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非小細胞肺がんに対する術後補助療法としてのオプジーボなど9製品の製造販売承認へ

2月27日、厚生労働省薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会は、審議項目として6製品の審議を行い、うち1製品が抗がん剤関連であった。報告事項として9製品を報告し、うち8製品ががん関連であった。

報告事項:医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査段階において、承認して差し支えないとされ、部会では審議せず報告のみでいいと判断されたもの。

審議品目

ペマジール錠4.5mg(一般名:ペミガチニブ)

効能・効果:FGFR1融合遺伝子陽性の骨髄性またはリンパ性腫瘍
申請企業:インサイト・バイオサイエンシズ・ジャパン

FGFR1融合遺伝子陽性の骨髄性またはリンパ性腫瘍は、染色体のFGFR1遺伝子が存在する領域が切断され、別の染色体の遺伝子と融合することで染色体異常が引き起こされる、きわめてまれな血液がんの1つ。さまざまなパートナー遺伝子がFGFR1チロシンキナーゼの活性化を誘導し、がん細胞の生存や増殖を引き起こす。臨床症状により、慢性期である骨髄増殖性疾患、もしくは骨髄異形成症候群、急性期である急性白血病に大別され、いずれも現在治癒あるいは長期寛解が期待できる治療法は造血幹細胞移植のみであり、標準治療が確立されていない。

ペマジールは選択的線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)阻害薬であり、厚生労働省より希少疾病用医薬品の指定を受けている。FGFR1/2/3に対して強力かつ選択的に阻害作用を発揮する経口薬である。

報告品目

オプジーボ点滴静注20mg、同100mg、同120mg、同240mg(ニボルマブ(遺伝子組換え))

効能・効果:非小細胞肺がんにおける術前補助療法
申請企業:小野薬品

肺がんは非小細胞肺がんと小細胞肺がんに大別され、肺がんの約80~85%が非小細胞肺がんである。治癒を目的とした外科手術は非小細胞肺がんのステージI~IIIAおよびIIIBの一部の患者が対象である。しかしながら、手術後に再発する割合は約30~55%と言われている。

オプジーボ免疫チェックポイント阻害薬の1つである。Programmed death-1(PD-1)とPD-1リガンドの経路を阻害することで、身体の免疫系を利用して抗腫瘍免疫応答を再活性化する。周術期としてはこれまでに「尿路上皮がんにおける術後補助療法」で承認を取得している。

今回は、手術後の再発予防のために、術前に化学療法と併用で使用される。ただし、投与回数は3回までという制限が設けられている。

ペメトレキセド点滴静注用100mg、同点滴静注用500mg、同点滴静注用800mg、同点滴静注液100mg、同点滴静注液500mg、同点滴静注液800mg(一般名:メトレキセドナトリウムヘミペンタ水和物)

効能・効果:扁平上皮がんを除く非小細胞肺がんにおける術前補助療法
申請企業:日本化薬

ペメトレキセドは、代謝拮抗剤と呼ばれる分類の抗悪性腫瘍薬である。がん細胞は増殖するために、DNA合成期に葉酸を必要とするが、ペメトレキセドはそれと似た構造を有し、DNA合成を阻害することでがん細胞を死滅させる。

今回は、同日に承認されたオプジーボとの併用で非小細胞肺がんに対する術前補助療法として用いられる。

テクネフチン酸キット(一般名:フィチン酸テクネチウム(99mTc))

効能・効果:子宮頸がん、子宮体がん、外陰がん、頭頚部がんにおけるセンチネルリンパ節の同定およびリンパシンチグラフィ
申請企業: PDRファーマ

テクネフチン酸キットは、放射性診断薬であるフィチン酸テクネチウム(99mTc)を調製するための凍結乾燥注射剤である。フィチン酸テクネチウムは、体内のカルシウムイオンと結合し、コロイド化する特性を持つ。体内にフィチン酸テクネチウムを投与すると、リンパ管を経て、コロイド化した状態でセンチネルリンパ節に到達し、その一部が生体の防御に関与している細網内皮系に捕捉される。それがガンマ線を検出し、画像処理を行うことで、センチネルリンパ節を特定することができる。

今回の適応追加においては、日本婦人科腫瘍学会と日本耳鼻咽喉科頭頚部外科学会の要望で開発が進められた。

エンハーツ点滴静注用100mg(一般名:トラスツズマブ デルクステカン(遺伝子組換え))

効能・効果:化学療法歴のあるHER2発現の手術不能または再発乳がん
申請企業:第一三共

エンハーツは抗HER2抗体薬物複合体ADC)である。乳がんは、日本において女性の罹患者数が最も多いがん腫である。また、HER2はがん細胞の表面に発現するタンパク質で、乳がん、胃がん、肺がん、大腸がんに見られる。乳がんの約50%がHER2低発現(IHC1+またはIHC2+/ISH-)であるといわれているが、これまでHER2低発現乳がんを対象とした抗HER2療法は日本には存在しなかったため、今回の承認はHER2低発現の乳がんにとって初めての治療選択肢となる。

シルガード9水性懸濁筋注シリンジ(一般名:組換え沈降9価ヒトパピローマウイルス様粒子ワクチン(酵母由来))

効能・効果:ヒトパピローマウイルス6、11、16、18、31、33、45、52、58型の感染に起因する子宮頸がん(扁平上皮がんおよび腺がん)およびその前駆病変(子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)1、2および3ならびに上皮内腺がん(AIS))、外陰上皮内腫瘍(VIN)1、2および3ならびに腟上皮内腫瘍(VaIN)1、2および3、尖圭コンジローマ
申請企業:MSD

今回は新用法の追加承認であり、「9歳以上15歳未満の女性は初回接種から6~12ヶ月の間隔を置いた合計2回の接種とすることができる」と追記される。それにより、これまで9歳以上の女性には合計3回の筋肉注射を行っていたが、9歳以上15歳未満の女性においては2回の接種で済むようになる。

5-FU注250mg、同1000mg(一般名:フルオロウラシル)

効能・効果:治癒切除不能な進行/再発胃がん
申請企業:協和キリン

アイソボリン点滴静注用25mg、同100mg(一般名:レボホリナートカルシウム水和物)

効能・効果:治癒切除不能な進行/再発胃がん
申請企業:ファイザー

エルプラット点滴静注液50mg、同100mg、同200mg(一般名:オキサリプラチン)

効能・効果:胃がん
申請企業:ヤクルト本社

オキサリプラチン点滴静注液50mg/10ml、同100mg/20ml、同200mg/40ml(一般名:オキサリプラチン)

効能・効果:胃がん
申請企業:サンド

これらの承認により「治癒切除不能な進行/再発胃がん」に対してFOLFOX療法(フルオロウラシル、レボホリナートオキサリプラチンの併用)が可能となった。

参照元:
厚生労働省 薬事・食品衛生審議会(薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会)

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