唾液腺がんの治療


  • [公開日]2023.01.01
  • [最終更新日]2023.06.06

唾液腺がんの治療方針

一般的に、唾液腺がんは放射線療法や薬物療法が効きにくいので、治療の基本は手術です。

ただし、一部の組織型や進行度に応じて、手術後に放射線治療を実施することもあります。

唾液腺がんの手術

唾液腺がんの治療においては、手術が第一選択となります。

がんのある部分だけでなく、神経、筋肉、骨、皮膚など周囲の組織に浸潤が見られる場合は、それらも併せて切除されます。

頸部リンパ節に転移がある場合、または潜在的な転移の可能性が考えられる場合はリンパ節の切除(頸部郭清術)も行います。

顔面神経麻痺や、手術後の変形など、機能面と整容性(外見)に配慮した治療が必要です。

耳下腺がんの場合

-耳下腺浅葉切除術
がんのある部分と一緒に耳下腺浅葉を切除する手術です。がんの大きさがあまり大きくなく浅葉に限局し、進行もゆっくりなタイプと判断された場合に行います。

-耳下腺全摘術
耳下腺をすべて摘出する手術です。がんがある程度の大きさで、深葉や耳下腺全域に及んでいるようなもので選択されます。

ただし、耳下腺を超えてがんが広がっている場合には、この術式は行いません。

-拡大耳下腺全摘術
耳下腺外の周囲組織を一緒に切除する方法で、がんが耳下腺外に進展した場合に選択されます。

腫瘍近くの皮膚、周囲の筋肉、外耳道(耳の穴)、耳介(いわゆる耳の部分)、場合によっては下あごの骨の一部や側頭骨の一部も一緒に切除されることがあります。

がんの切除が終わったら、お腹の筋肉や皮膚などを用いて顔面再建を行います。

顎下腺がんの場合

-顎下腺全摘術
顎下腺を全部摘出する方法で、がんが顎下腺に限局している場合に選択されます。

-拡大顎下腺全滴術
がんが顎下腺全体に広がり、周囲と癒着している場合や、腺外の組織に浸潤している場合は、顎下腺を周囲の組織と共に切除します。

皮膚や筋肉、神経、更にはあごの骨や口腔粘膜も切除されることもあります。その場合、がんの切除後に、腕の皮膚や足の皮膚などを用いて再建が必要です。

手術以外の治療法

唾液腺がんの治療の基本は手術ですが、一部の患者さんには、手術後に放射線治療を行うことがあります。

薬物療法に関しては、プラチナ製剤タキサン抗がん剤の組み合わせ(カルボプラチンパクリタキセル、カルボプラチン+ドセタキセルシスプラチン+ドセタキセルなど)で、比較的良好な成績が得られているため、進行・再発例においては、使用が検討されることもあります。

また、2021年11月には、細胞の増殖に関与するHER2タンパクが多いHER2陽性唾液腺がん(根治切除不能な進行・再発症例)に対して、トラスツズマブ(製品名:ハーセプチン)が保険適用となりました。これは、殺細胞性抗がん剤のドセタキセルと併用します。

唾液腺がんは症例数が少なく、更に組織型によっても治療効果が様々であるため、薬物療法の十分な根拠が得られていません。しかしながら、がんの明らかな進行が見られる場合などに、上記のような薬剤の使用を検討することが推奨されています。

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