[公開日] 2018.02.08[最終更新日] 2018.02.08
腎臓がん(腎細胞がん)の化学療法について
通常、がんに対する治療を考えた際に、手術や放射線療法の他に、化学療法という選択肢が挙がります。特に、がんが転移していて手術や放射線療法といった局所療法で対処困難な場合においては、化学療法以外に選択の余地が無い場合も多々あります。他にも、手術や放射線と組み合わせて、その前後に化学療法を行うこともあります。
しかし、腎臓がん(腎細胞がん)は他のがんと異なり、いわゆる化学療法(抗がん剤)が効かないことがわかっています。そもそも腎臓は体の中で不要な物質を除去するための臓器です。不要物の中には、身体に対して有害な物質も含まれています。
腎臓がん(腎細胞がん)は、そのような身体の濾過装置として機能する腎臓にできるがんであるため、化学療法として抗がん剤が投与されても、排泄したり代謝したりすることによってその効果が十分に得られないのです。
インターフェロンα・インターロイキン2による治療
かつては、ビンブラスチンや、フロキシウリジンといったいろいろな抗がん剤が試されましたが、単剤で使用が推奨しうるような臨床効果を示す抗がん剤は見つかりませんでした。
そのため、近年に分子標的薬が開発されるまでは、インターフェロンα(IFN-α)やインターロイキン2といった、サイトカイン製剤が主に用いられていました。
※サイトカインとは、細胞から分泌される情報伝達物質であり、免疫、炎症、増殖、分化、細胞死など、身体のあらゆる反応を調整しています。
インターフェロンαは、人間の免疫細胞である単核球を刺激するとともに、試験管の中のデータでも腎臓がん(腎細胞がん)の細胞に対して直接的な増殖抑制作用を示すことがわかっています。特に原発巣は摘除してあり、肺転移のみ有するようなケースに効果が見られやすいとされています。また、インターロイキン2は、リンパ球を活性化することで抗腫瘍効果を発揮するものです。
しかし、これらの治療の奏効率(30%以上腫瘍が小さくなる率)はせいぜい10-20%程度であり、8割以上の患者さんには効果が無いものでした。また、効く人でもせいぜい2年くらいしか効果が続かないことが多く、より効果の高い薬が期待されていました。
分子標的薬の登場
その後、近年になって分子標的薬が登場しました。分子標的薬というのは、抗がん剤のように体のあらゆる細胞を攻撃するものではなく、特定の物質(分子)に対して特異的に作用を発揮するという特徴を持った薬です。これにより、がんの増殖に必要な物質を抑え込むことで、がんの増殖を抑えようとするものです。
日本では、2008年にソラフェニブとスニチニブが承認され、その後、テムスロリムス、エベロリムス、アキシチニブ、パゾパニブと、毎年のように次々に新しい分子標的薬が承認されました。
これらの分子標的薬は、その作用機序によって大きく分けるとチロシンキナーゼ阻害薬と、mTOR(エムトール)阻害薬の2つに分けられます。
免疫チェックポイント阻害薬
さらに新しい薬として、免疫チェックポイント阻害薬が開発・発売されました。ニボルマブという薬で、簡単に言えば、がんに対する体の免疫が正しく働くようにする薬です。がん細胞は、細胞表面にPD-L1という抗原を発現しており、免疫細胞のPD-1と結合することで攻撃されないようにしていることが分かっているため、そのシグナルを抑制することで正しく免疫が機能するようにする薬です。
日本では悪性黒色腫(皮膚のほくろのようながん)で2014年に承認され、2015年に非小細胞肺がん、2016年に腎臓がん(腎細胞がん)に対して適応が通りました。
このように分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬の登場を受けて、現在ではインターフェロンαやインターロイキン2はガイドラインの推奨度でも推奨されなくなっています。
日本泌尿器科学会が出している腎癌診療ガイドライン2017年版によれば、下記のようにリスクに応じた治療薬の選択が推奨されています。
<一次治療>
淡明細胞型腎細胞がん/低・中リスク:スニチニブ、パゾパニブ(、ソラフェニブ、インターフェロンα、低用量インターロイキン2)
淡明細胞型腎細胞がん/高リスク:スニチニブ、テムスロリムス
非淡明細胞型腎細胞がん:スニチニブ、テムスロリムス
<二次治療>
一次治療でチロシンキナーゼ阻害薬(スニチニブ、パゾパニブ、ソラフェニブなど)を使用した場合:アキシチニブ、ニボルマブ(エベロリムス、ソラフェニブ)
一次治療でサイトカイン療法を行っている場合:アキシチニブ、ソラフェニブ(、スニチニブ、パゾパニブ)
一次治療でmTOR阻害薬(テムスロリムスなど)を使用している場合:未定
<三次治療>
一次治療、二次治療でチロシンキナーゼ阻害薬を使っている場合:ニボルマブ(、エベロリムス)
一次治療、二次治療でチロシンキナーゼ阻害薬とmTOR阻害薬を使用している場合:ソラフェニブ、アキシチニブ(、スニチニブ、パゾパニブ)
腎臓がん(腎細胞がん)に対する薬物療法の副作用
腎臓がん(腎細胞がん)に対する薬物療法としては、インターフェロンα・インターロイキン2といった古典的な免疫療法、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬の3種類がありますが、それぞれ副作用があります。
インターフェロンα・インターロイキン2といった古典的な免疫療法に特徴的な副作用としては、インフルエンザにかかったときのような倦怠感と発熱が高い頻度で起こるのが特徴的です。また、うつなどの精神症状を起こすこともあります。
分子標的薬では、まずチロシンキナーゼ阻害薬の副作用としては、疲労、吐き気、食欲低下、粘膜障害、胃痛、血球減少などといった一般的な症状の他、高血圧、甲状腺機能異常、激しい下痢などが薬の種類によって起こることがあります。全く何も症状が出ない人もいますが、起こりうる副作用の種類が多いため、その種類と程度に応じて、薬の量や投与スケジュールを調整しつつ治療を行うことが一般的です。
また、手足症候群という特徴的な副作用もあります。これは、手足に特徴的な分布を示す皮疹が出るもので、症状が強くなると歩くことなどの日常生活動作に影響を及ぼす恐れがあります。保湿をするなどして、できる限り予防をはかることが大切です。
mTOR阻害薬の副作用としては、間質性肺炎と、肝炎ウイルス等の再活性化に注意が必要です。間質性肺炎は治療に難渋することがしばしばあり、時に致死的にもなりますので、治療経過の中で定期的に肺の画像検査をする必要があります。
免疫チェックポイント阻害薬の副作用としては、免疫系の異常に関連したものなど、さまざまなものがあります。例えば、間質性肺炎、重症筋無力症、1型糖尿病、肝炎、甲状腺機能異常、神経障害、腎障害、副腎不全、脳炎、腸炎、皮膚障害、血栓症など、身体のいたるところに副作用が出る場合があります。
効く人にはとてもよく効く薬ですが、反面、いつどのような副作用が出てくるかわからないところが怖さでもあります。しばらく飲んでいて問題無くとも、数か月してから副作用が出てくることもあるのです。特に、ご高齢であったり、もともと自己免疫疾患を持っていたりする方などは副作用が出やすい可能性がありますので、注意が必要です。
このように、腎臓がん(腎細胞がん)には、いわゆる化学療法(抗がん剤)はあまり効きませんが、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬などの新しい薬が次々に出てきています。専門家の間でも誰に、どの薬を、どのように使用したらよいのかについて、定まった見解がありません。最新の情報は日々変化していきますので、主治医の先生とよく相談しながら治療を決めていくことが大切です。
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