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特集 膀胱がん 第3回「筋層浸潤性膀胱がんの周術期化学療法」

[公開日] 2017.05.23[最終更新日] 2017.05.23

 膀胱がんは、ごく初期に発見して病巣を切除しても再発をくり返すことが多く、固形がんの中でも少し変わった特性があります。そういった膀胱がんの特性や初発膀胱がんの治療について、慶應義塾大学医学部 泌尿器科学教室 専任講師の菊地栄次先生にお話を伺いました。 第3回のテーマは「筋層浸潤性膀胱がんの周術期化学療法」についてです。 第1回記事:特集「~初発筋層非浸潤性膀胱がんとBCG療法~」 第2回記事:特集「BCG抵抗性となった筋層非浸潤性膀胱がんの治療選択」

筋層浸潤性膀胱がんの術前補助化学療法 ~実施する患者は2割程度~

可知:筋層浸潤していると膀胱全摘することになると思います。その際に術前補助化学療法や術後補助化学療法を併用することは多いのでしょうか? 菊地先生:術前補助化学療法は高いエビデンスレベルに支えられ、ガイドラインで支持された治療法です。ただし生存に寄与する割合は決して高くなく、5年生存率が約5%改善されるとされており、また膀胱全摘施行のタイミングが遅れることに患者さんが不安を持つことも少なくありません。膀胱がんからの血尿が持続していたり、水腎症がもとで腎機能が低下している症例などでは膀胱全摘を先行させる場合が少なくありません。従って実際に術前補助化学療法を実施する患者さんは2割程度です。  また術後補助化学療法を実施する患者さんの割合も2割程度です。患者さんの印象として膀胱全摘の手術侵襲は大きく、また人工肛門、新膀胱などの管理に慣れるのに時間を要するためか、その後に化学療法を施行することに対して負担を感じ、希望されないケースが少なくありません。 可知:術前補助化学療法はGC療法(ゲムシタビン+シスプラチン)となりますか? 菊地先生:術前はGC療法が主流になっていると思います。術前補助GC化学療法を施行し膀胱全摘標本の病理結果にて癌の残存を認めない、いわゆるT0であった場合は術後補助化学療法の追加は行いません。一部に癌の残存を認める場合は術後にGCの化学療法を追加することを提案しています。癌の大部分が残存しており、術前化学療法の治療効果が得られていないと判断された場合はレジメンを変更して化学療法を継続することをお勧めします。今後、PD-1抗体やPD-L1抗体に新たな術後の治療手段として期待しています。 可知:高齢の患者さんの場合でも膀胱全摘されるのでしょうか。 菊地先生:高齢者に対する膀胱全摘の適応に関しては慎重に考えています。80歳以上の場合、手術関連死の割合は10人に1人と報告されており、決して低くありません。一方で膀胱全摘により長期生存が得られる割合は3人に1人とされています。よって、全身状態を可能な限り正確に把握した上で、膀胱全摘を選択するか否かを患者さんと時間をかけて相談し、十分に納得を得た上で治療方針を決めるように心がけています。

第1回記事

[blogcard url="https://oncolo.jp/feature/170508k01"]

第2回記事

[blogcard url="https://oncolo.jp/feature/20170516k"] 記事:可知 健太 この記事に利益相反はありません。
特集 膀胱がん 膀胱がん

3Hクリニカルトライアル株式会社 執行役員 可知 健太

オンコロジー領域の臨床開発に携わった後、2015年にがん情報サイト「オンコロ」を立ち上げ、2018年に希少疾患情報サイト「レアズ」を立ち上げる。一方で、治験のプロジェクトマネジメント業務、臨床試験支援システム、医療機器プログラム開発、リアルワールドデータネットワーク網の構築等のコンサルテーションに従事。理学修士。

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