小児AYA世代のがんにおける年齢区分毎の男女別割合
解析対象は、2018‐2019年に院内がん登録実施施設で新規診断された小児がん(0~15歳未満)とAYA世代がん(15歳~40歳未満)の計83,516例。加藤実穂氏(国立成育医療研究センター 小児がんデータ管理科)は、自施設での初回治療開始例がやや低い傾向にあり、初回治療を他施設に依頼する場合があることを反映していると指摘した。(以降の解析は初回治療を自施設で受けた計62,750例が対象) また加藤氏は特筆すべき点として、小児がん(4,688例)はAYA世代がん(58,062例)と比較して非常に希少であること、またAYA世代がんでは女性が77.0%と性差が大きいことに言及。更に小児がんとAYA世代がんでは発症するがん種の分布も全く異なるため、必要な治療やその後の晩期毒性、必要な支援の内容などを考える上でも、発症年齢や治療経過期間などの把握が重要である、とコメントした。小児AYA 世代のがんにおける各がん種の内訳
小児がんの分布は、白血病が30.4%と最も多く、次いで脳腫瘍が23.0%であり、男女に大きな差は見られなかった。 AYA世代がんは、癌腫が最も多く37.8%、脳・脊髄腫瘍が4.9%であった。癌腫とは、体の表面や臓器の粘膜などを覆う上皮細胞から発症するがんのことであり、AYA世代の癌腫の内訳は、乳がん(26.5%)、子宮頸部・子宮がん(19.7%)、甲状腺がん(14.3%)、男女別で見ると、男性では、結腸・直腸がんが最も多く(28.1%)、次いで甲状腺がん(14.4%)、女性では、乳がんが最も多く(34.2%)、次いで子宮頸部・子宮がん(25.4%)という結果であった。 AYA世代がんにおいては、41.4%が変換不能に分類されているが、これは今回のAYA世代がんの定義で使われた「AYA Site Recode/WHO2008 改訂版」において、一部のがん種が含まれていないことに起因する、と石井氏。その中の大部分を占める上皮内がん(癌腫のうちがんが上皮内にとどまっている初期の段階のもの)を含めて解析し直すと、AYA世代がんの癌腫の割合は77.9%になるという。 石井氏によると、上皮内がんまで含めると、AYA世代の癌腫の内訳は子宮頸がんが58.0%と最も多くなり、早期発見症例も多いということを示している。 診療の特徴としては、AYA世代がんはがん診療連携拠点病院において診療を受ける傾向が高く(75.1%)、これはその他の世代を含む自施設治療例の拠点病院における診療割合とほぼ同じ数値。一方小児がんは、拠点病院における診療割合は59.0%であり、33.3%は小児がん拠点病院で診療を受けていることが分かった。 今回の報告により小児AYA世代がんの数や診療の実態を正しく把握することにつながり、今後必要なケアなどを検討するうえでの判断材料になれば、と石井氏は語り報告を締めた。 なお、報告書の詳細は同センターのホームページで閲覧可能。 参照元:国立がん研究センター プレスリリース