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患者団体に聞く! 認定NPO法人希望の会 轟浩美さん Part1

[公開日] 2023.09.01[最終更新日] 2023.09.01

目次

はじめに

今回は、「認定NPO法人希望の会」の代表、轟浩美さんにお話を伺いました。
オンコロでは、2018年にも轟さんへの取材記事、
【スキルス胃がん患者家族】 変化を乗り越え、常にチャレンジ〜命をつなぐために〜」前編(コチラ
【スキルス胃がん患者家族】 変化を乗り越え、常にチャレンジ〜命をつなぐために〜」後編(コチラ
を掲載しています。
あれからさらに激動のコロナ禍を経た5年間の軌跡とこれからについて、続編として、ぜひ、前回記事から改めてお読みください。

患者会の持つ意味

川上:希望の会はいま、どのような活動をされていますか?

轟:活動の柱は大きく分けると2つあります。ひとつは、患者さんやご家族・遺族どうしの交流・分かち合いの場や機会を提供したり、相談支援をしていくことです。もうひとつは、「希望の会」という名称にも込めた思いでもあるのですが、難治がんであるスキルス胃がんが将来、治る病気になってほしい、その希望や命をつなぐための活動で、より効果のある治療開発のための治験や臨床試験への理解促進、エビデンスのある治療の普及啓発のための活動です。希望の会はスキルス胃がんに特化した患者会として立ち上がりましたが、より多くの方と連携し情報を届けるために、2017年に認定NPO法人になってから対象を胃がん全般に広げて活動しています。

川上:前者は「ピアサポート」、後者は「アドボカシー活動」と言い換えられそうですね。今回のインタビューの前半では、ピアサポートをめぐる活動を、後半でアドボカシー活動について取り上げさせていただきたいと思います。まず、ピアサポートについては、どのような活動をしてこられたのでしょうか? とくに、2020年からコロナで直接人と会うことが難しい状況になりましたが、サポート活動にも影響があったのではないでしょうか。

コロナ禍が変えた患者会活動

轟:はい。大きな影響がありました。コロナ以前は、私が全国各地に出向き、患者さんやご家族・遺族の方々と直接お会いしてサポートするこができましたが、それが一切できなくなり、コミュニケーションが取りづらい状況が続きました。またこの時期に、一緒に会を運営してくれていた、会員患者さんが数名、相次いで亡くなってしまったこともあり、私自身も孤独と不安を強く感じ辛い時期を過ごしました。旅立った患者さんたちのブログが更新されなくなり、会員のなかでもお互いの状況がわからず、不安が広がっていきました。元気だった仲間が旅立つことは、難治がんの患者会では避けられないことではありますが、コロナでより一層不安が高まったと思います。でも、そこに何もなす術はありませんでした。

川上:コロナ禍では、Zoomを使ってオンラインでの交流会を開催する患者会も多くありましたよね。

轟:私たちもZoomでのオンライン交流会を開催したりもしましたが、Zoomが使えない方もいますし、オンラインで集まっても、患者でも病期、治療法、年代が違う方が混在したり、家族、遺族、と立場が違ったりすると、直接対面での会の運営に比べて、どうしてもコミュニケーションがぎこちなくなってしまうことは避けられませんでした。
そんな中、病気のことを離れて、ゆったりした時間を持てないかと考え、希望の会会員の絵本セラピストの方にご相談し、絵本の読み聞かせを軸にオンラインで集まってもらったところ、感情を揺さぶる共通の体験を通して、参加者の心が開き、率直な対話ができる安心した時間になるという、新しい発見もありました。この会は「おしゃべり絵本会 あったか」という名前で毎月第3木曜日に開催しています。

ここまでのことを他の人にはさせられない

川上:会の運営の中核を担っていた患者さんが相次いで亡くなってしまったことは、轟さんにとってもお辛いことでしたね。患者会の運営はいま、どのようにされているのですか?

轟:亡くなった患者さんのほかにも、コロナ禍で仕事を奪われ、活動する余力がなくなってしまった方もいて、大変心細い経験もしましたが、希望の会を継続してほしいという声が多く届いており、頑張っている状況です。正直なところ、活動費については持ち出しも多いですし、「希望の会の轟」として日常生活の多くの時間を割いています。
後半でお話しする海外の患者会との交流のなかでも、「あなたがいなくなったら会はどうなるの?」と、会の運営が私に依存するような在り方は好ましくないことを指摘されましたが、かといって、私がしてきたことを他の人に求めることは難しいと思っています。誰かの踏ん張りに頼らないでも会の活動が継続できるような在り方に変えていく必要があると思っています。

川上:具体的には、どのように変えていくのでしょうか。

轟:現在の希望の会の役割の大きな柱の一つであるピアサポートについては、できるだけ他の人に担ってもらえる体制をつくっていくつもりです。とはいえ、がんを経験した患者さんやご家族・遺族なら誰でもピアサポートを担えるわけではありません。ピアサポートをするにあたって、知っておくべきこと、学ぶべきことはあると思いますので、それができる環境を整え、人材を育てていきたいです。
もう一つの柱である、アドボカシー活動については、後半でお話するように、海外を含めた他の団体との協力体制を整え、協働できるようにしていきたいと思っています。

アフターコロナでの活動

川上:コロナによる活動制限も解除され、3年ぶりに以前のような形での人との交流が戻ってきましたが、今後のピアサポート活動はどのように展開されていく予定ですか?

轟:9月から、各地で開催されるリレーフォーライフに参加していく予定です。以前のように患者さんやご家族・遺族と直接交流できる場にしていきたいと思います。オンラインでの交流会も状況や立場ごとに集まれる内容を企画中です。

川上:希望の会は、会員制ですか?

轟:はい。ただし、会員からは会費を取らず、会員でなくとも、どのプログラムにも参加可能です。希望の会のWebサイトには、スキルス胃がんのことがわかる冊子や、日本胃癌学会と協業した胃がんに関する動画や、イベント情報が掲載されていますので、胃がんと向き合っておられる方は、ぜひ一度アクセスしてみてください。

川上:ありがとうございました。次回は、ピアサポートのほかもう一つの活動の柱である、アドボカシー活動(希望や命をつなぐための、より効果のある治療開発のための治験や臨床試験への理解促進、エビデンスのある治療の普及啓発のための活動など)について伺います。

後編はこちら
『患者団体に聞く! 認定NPO法人希望の会 轟浩美さん -変化を乗り越え、常にチャレンジ- Part2 アドボカシー活動編』


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