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【オンコロな人対談】株式会社インテリム顧問 西條 長宏先生(日本臨床腫瘍学会 特別顧問)・浮田 哲州社長(株式会社インテリム代表取締役)~前編~
[公開日] 2017.02.09[最終更新日] 2017.02.09
オンコロのがん用語辞典作成に協力を頂いている、インテリム社の浮田 哲州社長と同社顧問で日本臨床腫瘍学会 特別顧問の西條 長宏先生との対談です。シンクタンク出身の浮田社長が後発でCRO業界に参入し、どのようにしてインテリム社を国内の独立系CROとして最大手にまで成長させたのかやオンコロジー領域のCRO業界の現状について、西條先生を交え伺いました。
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ファシリテーター(以降F):本日は日本臨床腫瘍学会 特別顧問の西條長宏(さいじょう ながひろ)先生と株式会社インテリム代表取締役、浮田哲州(うきた まさくに)社長にお話を伺いたいと思います。
F:最初は浮田社長にお伺いします。インテリムを創業した経緯について教えて下さい。
浮田社長:私がインテリムを創業したのは2005年の8月になります。それまでは海外のシンクタンクで働き、その後、帰国しインテリムを起業しました。当時、日本ではCROが定着して20年ぐらいが経っている状況で新規参入するにはハードルの高い業界ではありました。但し、既存のCROはビジネスモデルとしてマンパワーだけを提供するスタイルでしたので、シンクタンク方式のCROは将来性があると判断し参入する事を決めましました。
F:そのなかでオンコロジーに注力しようと思った理由は何でしょうか?
浮田社長:当時の国内の製薬メーカーは生活習慣病など、開発品目のほとんどがプライマリー領域中心でした。しかし、様々な観点から今後はアンメットメディカルニーズの分野で各社がしのぎを削って行くだろうという事を想定し、その場合に一番差別化できる領域はオンコロジーであると考え力を入れていく事にしました。
F:なぜ、西條先生に顧問をお願いしようと思われたのですか?
浮田社長:インテリムのような新規参入のCROが、先発CROとの差別化を図るためにはオンコロジー領域に絞り込み、特色を出していく必要がある、そして、その為にはある程度独自のスキームを構築する必要があるだろうと考えました。そのような中で、その構想に応えて頂けるようなKOLの先生は誰なのかという事を社内で検討しリストアップした結果、最初にお名前が挙がったのが西條先生でした。当時の西條先生は近畿大学の特任教授で、現役で精力的に活動されているという事から、是非、顧問をお願いしようという話になりました。ただ、当時はインテリムも知名度が低く、オンコロジーの実績も少なかった事もあり、社内ではお願いしてもまず会っても頂けないだろうという声が大半でした。(笑)ただ、オンコロジーに特化してブランディングをしていくという構想をお話しして、断られた場合は、また別の手段を考えようという事で、西條先生以外の先生に顧問をお願いしようという事はあまり考えていませんでした。
F:西條先生、顧問就任の依頼があった時はどのように思われましたでしょうか?また、引き受けようと思われたきっかけについて教えて頂ければと思います。
西條先生: 私はもともと抗がん剤の臨床開発、診療ガイドラインの作成等々に関与しておりました。当時は国立がんセンターから、私立大学に移りある程度、制約も少なく自由になった状況でインテリムの顧問就任についてのお話を頂きました。その時、臨床試験に関するいろいろな知識を共有して一緒に仕事をすることで、抗がん剤開発をより科学的かつ効率よくできるかもしれない。非常に興味ある話だと思いました。国内のオンコロジー領域ではJCOGという官製の臨床試験グループがあります。1990年に初めてデータセンターができましたが、その当時はマネージャーが一人という状況でした。従ってCROのような組織(インテリム)は臨床試験をやっていく上で非常に重要と認識していました。
また、先ほど浮田社長が指摘されたように20年くらい前(1996年頃)に、オンコロジー領域のCRCの必要性が問われ出しました。そして1998年に出た新GCP適応する推進モデルに基づき都立駒込病院、聖マリアンナ医科大学にそれぞれ薬剤師の方1人、看護師の方1人計4名のCRCが誕生しました。その後10年余り経過した時点で実際それを専門とする会社と国立がんセンターのようなところで働くCRCの業務の違いを見てみたかったという事も引き受けた要因のひとつになります。
F:浮田社長、インテリムは2011年11月1日より西條先生が特別顧問として就任され、翌月の12月にオンコロジー開発部を発足されていますがその経緯について教えて下さい。
浮田社長:オンコロジーのスペシャル部門を立ち上げる中、フックになるポイントや特色として考えたことは、社内で教育プログラムを作り、その中で西條先生の口頭試問にパスした者だけがサーティフィケイトを取るという内容でした。
これからのオンコロジーの治験は日本だけではなくアジアンスタディ、グローバルスタディというものがどんどん標準化されていく事を想定し、2011年にオンコロジーの開発部を立ち上げ、同時にアジアの拠点の整備を社内で進めていきました。そして、国内だけではなく海外でも通用するオンコロジーのスペシャリストを育成する必要があると考え、当初は日本の社員だけを考えていた育成対象を、2012年以降、台湾と韓国にもその対象を広げました。当時、日刊薬業のインタビューを受けた時、今後のオンコロジー戦略について聞かれ、「3年以内に50名のオンコロジーのスペシャリスト認定者を育成する」と答えたことを覚えています。結果として3年後、計画通りに50名以上のオンコロジースペシャリスト認定者を育成することができましたので良かったと思っています。このように、中長期的に様々なことを計画し実行していこうという雰囲気が当時からありました。
F:西條先生、オンコロジー開発部のCRAやPLは先生に監修して頂いた資料で研修を受けスペシャリスト認定およびエキスパート認定を取得しておりますが、このような社内認定制度を設けることについてコメントをお願い致します。
西條先生: その点はCRA やPLの質を評価しその向上を目指すうえで非常に重要だと思います。口頭試問を行ってみると皆さん非常に強い動機付けや意気込みを持っていると感じました。インテリムのオンコロジー研修の資材を監修するにあたって、最初にどれだけの分野をカバーしなければならないか考えました。そのために日本臨床腫瘍学会編集の新臨床腫瘍学を参考にしました。また、製薬メーカーの臨床開発部門でどういう教育を行っているのかということも調べました。
私の目から見てどういうところをカバーする必要があるのか、欠落している点あるいは偏っている点などを是正し、臨床腫瘍学全般について理解が深まり適切な薬剤開発に結び付くような資料作成を目的とし監修にあたりました。
社内認定制度というのは、会社が自発的に作るものでありますが、それを第三者が認定するというような形になるのが理想的だと私は思います。
我々医師の場合は学会が認定していますが、今後は認定機構が認定する形になると思います。また、企業の社内認定制度についても、今後は日本製薬医学会などがその会社の認定制度自体を承認するような形になるのではないかと思います。
F:浮田社長、クライアントからの評判はいかがですか?
浮田社長: 最初、この認定制度についてクライアントにお話しした時に比較されたのがCRO協会の認定モニター制度でした。しかし、インテリムとしてはそれとは別にオンコロジー認定CRAというモニター対象の制度でスタートすることにしました。ただ、どんどんオンコロジー案件のお話をいただき、更にパッケージで受託するケースが非常に増えて来ましたので、QC、データサイエンス、統計解析やデータマネジメント、薬事部門などの各部門でもオンコロジストが依頼者の要求に応えられるだけのクオリティを持っておく必要があると考えました。当初、クライアントに西條先生に顧問をお願いしていると話した時点で、「名前だけの顧問じゃないの」などと結構言われたのですが、認知度がどんどん上がっていくと同時に、クライアントのインテリムに対する評価も高くなっていきましたね。
実際、クライアントから、「こういう治験をやろうと考えているが、やったことがないので何から手をつけたらいいのかわからない」とか、「自社のモニターやMRにオンコロジーの研修を実施して欲しい」という様な話からスタートし、実施した研修内容を評価して頂いた事で、その後の臨床試験もお願いしたい、そして、承認を受けた後の販売戦略について相談を受けることが多くなってきました。それであれば、オンコロジー領域に特化したMSLやMRの派遣事業を展開しようという事になりましたが、元々、我々はオンコロジーの部門を立ち上げた時から将来的には育薬領域もカバーしようと構想はしていましたので流れとしては自然であったと思います。現在ではインテリムの認知度が口コミで広がり、オンコロジーといえばインテリムというところまで上がってきましたので、多くのクライアントから連絡をいただけるようになってきたと思います。
F:西條先生、今後オンコロジーの領域でMSLのような育薬に繋げる事業の重要性が増してくると思われましたか?
西條先生: 自社製品の医療価値を至適化(育薬)するMA部門は各社で充実しつつある現状です。製薬メーカーには開発部門、MA部門、マーケティング部門があります。一方CROについては開発品が自社の製品ではないのでマーケティング部門は必要がありません。但し、CROは臨床試験を行ないますのでそのためにはその人材を養成しないといけない。そして新薬承認後の育薬についてはMAの主な仕事になると思います。但し、製薬メーカーでもMA部門は20人ぐらいしかいない会社から、60人いるところ、さらに200人もいるところなど様々ですから、浮田社長が言われたようにMSL、MRを養成する部門というのは必須になってくると思います。MA,MSLがどのような業務を行うかについては各メーカーごとに異なっている状況です。今後欧米のようなMD/PhDで構成されるMA, MSL体制が確立してゆくかどうか、この事業はインテリムとしてもまだ始まったところだと思いますので今後の大きな課題だと思います。
~中編につづく~
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