再発・難治性マントル細胞リンパ腫に対する新たな治療選択肢日本新薬がメディアセミナーを開催


  • [公開日]2024.09.10
  • [最終更新日]2024.09.06

9月5日、日本新薬株式会社主催のメディアセミナー「マントル細胞リンパ腫(MCL)治療における現在の治療方針とアンメットニーズ」がオンラインにて開催され、丸山大先生(がん研究会有明病院 血液腫瘍科)が講演した。

悪性リンパ腫は、がん全体の罹患数の10位以内に入る、決して稀な疾患ではないものの、マントル細胞リンパ腫のみに絞ると、日本では悪性リンパ腫のうち、2-3%と希少がんに相当する。マントル細胞リンパ腫は、骨髄浸潤や消化管浸潤の頻度が高く、多くは初診時にIV期である。 治療法の開発により長期生存は可能となっているものの治癒が難しい疾患である。

マントル細胞リンパ腫の治療法としては、全身療法である薬物療法および一部の患者さんでは自家移植の対象となるが、多くの場合、再発・再燃による二次治療が必要になる。現在再発・難治性のマントル細胞リンパ腫には、共有結合型のBTK阻害剤イムブルビカ(一般名:イブルチニブ)を二次治療以降のできるだけ早い段階で使用することでより高い効果が期待できるとされている。

しかしながら、イムブルビカ中に増悪した場合の次の治療法は混とんとしており、予後も非常に悪い(治療継続期間の中央値1.54か月、生存期間の中央値 5.64か月)と丸山先生は指摘。こうしたなかで開発されたのが「他のBTK阻害剤に抵抗性又は不耐容の再発又は難治性のマントル細胞リンパ腫」の適応で6月に承認されたジャイパーカ(一般名:ピルトブルチニブ)である。同剤は、BTKタンパク質の複数のアミノ酸と非共有結合するため、従来の共有結合型BTK阻害剤の結合部位(481番目のシステイン残基)が変異した場合でも効果を発揮できるという特徴を持つとされる。また、ジャイパーカはBTK選択性が高く、標的であるBTKタンパク質以外の分子に結合することで生じる全身の有害事象のリスクは低い可能性もあり、従来のBTK阻害剤により有害事象が出た症例であっても、ジャイパーカは使用可能である、との見方を丸山先生は示した。

講演の後半は、ジャイパーカの国内承認の根拠となった国際共同第1/2相試験(BRUIN-18001)の結果が紹介された。有効性は、主要評価項目であるBTK阻害剤抵抗性又は不耐容の再発又は難治性マントル細胞リンパ腫における奏効率は56.9%(95%信頼区間:44.0-69.2)であった(全65例中、完全奏効が13例、部分奏効が24例)。丸山先生は、3-8レジメンもの重度の治療歴を有する症例において、半数以上に効果が認められていること、また予後不良とされている芽球様細胞性マントル細胞リンパ腫のサブ解析において15例中7例で奏効が認められたことは有望視できる、と述べた。また、同試験には日本人が8例含まれており、完全奏効が2例、部分奏効が2例、安定が3例、進行が1例であった。

副次評価項目奏効期間の中央値は未到達(95%信頼区間:8.31-未到達)、奏効の18カ月以上の持続割合は57.6%であり、効果の持続が比較的長いこともこの薬剤と特徴だ、と丸山先生は説明した。また無増悪生存期間の中央値は6.90カ月(95%信頼区間:3.98-未到達)、18カ月時点の無増悪生存率は36.9%であった。

安全性に関しては、主要な有害事象として、疲労49例(29.9%)、下痢35例(21.3%)及び呼吸困難27例(16.5%)が挙げられる。また、ジャイパーカの重大な副作用として、感染症、出血、骨髄抑制が報告されているため、注意が必要である。

丸山先生によると、毎年9月15日は「世界リンパ腫デー」とされており、世界的なリンパ腫啓発活動が行われるとのこと。この世界リンパ腫デーに近い日に、同セミナーを実施できたことは大変意味があることだ、と丸山先生は語った。

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