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II期大腸がんにおける新規バイオマーカーの検証:リスク分類および術後療法の効果予測に -第63回日本癌治療学会学術集会-
[公開日] 2025.10.30[最終更新日] 2025.11.18
10月16~18日にパシフィコ横浜にて、第63回日本癌治療学会学術集会が開催された。「プレナリーセッション」にて、「再発ハイリスク因子の統合による新規バイオマーカー:SPHERE study」と題して茂田浩平先生(慶應義塾大学医学部・外科学)が発表した。
II期大腸がんにおいて、ハイリスク因子が術後療法実施判断のカギとなっているが、この指標では半数以上がハイリスクに該当するため、患者選択に最適とは言えない。また、ctDNAの有用性の報告が多く出てきているが、肺転移などに関しては感度が低いこと、またコストが高いことなどの課題があった。
そこで今回は、RPV(Recurrence predict Valu)という新しい指標を使って、術後療法の恩恵を受ける患者さんを特定することを目的として、大規模なグローバルレトロスペクティブ研究(SPHERE研究)を実施した。
RPVは、日本の7施設の患者さんデータの既存の臨床および病理学的所見をもとに各リスク因子から算出した統合リスクスコアである。既にRPVが予後予測に使えることが示されており、今回は術後療法の効果予測マーカーとしての有用性が検討された。
解析は、日本、米国、ヨルダンの多施設データベースのデータ(コホート1)およびデンマーク(コホート2)のデータを使って実施された。RPVによると、コホート1では750人(70.2%)の患者が低得点に、318人(29.8%)の患者が高得点に、コホート2ではそれぞれ1031人(70.4%)と433人(29.6%)に分類された。主要評価項目は無再発生存期間(RFS)であった。
術後療法の有無による予後について、高得点症例における5年間のRFS率は、コホート1(76.2%対55.6%、P<0.001)およびコホート2(65.6%49.8%、P=0.001)のいずれにおいても、術後化学療法による有意な改善が認められた。多変量分析では、いずれのコホートにおいても、高得点のサブグループでのみRPVがRFSの独立した予後因子であることが明らかになった。
また、再発を経験した症例に関して、最も多かった部位は肝転移であったものの、RPV高群の再発の約40%は肺および/または腹膜の再発であり、RPVによって肝転移以外の再発予測も可能であることが示唆された。
以上の結果は、新たなアルゴリズムであるRPVが、II期の結腸がんの再発および術後療法の効果を予測するためのコストのかからない簡便なバイオマーカーとなり得る可能性を示している。
発表者の茂田先生は、現在大腸がん領域では、GALAXY試験(https://oncolo.jp/news/240919ra01)の結果を受けて、ctDNAが次期バイオマーカーとして期待されていることに言及し、今後はRPVとctDNAを組み合わせて、バイオマーカーとしての精度を検証していきたい、と将来展望を語った。
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