腎臓がん(腎細胞がん)の種類と分類


  • [公開日]2017.12.07
  • [最終更新日]2020.03.18

腎臓がん(腎細胞がん)の分類

まずは病期分類について説明します。
腎臓がん(腎細胞がん)の進行度を分類する方法はいくつかありますが、まずは最も一般的に用いられる分類法について、以下に表を示します。

腎臓がん(腎細胞がん)では以上の表の通り病期分類がなされています。Ⅲ期の他組織とは腎臓の静脈系である腎静脈や大静脈、腎周囲組織などが該当します。Ⅳ期の遠隔転移とは腎臓から離れた臓器に癌細胞が発生し、そこでまた増殖しがんになることで、肺や骨などが腎臓がん(腎細胞がん)の遠隔転移にはあります。

腎臓がん(腎細胞がん)の発見契機として、他臓器への転移巣が見つかり、精査してみたら腎臓がん(腎細胞がん)だった、ということがありますが、この時の病期はⅣ期ということになります。

次に、上の表の分類を作るにあたってもとにされたTMN分類について説明します。こちらは4段階よりもさらに細分化されています。

この様に分類されています。腫瘍がどれだけ大きく、他組織へと浸潤しているのかどうか、リンパ節へ転移しているのかいないのか、遠隔転移があるのかないのかを総合的に判断したものがTNM分類です。例えば、「最大腫瘍径が5cmで、所属リンパ節への転移が1個認められ、遠隔転移がない患者さん」の場合、TNM分類ではT1aN1M0をいう表記をします。

次に、腎臓がん(腎細胞がん)の病理組織分類について説明します。

病理組織分類はその名の通り病理診断をして分かる分類で、組織型とも言います。腎臓がん(腎細胞がん)では通常、腫瘍を摘出したのちに病理診断を行います。以下に示します。

1)淡明細胞型腎細胞がん(淡明細胞がん)
淡明細胞がんは腎臓がん(腎細胞がん)の組織型の中で最も頻度が高く、70~80%が淡明細胞がんといわれています。60%にVHL遺伝子異常を伴うのが特徴で、発生母地は近位尿細管の上皮から発生するがんです。

2)乳頭状腎がん
乳頭状腎細胞がんは腎臓がん(腎細胞がん)の10~15%を占める組織型です。病理像を見てみると、乳頭状の名の通りがん細胞が乳頭状の構造になっています。サブタイプに1と2がありますが、タイプ1の方が一般に予後が良好です。

3)嫌色素性腎がん
腎がんの5%を占めている組織型です。一般的に予後が良好です。

4)多房嚢胞性腎がん
小さい嚢胞が多数集まることで腫瘤を形成している組織型です。一般的に予後は良好です。

5)紡錘細胞がん
他のがんに合併するケースが多い組織型で、腎がんの組織型の中で最も予後不良とされます。頻度は非常に少ないです。

6)集合管がん
頻度は1%にも満たない組織型ですが、がん細胞の異型度が高く(異型度は癌細胞が正常な細胞の性質からどれくらい逸脱しているかを示します。異型度が高いほど予後不良とされます)、紡錘細胞がんと同様に予後が極めて不良です。

腎臓がん(腎細胞がん)の検査

1)腹部超音波検査(エコー検査)
腎臓がん(腎細胞がん)を疑った場合の検査は、腹部の超音波検査(エコー検査)を行うのが最も一般的です。腎臓がん(腎細胞がん)があれば、内部構造が不均一な充実性腫瘤性病変として描出されることが多いです。腎臓がん(腎細胞がん)の多くは血流が豊富であるため、血流を見ることができるカラードプラという機能をエコー検査に併用すると、腎臓がん(腎細胞がん)の組織型の1つである淡明細胞がんの診断の補助になります。

また、エコー検査は患者さんへの負担が小さく、時間もさほどかかりません。腎臓がん(腎細胞がん)を疑った場合に限らず、早期発見が可能であるという点からスクリーニング検査としても広く用いられている検査であり、人間ドックでたまたま腎がんが見つかるケースも多々あります。

2)腹部CT、MRI検査
腹部造影CT検査は腎臓がん(腎細胞がん)の画像検査として最も重要な検査です。確定診断に造影CT検査が一般的に用いられます。ただし、アレルギーや腎機能障害などによって造影剤が使えない場合、CTでは確定診断を行うことができなかった場合などはMRIで診断を行うこともあります。(MRIはX線ではなく磁気を使って体の内部を描出する検査です。)

3)胸腹部CT検査/MRI検査/骨シンチグラフィ/単純X線検査
胸腹部CT検査で肺やリンパ節への転移がないか、骨シンチグラフィでは骨への転移がないかを主に確認します。これらの臓器を調べるのは腎臓がん(腎細胞がん)が血行性に転移しやすいからです。他臓器浸潤や転移に対してこれらの検査を行うことで治療の道筋を立てます。

腎臓がん(腎細胞がん)の検査~診断の流れ

①スクリーニング
腎臓がん(腎細胞がん)は健診や他疾患の検査目的で画像検査をした際に偶然発見されることが多いです。そのほか、問診で自覚症状があるのか、あればそれはどんな症状なのか、家系内にVHL病の人はいるのか、透析を行っているのかなどを聞きます。

↓腎臓がん(腎細胞がん)を思わせる事項に該当した場合

②確定診断
造影CT検査によって確定診断を行います。

↓腎臓がん(腎細胞がん)と確定した場合

③他臓器浸潤や転移に対する検査
胸腹部CTや骨シンチグラフィなどを行い、病期判定を行い、治療方針を決定します。

腎臓がん(腎細胞がん)のリスク分類

進行した腎臓がん(腎細胞がん)が見つかった際に、TNM分類やステージといった病期分類だけではなく、リスク分類も行います。

特によく用いられるのが、アメリカののMemorial Sloan-Kettering Cancer CenterのMotzerらによって提唱された5つの予後因子にもとづく分類(MSKCC分類)です。

KPS80未満
これは、Karnofskyの一般全身状態スコア(Karnofsky Performance Status)という、全身状態(体の元気な具合)をあらわす指標を元に評価します。ちなみに80というのは、「症状があるものの、頑張れば日常生活を送ることができる」状態です。

②血清LDH値が正常上限値の1.5倍以上
採血でLDHという項目が、上限値の1.5倍以上ある場合に、予後が悪い(見通しが悪い)ことが分かっています。

③Hb値が正常下限値未満
採血でHb(ヘモグロビン)値が正常下限より低い場合に、予後が悪い(見通しが悪い)ことが分かっています。

④補正血清カルシウム値が10mg/dL以上
採血でCa(カルシウム)値が10mg/dL以上ある場合に、予後が悪い(見通しが悪い)ことが分かっています。ちなみに、カルシウムはアルブミンというタンパク質と結合するため、採血でCaの値を見る際にはアルブミンも測定して、下記のように補正をしなければなりません。

補正血清カルシウム値(mg/dL)=実測血清カルシウム値(mg/dL)+4-血清アルブミン値(g/dL)

⑤腎がんの診断から治療開始まで1年未満
これは、腎がんと診断されてから、治療を開始しなければならないタイミングが1年未満にやってくる、すなわちそれだけ再発・転移・進行が速いがんだということをあらわしています。

これら5つの項目のうち、1-2項目当てはまると中間リスク、3個以上当てはまると予後不良と判定されます。このグループに応じて、選択される薬が変わることがあります。

参考:
http://www.shikoku-cc.go.jp/hospital/medical/class/urology/cancer/jin/diagnosis/
http://ganjoho.jp/data/public/qa_links/brochure/odjrh3000000ul0v-att/152.pdf
http://www.onh.go.jp/seisaku/cancer/kakusyu/jinsai.html
病気がみえる Vol.8 腎・泌尿器 第2版

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