国立がん研究センター東病院は9月17日、九州大学の研究グループと共に、CIRCULATE-JapanのGALAXY試験に参加した患者さんを対象に、患者さんの血液を使ったリキッドバイオプシー検査による血液循環腫瘍DNA(circulating tumor DNA:ctDNA)を解析し、がんの再発リスクや生存期間との関連を調べた結果を報告した。
今回の研究では、CIRCULATE-JapanのGALAXY試験に参加した2,240名の大腸がん患者さんを対象に、ctDNA検査の結果とがんの再発リスクや生存期間を調査。その結果、術後2~10週間で測定したctDNA陽性症例では、陰性の場合と比較して、がんが再発するリスクが約12倍高くなることがわかった。また、陽性症例と陰性症例では、2年後の再発率や生存率、更には、再発した後の生存期間にも差が見られた。これは、術後のctDNA検査が、再発リスクや予後を予想するうえで非常に有用であることを示唆しているという。
また、大腸がんで重要とされているバイオマーカー(TP53変異、高遺伝子変異量、RAS/BRAF遺伝子変異野生型、高マイクロサテライト不安定性、KRAS G12C変異、ERBB2遺伝子増幅、BRAF V600E変異など)と、ctDNA検査による予後予測との関連を調べたところ、ctDNA陽性症例において再発リスクが高くなる傾向は、バイオマーカーに関わらず共通して認められた。これは、ctDNAががんの特性に影響されずに再発リスクを予測できる強力なツールになる可能性を示している。
最後に、再発リスクの高いctDNA陽性症例における術後化学療法の効果とctDNAの変化を解析。ctDNA陽性症例であっても、術後化学療法を開始して3-6ヵ月後の時点でctDNAが陰性になった場合、その後の再発リスクは低くなり、生存期間も長いことが明らかになった。つまりctDNAは、術後化学療法の効果を早い段階で評価し、治療方針を調整するためにも有用である可能性があるとしている。
この研究結果は、ctDNAを測ることによる個々の予後予測や、早期の術後療法の効果判定などが可能となり、大腸がん治療の個別化に向けた重要な一歩となり得る。更に現在、CIRCULATE-Japanで得られた知見を大腸がん以外のがんにも広げるため、新たな大規模研究「SCRUM-Japan MONSTAR-SCREEN-3」が開始している。同研究では、対象を固形がんや血液がんにも広げ、遺伝子やRNA、タンパク質、代謝物など、最先端の網羅的解析を行う予定だ。
なお同研究成果は、2024年9月16日付で海外雑誌「Nature Medicine」誌に掲載されている。
参照元:
国立がんセンター プレスリリース
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