進行小細胞がんは、増殖が速く、多臓器やリンパ節に転移しやすい悪性度の高いがんである。化学療法や放射線治療に対する感受性が比較的に高い一方、奏効を得られたとしても、その多くの患者で再発・憎悪が認められる。主に多臓器転移が認められる進展型小細胞肺がんでは生存率は9から13か月と報告されており、2年生存率は5%以下と長期生存となることは少ない。
一方、薬剤開発も進んでいない領域であり、シスプラチン、イリノテカン、エトポシドなどの既存の化学療法を上回る新規薬剤は、この30年間見つかっていないのが現状である。
その中、進行小細胞肺がんに対するニボルマブ(商品名オプジーボ)単剤療法およびニボルマブとイピリブマブ(商品名ヤーボイ)併用療法の臨床試験の結果を、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2017)で、米メモリアル・スローン・ケタリングキャンサーセンターのMatthew David Hellmann氏が発表した。
本結果は、治療歴のある進行固形がん(小細胞肺がん、トリプルネガティブ乳がん、胃がん、膵臓がん、胆道がん、卵巣がん)に対し、ニボルマブ単剤療法およびニボルマブとイピリムマブの併用療法の第1/2相臨床試験(CheckMate-032、
NCT01928394)のうち、小細胞肺がん患者に絞った結果である。
オプジーボ単剤療法またはオプジーボとイヤーボイ併用療法の安全性と有効性を評価している。小細胞肺がん治療群(オプジーボ群98名、オプジーボ/ヤーボイ群61名)の早期結果では、これらの治療の忍容性と有効性が示された。なお、小細胞肺がん患者のPD-L1の発現については問われていない。
小細胞肺がん オプジーボとヤーボイの併用療法が効果がある可能性 Lancet Oncol(オンコロニュース2016/7/11)
今回、1年生存率および2年生存率も公表され、オプジーボ/ヤーボイ群の1年生存率40%、2年生存率26%に対して、オプジーボ群の1年生存率27%、2年生存率14%となった。
更に拡大したランダム化臨床試験が実施。オプジーボとヤーボイ併用がより効果をきたす一方、有害事象が多い
今回発表された拡大コホートでは、白金製剤併用療法後に病勢進行をきたした進行小細胞肺がんに対し、オプジーボ3mg/kgを2週毎に投与する群(オプジーボ群)で病勢進行まで投与、またはオプジーボ1mg/kgとヤーボイ3mg/kgを3週毎に4サイクル投与し、その後はオプジーボ3mg/kgを2週毎に投与する群(オプジーボ/ヤーボイ群)に割り付けられている。
患者は、オプジーボ群とオプジーボ/ヤーボイ群に3対2となるようランダムに割り付けられ、それぞれ147名と95名となった。主要評価項目は独立した評価委員会にて全奏効率(ORR)と設定された。
全奏効率は、オプジーボ/ヤーボイ群で21%、オプジーボ群で12%であった。また治療開始3ヶ月後の無増悪生存期間(PFS)率はオプジーボ/ヤーボイ群30%、オプジーボ群18%、3ヶ月生存率はオプジーボ/ヤーボイ群65%、オプジーボ群64%であった。
グレート3以上の有害事象は、ランダム化されていない最初の治療群と統合した結果が示され、オプジーボ群(45%)と比較してオプジーボ/ヤーボイ群(78%)で頻度が高かった。
その他、ランダム化されていない最初の治療と統合した結果の奏効率が、前治療数や白金製剤に感受性の有無等に解析されたデータも公表された。2次治療においてはオプジーボ群12%(137名中)およびオプジーボ/ヤーボイ群19%(98名)、3次治療以降においてはオプジーボ群12%(137名中)、オプジーボ/ヤーボイ群19%(98名)であった。白金製剤感受性患者においてはオプジーボ群13%(133名中)およびオプジーボ/ヤーボイ群26%(85名)、白金製剤感受性患者においてはオプジーボ群10%(110名中)、オプジーボ/ヤーボイ群15%(65名)であった。
今回の試験結果は、初期臨床試験の結果であり、現在、「プラチナ製剤に対して少なくとも病態コントロールされた小細胞肺がん患者を対象に、維持療法としてオプジーボ単剤またはオプジーボ/ヤーボイ併用するプラセボ対照第3相臨床試験(Checkmate-451、
JapicCTI-153091)」および「初回治療にプラチナ製剤使用した後に病態進行または再発された方対象に、オプジーボをトポテカンまたはアムルビシンと比較する第3相試験(Checkmate-331、
NCT02481830)」が実施中である。
Nivolumab (nivo) ± ipilimumab (ipi) in advanced small-cell lung cancer (SCLC): First report of a randomized expansion cohort from CheckMate 032.(ASCO2017 Abstract 8503)
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記事:前原 克章&可知 健太
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