➀院内がん登録2022年 登録例集計
国立がん研究センターは、2018-2022年の5年間継続してデータ提供を行った749施設、5,112,915件のデータをもとに、院内登録数の推移を解析。2018-2019年の2か年平均と比較して、2020年の登録数は96%まで減ったものの、2021年には回復し、2022年も横ばいであった。また、月別登録数の推移を見ると、新型コロナ感染者数の影響だけでは説明できない減少も見られ、新型コロナに対する治療や社会の考え方など様々な要因が関与している、と石井氏は説明した。 (画像はリリースより) がん種別の登録数を見ると、大腸がんと肺がんでは2021-2022年は横ばい、乳がん・すい臓がん・前立腺がんは増加傾向、そして子宮頸がんと胃がんでは2021年にいったん増加 したものの2022年で再度減少傾向が見られた。 発見経緯別で見ると、非検診発見例はほぼ例年と同じであるのに対し、検診発見例は減少傾向が見られ、特に肺がんと子宮頸がんで減少率が高かった。 病期別では、非小細胞肺がんのI期とすい臓がんのI期は2018-2019年の2か年平均と比較して増加傾向であったのに対し、早期の子宮頸がんの登録数や割合は2022年時点でも低い傾向が続いていた。 最後に治療別で見ると、外科的治療+鏡視下治療、内視鏡治療を受けた症例の登録数は、2020年にはいったん2019年より4-7%減少したが、2022年にかけて増加、一方の放射線治療、内分泌療法の実施件数は2021-2022年にかけて一貫して微増傾向が見られた。 子宮頸がんにおいては、外科的治療+鏡視下治療の減少傾向が続いていたが、これは早期子宮頸がんの自体の減少や手術実施率の低下を反映している可能性がある、と石井氏は指摘。また、非小細胞肺がんにおいては化学療法の減少が見られたが、これは化学療法実施率の低下、及び化学療法を必要としないI期の症例の増加が影響している可能性がある、と石井氏は説明した。 石井氏によると、コロナ禍で診断が減少したことが、今後の診断数の増加や、より進⾏した状態で発⾒される傾向として現れるかどうかに関しては、現時点では評価困難であり、2023年以降も新規がん登録数や病期内訳のフォローアップが必要だという。また、がんの検診や有症状時の受診は、通常通り実施されるべきであることを強調した。➁院内がん登録2011年 10年生存率集計
国立がん研究センターは、341 施設363,521 例(前回316 施設341,335 例)の院内がん登録データを用いて10 年生存率を集計。全がんのネット・サバイバルは53.5%(前回53.3%)という結果であった。 詳細は、国立がん研究センター がん情報サービス「がん統計」報告書ページにて公開されている。 記者会見の中では、今回初集計であった小児・AYA世代がんの結果について報告があった。 まず小児がんでは、5年生存率と10年生存率の数値に大きな差は見られないことから、5年以降の生存率低下はあまり見られず、長期予後が良好であることが示された。 一方AYA世代がんに関しては、5年から10年にかけての生存率の低下はがん種によるばらつきが見られた。AYA世代がんで最も多い乳がんと子宮頸がんにフォーカスすると、乳がんの生存率はAYA世代と40歳以上で大きな差は見られない一方、子宮頸がんではAYA世代でより早期(I期)の割合が多い傾向が見られ、それが良好な生存率にもつながっているようだ。 これらの結果を受けて、生存率の高い小児がんにおいては、晩期の合併症などの長期フォローアップが重要になる、と石井氏。またAYA世代では、40歳以上と比較して病期の内訳や併存症などの状況が異なる場合があり、それが生存率の差に影響し得る、と説明した。 これまで小児・AYA世代がんの予後に関するデータが十分でなかったことから、同データ解析が小児・AYA世代がんの対策を考える重要な資料のひとつになる、と石井氏は今後の期待を語り、説明を締めくくった。「院内がん登録における小児AYA集計報告書を発表:がん種の分布や性差が明らかに」
参照元: 『院内がん登録2022 年登録例集計 公表:2022 年のがん診療連携拠点病院等におけるがん診療の状況』 『院内がん登録2011 年10 年生存率集計 公表:小児がん、AYA 世代のがんの10 年生存率をがん種別に初集計』