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肝臓がん(肝細胞がん)の治療


  • [公開日]2022.09.15
  • [最終更新日]2022.10.03

肝臓がん(肝細胞がん)の治療の決め方

肝臓がんの多くは、慢性肝炎や肝硬変を経て発生するため、腫瘍の進行度に加えて、背景となる肝機能を勘案し、治療法が決定されます。

肝臓がんは、
①慢性肝障害を合併
②薬物療法に治療抵抗性
③解剖学的および血行動態上、血管や皮膚を介したアプローチが可能
④肝内病変が主体
などの特徴を持っています。

そのため、局所療法が治療の主体となります。肝外病変がある場合や、局所療法が無効な場合には、全身療法の適応となります。

肝臓がん(肝細胞がん)の手術

手術の可否を決める要素

手術療法(肝切除術)は、肝臓がんにおいて最も根治性の高い治療です。

ガイドラインでは、「肝臓内にがんが限局していて、大きさに関わらず、がんの個数が3個以下、」の肝臓がんに対して、切除が強く推奨されています。また、門脈の本幹以外の末梢枝の浸潤にとどまる場合には、手術の適応とされています。

肝切除には、Child-Pugh分類Aまたは肝障害度Aの症例が望ましいとされており、Child-Pugh分類Bでは注意が必要とされています(他の治療法が難しい場合や、併存疾患やがんの大きさなどにより、手術による良好な予後が期待される症例もありますが、実際に検討された症例数が少ないことから、ガイドライン上には推奨文の記載はありません)。

また、手術の可否の判断においては、肝機能の評価が重要です。特に術前の肝機能の評価基準として、「ICG R15(%)」が標準的に使われています。(詳しくは診断・検査の項参照)肝機能が良好であれば肝臓の再生能力は高く、手術によって小さくなった容積も2~6か月ほどで十分に再生します。

術式

肝臓がんは、門脈を介して肝内転移するため、門脈支配に沿った系統的切除が望ましいとされています。しかし、肝機能が低下している症例などでは、肝臓をできるだけ温存する肝部分切除(腫瘍核出術含む)が選択されます。

肝切除術では、全身麻酔をした後、みぞおちから腹部にかけてJ字に切開し、手術前にCTやMRIなどの画像検査で特定したがんのある区域を切除していきます。日本では、肝臓を1番の尾状葉、2~4番の左葉、5~8番の右葉と、8つの区域に番号をつけて分割した「クイノーの分類」を「亜区域」、右葉の後区域と前区域、左葉の内側区域と外側区域の4つに分割した「ヒーリー&シュロイの分類」を「区域」として、がんの位置や大きさ、数などに応じて使い分けながら、葉切除、区域切除、亜区域切除といった手術を行っています。

なお、肝切除術は開腹手術以外に、切除範囲や腫瘍の位置に応じて、腹腔鏡下肝切除(腹部に複数の小さな穴を開け、そこから内視鏡や器具を挿入して手術を行う手術)も適応となる場合があります。

肝臓がん(肝細胞がん)のラジオ波焼灼療法(穿刺局所療法)

穿刺局所療法とは、腹部超音波やCTなどの画像をもとに直接がんに針を刺して行う局所治療です。ガイドラインでは「ChildPugh分類AまたはBで、がんの個数が3個以下、大きさが3cm以下」の場合に推奨されています。手術に比べて体への負担が少ないため、再発後にも繰り返し実施することが可能です。

主にラジオ波焼灼療法RFA)、経皮的エタノール注入(PEI)、経皮的マイクロ波凝固療法(PMCT)の3つの方法がありますが、現在はRFAが最初に推奨される治療法として位置づけられています。

RFAは腹部から電極針をがんに到達させ、ラジオ波を照射することにより、がんを焼灼壊死させる治療法です。治療の際には腹部の局所麻酔をしますが、がんを焼灼するときに痛みを伴う場合があるため、鎮痛剤や点滴麻酔が使われます。またRFA後は合併症のリスクがあるため注意が必要です。

ガイドラインでは「ChildPugh分類AまたはBで、がんの個数が3個以下、大きさが3cm以下で」の場合にRFAが推奨されています。また比較的大型の腫瘍の場合には、TACE(後述)との併用で予後改善が期待できるとされています。

肝機能良好(Child-Pughスコア7点以下)かつ3cm・3個以内の条件を満たしている初発の肝臓がんに関しては、手術療法とRFAの3年無発生率はほぼ同等というデータが得られています。ただし、全生存期間は観察期間中なのでまだ結果が出てきません。ラジオ波焼灼療法にするか、手術療法にするかの選択については、担当医とよく相談し、納得したうえで治療を受けるようにしましょう。

肝臓がん(肝細胞がん)の塞栓療法

肝動脈化学塞栓療法は、肝臓がんが肝動脈から栄養を得る性質を利用し、肝動脈に導入したカテーテルから塞栓剤や抗がん剤を注入する治療法です。従来は、が塞栓剤のみを使って肝動脈の血流を止める肝動脈塞栓療法(TAE)が使われてきましたが、現在は塞栓剤と抗がん剤を併せて注入する肝動脈化学塞栓療法(TACE)が主に使われています。

TACEは、根治治療が困難な進行がんに対する中心的な治療法です。ガイドラインでは、「肝障害度(Child-Pugh分類を含む)がAかBで、がんの個数が3個以内であれば3cmを超えているか、がんの個数が4個以上の肝臓がんで、手術穿刺局所療法の対象とならない場合」に推奨されています。

肝臓がんの薬物療法(全身療法)

薬物療法とその決め方

肝臓がんは、再発などを繰り返すうちに、最終的には局所療法の適応とならない進行がんへと進展していきます。具体的な薬物療法の適応は、ガイドラインでは「外科切除や肝移植、穿刺局所療法、TACEなどが適応とならない進行がんで、PS良好かつ肝機能良好なChild-Pugh分類Aの症例」と定められています。

現在の標準治療は、一次治療として免疫チェックポイント阻害剤であるアテゾリズマブと血管新生阻害剤であるベバシズマブ併用療法二次治療では分子標的薬の単剤(ソラフェニブ、レンバチニブ、レゴラフェニブ、ラムシルマブ、カボザンチニブ)が推奨されています。ただし、自己免疫性疾患などを持っている患者さんでは、一次治療としてソラフェニブまたはレンバチニブ単剤が推奨されています。

二次治療以降に関しては、ソラフェニブ治療後に関してのみ、レゴラフェニブ、ラムシルマブ、カボザンチニブの有効性安全性臨床試験によって示されているため、ガイドラインでも推奨されています。一方、アテゾリズマブとベバシズマブの併用療法や、レンバチニブ治療後に関しては、二次治療に関するデータが少なく、ガイドライン上では推奨している薬剤はありません。実際には、一次治療で使った薬剤と異なる薬剤が使われています。

進行肝臓がんにおいては、肝外への転移がしばしば見られます。転移したがんだけを対象とした前向きな臨床試験の結果はないものの、多くの臨床試験におけるサブグループ解析では、薬物療法の効果が示されています。そのため、ガイドライン上は、薬物療法を使うことが推奨されています。ただし、肝臓のがんが局所治療でコントロールできる場合には、肝外の転移したがんに対しても、局所治療が検討されます。

肝臓がん(肝細胞がん)のお薬一覧

分類 一般名 商品名
免疫チェックポイント阻害薬 アテゾリズマブ テセントリク
血管新生阻害薬 ベバシズマブ アバスチン
マルチキナーゼ阻害薬 ソラフェニブ ネクサバール
キナーゼ阻害薬 レンバチニブ レンビマ
マルチキナーゼ阻害薬 レゴラフェニブ スチバーガ
血管新生阻害薬 ラムシルマブ サイラムザ
キナーゼ阻害薬 カボザンチニブ カボメティクス

薬物療法の副作用

免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬は、それぞれ薬剤毎に特徴的な副作用があります。詳細は薬剤用語辞典をご覧ください。

副作用が現れた際には、まず最初に対症療法を実施しますが、それでも改善されない場合には、薬剤の減量や休薬、中止による対応が必要になります。薬剤を安全に長期間使用するためにも、副作用が重篤化する前に発見し、適切に対応することが重要です。副作用の起こりやすい時期や初期症状、自分でできる対処法など、治療を始める前に担当医や薬剤師、看護師と十分話し合い、副作用と上手に付き合っていきましょう。

肝臓がん(肝細胞がん)の放射線治療

放射線療法は、現在の肝臓がん治療ける標準療法としては推奨されていません。ただし、治療技術の進歩に伴い、体幹部位定位放射線治療(SBRT)や粒子線治療(陽子線治療・重粒子線治療)などが使われるようになってきています。また、他のがん種と同じように、骨転移や脳転移に対する局所療法としても推奨されています。

SBRTは、従来の方法と比較し、大量の放射線を短期間でピンポイントに照射でき、手術や穿刺局所療法ができない症例にも実施できるメリットがあります。また、粒子線治療は、X線と比較してさらに高いパワーで集中的にがんを破壊できるため、肝機能を温存しながら治療することができ、今後の治療として期待されています。

肝移植について

肝移植は、レシピエント(患者さん)の肝臓を摘出し、ドナー(臓器提供者)の肝臓に置き換えることです。肝臓のがんをすべて除去できるため、根治率の高い治療法となっています。手術の適応(ミラノ基準)や実施できる医療機関は厳しく条件づけられています。

肝移植には、「生体肝移植」と「脳死肝移植」があります。いずれの場合も肝臓がんの患者さんの肝臓をすべて摘出し、前者では健康な人の肝臓の一部を、後者では脳死した人の肝臓のすべてを移植します。日本では生体肝移植が多く実施されています。

肝移植は、適格基準は厳しく決められています。具体的には、非代償性肝硬変を伴う65歳以下の症例、かつ現在のゴールドスタンダードとなっているミラノ基準(肝臓以外の臓器への転移や脈管への侵襲を認めず、かつ、がんが1個の場合は5cm以下、または複数ある場合は3個以下かつ最大径が3cm以下)を満たしている症例が対象です。ただし、ミラノ基準を満たしていない場合でも、5-5-500基準(肝臓以外の臓器への転移や脈管への侵襲を認めず、かつ、5個以下かつ最大径が5cm以下で、AFP 500 ng/mL)に従って、移植が適応となることもあります。

肝臓がんの再発予防と再発後の治療

B型/C型肝炎ウイルスが原因で発症した肝臓がんにおいては、再発の予防策として、切除手術や穿刺局所療法後の抗ウイルス療法が有効であることが示唆されています。また肝移植後の再発予防には、mTOR阻害薬の有効である可能性が示されています。

再発後の治療は、基本的には初発と同じ治療戦略で実施されます。また、肝移植後の治療は、可能であれば再発巣の手術をはじめとする局所治療が検討されますが、転移などにより局所のコントロールが難しい場合には、薬物療法により対処します。また、mTOR阻害剤を再発予防として使用していない症例では、再発後の治療選択しとして考慮されます。

参考
がん情報サービス 肝臓がん

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