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頭頸部がんの治療

[公開日] 2023.01.01[最終更新日] 2023.01.01

頭頸部がんの治療の決め方

頭頸部がんの治療は、がんの発生部位、組織型、進行度、更には年齢や合併症など、個々の健康状態を総合的に見て判断されます。 治療法としては、手術療法、放射線療法、薬物療法が基本です。

頭頸部がんの手術療法

がんの病変部位をできる限り切除することを目的とした治療法です。リンパ節転移の有無や、発生・摂食などの機能温存の可能性を考慮し、具体的な手術法を決定していきます。

頸部郭清術

がんが頸部のリンパ節転移が見られる場合や転移の可能性が高い場合、その頸部リンパ節を切除します。周辺の組織も含めて広く切除することもありますが、術後の後遺症を軽くするために、組織をできるだけ温存するための治療法が選択されるようになってきています。

再建手術

頭頸部には食事、会話、呼吸など重要な機能を担っているため、手術により広範囲に切除をした後などに、口腔や咽頭、頸部などを修復するための組織移植を行うことがあります。通常はその患者さん自身の体の別の部分(腕やお腹の皮膚や筋肉など)を使って再建します。

頭頸部がんの放射線療法

頭頸部がんは、放射線療法の効果が出やすい「扁平上皮がん」が大部分を占めます。また放射線療法は、臓器の機能や形態が温存されやすく、治療後の容姿の変化、発声や咀嚼・嚥下機能などの低下が少ないため、頭頸部がんに対する中心的な治療法のひとつです。 X線などの高エネルギーの放射線を使って、細胞のDNAにダメージを与え、がん細胞の増殖抑制・死滅を誘導します。治療期間は、がん種やがんの広がりによりますが、一般的には6~8週程度です。 また、放射線療法の効果を高めるために、化学療法と併用することもあります。 放射線の副作用としては、照射を初めて3か月以内に発症する皮膚炎や粘膜炎、唾液の分泌障害や口腔乾燥、味覚障害などがあります(急性期障害)。また、6ヵ月~数年後に発症するものには、口腔乾燥、味覚障害などに加え、摂食嚥下障害、軟骨・下顎骨の炎症などがあります(晩期障害)。 また、薬物療法と組み合わせることにより副作用が強く出る場合もあるため、注意が必要です。

頭頸部がんの薬物療法

薬物療法は、腫瘍を小さくするために手術に先行して行われたり、放射線治療の効果を高めたりするために放射線治療と組み合わせて行われる場合があります。 また、手術や放射線治療が行えない遠隔転移のある場合は、薬物療法単独での治療が実施されます。 薬物治療の種類には、「細胞障害性抗がん剤(いわゆる抗がん剤)」「分子標的薬」「免疫チェックポイント阻害剤」が使われます。 頭頸部がんにおいて中心となるのは、細胞障害性抗がん剤であるシスプラチンですが、プラチナ系製剤耐性の症例には、タキサン系製剤であるパクリタキセル・ドセタキセルなどが使われます。 また、細胞障害性抗がん剤の他にも、分子標的薬として抗EGFR抗体であるセツキシマブ(製品名:アービタックス)や、免疫チェックポイント阻害剤として抗PD-1抗体であるペムブロリズマブ(製品名:キイトルーダ)やニボルマブ(製品名:オプジーボ)などが使われます。 下表には、頭頸部がんの9割を占める扁平上皮がんに対する主な治療方針をまとめています。 また、2020年の9月に、切除不能な局所進行・局所再発の頭頸部がんを対象とした光免疫療法という新しい治療が承認されています。 これは、がん細胞上のEGFR(ヒト上皮細胞増殖因子受容体)に対する抗体であるセツキシマブ(製品名:アービタックス)と、光感受性物質を結合させた抗体薬物複合体(製品名:アキャルックス)です。 この薬を投与後にレーザー光を照射することで、光化学反応が起きて、がん細胞を破壊するしくみです。 ただし、過敏症がある場合や、頸動脈などへの浸潤がある場合は禁忌であり、また標準的な治療ができない症例が対象であるなど、使用にあたっては様々な制限があるのが現状です。
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