会泌尿器がんシンポジウム(ASCO GU2016)で、米国立がん研究所のA.B. Apolo氏によって、「進行尿路上皮がんの二次治療として、免疫チェックポイント阻害薬抗PD-L1抗体アベルマブ(バベンチオ)の安全性と効果を確認する第1b相試験(JAVELIN;ジャベリン)試験」の結果が発表されました。

本試験では、プラチナ系製剤(シスプラチン等)の治療歴を有すか、投与が不適格である「尿路上皮がん」患者44人に、アベルマブ(バベンチオ)が10mg/kgを2週間おきに投与したときの、安全性と効果を評価しました。なお、PD-L1の発現による患者選択は実施しませんでした。

年齢中央値は68歳(30-84)、男性が68.2%、パフォーマンスステータス 0が43.2%、 1が56.8%、膀胱がん患者52.3%、内臓転移を有する患者さんが63.6%、転移癌に対する抗癌剤治療歴数中央値は2つで、1つの治療経験以下が47.7%、3つの治療経験以上が25.0%。

安全性・有効性良好、PD-L1タンパク発現が高い方が効果がある傾向

ポイントは以下の通り。
【安全性】
治療関連副作用は44人中26人(59.1%)に発現しました。しかしながら、25%以上に認められたものは、ほとんどがグレード1か2(経度から中等度)でした。
治療に関連したグレード3以上の重篤な副作用はグレード3の筋無力症1人だけでした。
副作用が起きて中止した患者さんは6人(13.6%)でしたが、治療との関連が疑われたのは2人でした。治療関連死はいません。

以上のことから安全性の高い治療薬ということが確認されました。

【有効性】
・アベルマブ(バベンチオ)注射の有効性では、7人(15.9%)で奏効(腫瘍が一定上縮小した方の割合)が認められ、1人は完全奏効(がん細胞が消失)でした。
奏効率は15.9%であり、病勢安定(がん細胞が大きくならない状態)が19人で認められ疾患制御率は59.1%でした。
奏効期間中央値は医学統計学的に未到達で、解析時で7人中6人(85.7%)で投薬が継続されていました。
・投与開始から12週時点の無増悪生存率(3か月間がんの進行が抑えられた人の割合)は47.2%で中央値は12.0週でした。
全生存期間のデータについても医学統計学的に未到達で、8人(18.2%)でがん細胞の縮小が認められ、内臓転移を有する患者も含まれていました。

◆PD–L1の発現度合いと効果の関連が評価について
・5%以上陽性であることを陽性の条件としたところ、PD-L1陽性患者における奏効率は40%(10人中4人)、PD-L1陰性患者における奏効率は9.1(22人中2人)でした。
・PD–L1発現の条件を1%以上、25%以上に変えても同様の結果でした。
・がん細胞に浸潤している免疫細胞の10%以上で陽性な患者(2人)では奏効は認められず、10%未満の患者では、20.0%(30人中6人)の奏効が得られました。
・5%以上陽性であることを陽性の条件とした場合、がんの進行を抑えた期間の中央値は陽性患者が医学統計学的に未到達、陰性患者が12.0週で、12週時点の無増悪生存期間率は陽性患者で70.0%、陰性患者で45.5%でした。

※医学統計学的未到達は、アベルマブ(バベンチオ)注射の効果が持続しており、がん細胞が大きくなり、アベルマブ(バベンチオ)注射の投与が不可能となった患者さんが少ないことを意味しています。

以上、尿路上皮がん患者を対象さんとしたグループで有効性と副作用に対する安全性が認められ、PD-L1(プログラムドデス–リガンド1)の発現状態によらず、一部の患者さんで抗腫瘍効果が認められました。がん細胞中の免疫細胞にPD-L1発現が低くても効果が認められていますが、発現が高い方が効果が高い傾向でした。

【補足:PD-LI発現の検査】
免疫組織化学法で分析しがん細胞の1%以上でPD-L1が陽性な患者、がん細胞の5%以上で陽性な患者、がん細胞の25%以上で陽性な患者、
がん細胞に浸潤している免疫細胞の10%以上で陽性な患者に分けて評価されました。

腫瘍細胞の1%以上でPD-L1が陽性な患者は11人(34.4%)、腫瘍細胞の5%以上で陽性な患者は10人(31.3%)、腫瘍細胞の25%以上で陽性な患者さんは5人(15.6%)、腫瘍細胞に浸潤している免疫細胞の10%以上で陽性の患者さんは2人(6.3%)でした。

Safety, clinical activity, and PD-L1 expression of avelumab (MSB0010718C), an anti-PD-L1 antibody, in patients with metastatic urothelial carcinoma from the JAVELIN Solid Tumor phase Ib trial.(ASCO-GU2016,Abstract 367)

Avelumab in Metastatic or Locally Advanced Solid Tumors (JAVELIN Solid Tumor)(NCT01772004)

記事:前原 克章(修正:可知 健太)

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