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多発性骨髄腫とダラツムマブ(ダラザレックス)
多発性骨髄腫とは血液細胞のがんです。血液細胞には赤血球、白血球、血小板、そしてリンパ球などがありますが、多発性骨髄腫はリンパ球の一種であるB細胞から分かれて抗体を作るために発達した形質細胞のがんです。
正常な形質細胞は細菌やウィルスが体内に入ると、抗体を作ることで感染症や他の病気に罹患することを防ぎます。
しかし、形質細胞はがん化した骨髄腫細胞になると体内で異常に増殖し、多発性骨髄腫をはじめとした形質腫瘍細胞に関わる病気を発症させます。
骨髄腫細胞が増殖することで引き起こる影響は造血機能の異常、異常免疫グロブリンの増殖、骨の組織の破壊の3つです。
ですので、多発性骨髄腫の症状としては造血機能が異常を来すことで引き起こる貧血、異常免疫グロブリンが増えることによる免疫機能の低下、骨破壊による骨折、高カルシウム血症などが現れます。
これら症状が骨髄腫細胞の増殖が原因であることは判っていますが、なぜ骨髄腫細胞が増殖するか?についてはっきりした原因は判っておりません。
遺伝子異常、染色体異常など様々な原因は考えられますが原因が特定できないので、多発性骨髄腫の現在の治療はプロテアソーム阻害薬のボルテゾミブ、免役調整薬であるレナリドミドなど臨床での効果が明らかな複数の作用機序の薬剤を併用する治療方法が標準です。
これら治療方法を試みた結果、近年の多発性骨髄腫の治療成績は飛躍的に向上しましたが、
ダラツムマブ
の登場によりさらなる向上が期待されています。なぜなら、ダラツムマブは既存の治療薬とは異なる画期的な作用機序の薬であり、かつその効果を証明した臨床試験の結果が他の新薬の有効性より一歩抜きん出ているからです。
ダラツムマブ(ダラザレックス)の薬剤概要(海外)
製品名
一般名
ダラツムマブ(daratumumab)
用法用量
16mg/kgを1週に1回の頻度で 8 週間投与し、その後 は2週に1回の頻度で 16 週間投与し、その後は4週に1回の頻度で投与する
効能効果
再発・難治性の多発性骨髄腫患者※プロテアソーム阻害薬、免疫調節薬を含む 3 種類以上の治療歴、もしくはプロテアソーム阻害薬、免疫調節薬の両方に難治性の多発性骨髄腫患者
主な副作用
疲労、貧血、悪心、血小板減少症、好中球減少症、背部痛、咳嗽、輸注反応
製造承認日
・2015年11月16日(アメリカ)
ダラツムマブ(ダラザレックス)の作用機序
ダラツムマブはCD38を標的とするヒトIgGκモノクローナル抗体で、CD38に結合することによりADCC活性(抗体依存性細胞傷害活性)、CDC活性(補体依存性細胞傷害活性)、ADCP活性(抗体依存性細胞貪食活性)などの免疫系活性を介して抗腫瘍効果を示す
ダラツムマブ(ダラザレックス)の最新文献
・2016年8月25日
Daratumumab, Bortezomib, and Dexamethasone for Multiple Myeloma
再発・難治性多発性骨髄腫の患者に対してボルテゾミブ(ベルケイド)+デキサメタゾン(デカドロン)にダラツムマブ(ダラザレックス)群と、ボルテゾミブ(ベルケイド)+デキサメタゾン(デカドロン)群の投与を比較した結果、ダラツムマブ群を上乗せした群が無増悪生存期間が有意に延長することを証明した試験
ダラツムマブ(ダラザレックス)の口コミ
医師のコメント
その他医療関係者のコメント
ダラツムマブ(ダラザレックス)の治験情報
2016年12月11日現在、国内で進行中のフェーズ3治験の情報を紹介します。
治験の概要
未治療多発性骨髄腫患者に対して、ボルテゾミブ+メルファラン+プレドニゾロン+ダラツムマブを投与する群とボルテゾミブ+メルファラン+プレドニゾロンを投与する群で、有効性(PFS)を検証する治験
治験の期限
2017年11月
治験のポイント
1)3剤療法に比較して4剤療法の有効性に有意差が認められるかどうか
参考資料
1)NEJM
2)jnj.com