■この記事のポイント
・免疫チェックポイント阻害薬PD-1抗体オプジーボの腎細胞がんに関する様々な条件下における解析結果
・様々な条件下において、アフィニトールよりもオプジーボの効果が証明
・腎細胞がんに対して、日本では承認申請済み。早期承認に期待


1月7日から9日まで米国サンフランシスコで開催された米国臨床腫瘍学会泌尿器がんシンポジウム(ASCO GU2016)で、米国メモリアルスローンケタリングがんセンターのRobert J. Motzer氏によって 「進行腎細胞がんに対する血管新生阻害薬『スニチニブ(スーテント)やソラフェニブ(ネクサバール)あるいはパゾパニブ(ヴォトリエント)など』投与後の治療として既治療の進行または転移を有する腎細胞癌に対して、免疫チェックポイント阻害薬PD-1抗体ニボルマブ(オプジーボ)とmTOR(エムトール)阻害薬エベロリムス(アフィニトール)を比較した第3相試験(CheckMate-025)」 について、発表されました。

本試験は、既治療(血管新生阻害薬が1剤または2剤)の進行淡明腎細胞がん患者821人を、オプジーボ群(2週おきに3mg/kgを投与;410人)とアフィニトール群(毎日アフィニトール錠10mgを投与;411人)に無作為に割りつけて行われました。

既に知られていた結果は以下の通りです。
【主な試験結果】
◆全生存期間中央値
オプジーボ群:25.0カ月、アフィニトール群:19.6カ月(統計学的にも証明)

◆奏効率(腫瘍が一定以上縮小した方の割合)
オプジーボ群:25%、アフィニトール:群5%(統計学的にも証明)

上記結果は以下でも報告しました。
腎細胞がん オプジーボ アフィニトールより生存期間延長 ECC2015(オンコロニュース2015/10/21)

様々な条件下でも、アフィニトールよりオプジーボの方が有効

今回は、患者背景と臨床試験前の治療に基づくサブグループ解析結果(様々な条件下にて解析)が報告されています。
・MSKCC(エムエスケーシーシー;文末参照Favorable、Intermediate、Poor)、IMDC(アイエムディーシー;文末参照)リスクスコア(Favorable、Intermediate、Poor、未報告)という2つの方法
・転移個数(1個、2個以上)
・転移部位(骨、肝臓)
・臨床試験前の治療(スニチニブ、パゾパニブ)
・1次治療の期間(6カ月未満、6カ月以上)
・血管新生阻害療法歴数(1、2)
*各グループにおける患者の割合はオプジーボ群とアフィニトール錠群で差はありませんでした。

本試験により、オプジーボの生存期間や奏効率(一定程度腫瘍が縮小した割合)の効果は、上記のような「リスクグループ」、「転移の部位と個数」、「前治療の種類」に関わらず、アフィニトールよりも高いことが明らかとなりました。

【MSKCCリスクスコアIMDCリスクスコア別の全生存期間に関する解析】
いずれのリスクの患者さんでもオプジーボ群に良好な結果が得られました。

◆MSKCCリスクスコアFavorable患者さんの全生存期間中央値
オプジーボ群では医学統計学的に未到達(効果が持続しており統計上算出できない状況)、アフィニトール群が29.0カ月。
今回の臨床試験の発表に向けてデータを抽出した時点では、オプジーボ群で20%の生存ベネフィットが得られる結果。

◆MSKCCリスクスコアIntermediate患者の全生存期間中央値
オプジーボ群が21.8カ月、アフィニトール群が18.4カ月。
オプジーボ群で19%の生存ベネフィット。

◆MSKCCリスクスコアPoor患者さんの全生存期間中央値は、
オプジーボ群が15.3カ月、アフィニトール群が7.9カ月。
オプジーボ群で52%の生存ベネフィット。

【転移個数、転移部位別のグループ解析】
全生存期間についてオプジーボ注射群が優れた結果となりました。

◆転移個数が1個の患者の全生存期間中央値
オプジーボ群が医学統計学的に未到達で記録が算出できずアフィニトール群が29.0カ月。
オプジーボ注射群で32%の生存ベネフィット。

◆転移個数が2個以上の患者さんの全生存期間中央値
オプジーボ群が22.2カ月、アフィニトール群が17.6カ月。
オプジーボ群で26%の生存ベネフィット。

◆骨転移患者さんの全生存期間中央値
オプジーボ群が18.5カ月、アフィニトール群が13.8カ月。
オプジーボ群で28%の生存ベネフィット。

◆肝臓転移患者さんの全生存期間中央値
オプジーボ群が18.3カ月、アフィニトール群が16.0カ月。
オプジーボ群で19%の生存ベネフィット。

【臨床試験前の治療の種類、1次治療の期間、抗血管新生阻害療法歴数】
全生存期間はオプジーボ群が優位な結果となりました。

◆臨床試験前の治療がスーテントの患者さんの全生存期間中央値
オプジーボ群が23.6カ月、アフィニトール群が19.8カ月。
オプジーボ群で19%の生存ベネフィット。

◆臨床試験前の治療がヴォトリエントの患者さんの全生存期間中央値
オプジーボ群が医学統計学的に未到達(効果が持続しており統計上算出できない状況)、アフィニトール群が17.6カ月。
オプジーボ群で40%の生存ベネフィット。

◆1次治療の期間が6カ月未満の患者の全生存期間中央値
オプジーボ群が18.2カ月、アフィニトール群が14.0カ月。
オプジーボ群で23%の生存ベネフィット。

◆1次治療の期間が6カ月以上の患者の全生存期間中央値
オプジーボ群が27.4カ月、アフィニトール群が22.8カ月。
オプジーボ群で22%の生存ベネフィット。

◆抗血管新生阻害療法歴数が1の患者の全生存中央値
オプジーボ群が23.6カ月、アフィニトール群が19.9カ月。
オプジーボ群で21%の生存ベネフィット。

【奏効率(腫瘍が一定以上縮小した方の割合)】
奏効率については、いずれのどの条件においてもオプジーボ群が高い結果となり、オプジーボ群は21%~32%、アフィニトール群は3%~9%。

Motzer氏は、「オプジーボ注射は抗血管新生療法を受けた進行腎細胞癌に対する標準的治療である」と結論付けています。

なお、本試験結果を受けて、米国では申請から2週間足らずで承認されており、日本でも昨年12月に承認申請されています。

腎がん 免疫チェックポイント阻害薬オプジーボが申請から約2週間足らずで米国承認(オンコロニュース2015/11/25)

進行腎細胞がん 免疫チェックポイント阻害薬オプジーボ ついに日本で承認申請(オンコロニュース2015/12/13)

参考:
CheckMate 025 phase III trial: Outcomes by key baseline factors and prior therapy for nivolumab (NIVO) versus everolimus (EVE) in advanced renal cell carcinoma (RCC);ASCO-GU,Abstract498

Study of Nivolumab (BMS-936558) vs. Everolimus in Pre-Treated Advanced or Metastatic Clear-cell Renal Cell Carcinoma (CheckMate 025);NCT01668784

【用語解説】
★MSKCC分類(参考:がん情報サービスホームページ 腎細胞がん
米国のメモリアルスローンケタリングがんセンターのMotzerらにより、サイトカイン療法(インターフェロン注射やインターロイキン2注射)による進行腎細胞がんの治療成績に関する検討が大規模に行われました。この検討では、5つの項目が進行腎細胞がんの予後因子としてとりあげられました。

この予後因子のいくつに該当するかを調べ、患者さんを3つのリスクグループに分類して(MSKCCリスク分類)治療成績を検討したところ、予後因子の数は予後によく反映されることがわかりました。

予後因子には以下の5つの項目があります。当てはまる項目の数でMSKCCリスク分類が決まります。
1.カルノフスキーの一般全身状態スコア(Karnofsky Performance Status: KPS)が80%未満
・KPSとは、全身状態をスコア化したものです。
・KPSが80%というのは、かなり臨床症状(病気によりあらわれている症状)がありますが、努力して正常の活動が可能である状態です。
・KPSの値が低くなるにつれて全身状態が悪くなります。
2.血清LDH(乳酸脱水素酵素)の値が正常上限値の1.5倍以上
3.ヘモグロビン値が正常下限値未満
4.補正血清カルシウム値が10mg/dL以上
5.腎がんの診断から治療開始までの期間が1年未満

Favorable risk;フェイヴァラブルリスク → 低リスク
Intermediate risk ; インターメディエイトリスク → 中リスク
Poor risk ; プワリスク → 高リスク

★ IMDCリスクスコア(参考文献 : Ko JJ et al. Lancet Oncol 2015; 16: 293–300
IMDC model (IMDC = International Metastatic renal cell carcinoma Database Consortium) では、二次治療まで分子標的治療を受けた患者さんを対象に予後を評価し、評価項目は
・ 乳酸脱水素酵素 がMSKCCリスク評価項目から除外
・ 好中球数 > 正常上限 が追加
・ 血小板数 > 正常上限 が追加
となっています。

上記の参考文献の中では、今回の結果は、
1.特に二次治療において、臨床試験の組み入れを勧めるかどうかの判断に用いられそうとのこと。
2.とりわけ、免疫チェックポイントを標的とした治療の腎細胞がんへの導入が近づいている現在では重要な情報であろう。
3.それとともに、免疫治療が登場したら、これら予後評価の項目もまた様変わりするかもしれない。という内容です。

前原 克章(構成・修正:可知 健太)


この記事に利益相反はありません。

人気記事