この記事の3つのポイント
・免疫チェックポイント阻害薬治療歴のあるFGFR遺伝子変異陽性進行尿路上皮がんを対象とした第3相のTHOR試験
・経口FGFRチロシンキナーゼ阻害薬エルダフィチニブの有効性・安全性を検証
・エルダフィチニブは化学療法と比較して全生存期間を有意に改善
2023年10月21日、医学誌『The New England Journal of Medicine』にて、治療歴のあるFGFR遺伝子変異陽性進行尿路上皮がんに対する経口FGFRチロシンキナーゼ阻害薬であるエルダフィチニブ単剤療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のTHOR試験(NCT03390504)の結果がGustave Roussy InstituteのYohann Loriot氏らにより公表された。
THOR試験は、免疫チェックポイント阻害薬治療歴のあるFGFR遺伝子変異陽性進行尿路上皮がん患者(N=266人)に対して、1日1回エルダフィチニブ8mg(最大9mgまで増量)単剤を投与する群(N=136人)、もしくは3週を1サイクルとして主治医選択の化学療法(ドセタキセル、もしくはビンフルニン)を実施する群(N=130人)に1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として全生存期間(OS)、副次評価項目として無増悪生存期間(PFS)、客観的奏効率(ORR)、安全性を比較検証した第3相試験である。
本試験のフォローアップ期間中央値15.9ヶ月時点における結果、主要評価項目であるOSの中央値はエルダフィチニブ単剤群の12.1ヶ月に対して主治医選択の化学療法群で7.8ヶ月と、エルダフィチニブ単剤群で死亡のリスクを36%(HR:0.64,95%信頼区間:0.47-0.88,P=0.005)統計学的有意に改善した。
副次評価項目であるPFSの中央値はエルダフィチニブ単剤群の5.6ヶ月に対して主治医選択の化学療法群で2.7ヶ月と、エルダフィチニブ単剤群で病勢進行または死亡のリスクを42%(HR:0.58,95%信頼区間:0.44-0.78,P<0.001)統計学的有意に改善した。
一方の安全性として、グレード3もしくは4の治療関連有害事象(TRAE)発症率はエルダフィチニブ単剤群の45.9%に対して主治医選択の化学療法群で46.4%を示した。TRAEによる死亡率はエルダフィチニブ単剤群の0.7%に対して主治医選択の化学療法群で5.4%と、エルダフィチニブ単剤群で低率であった。
以上のTHOR試験の結果よりYohann Loriot氏らは「免疫チェックポイント阻害薬治療歴のあるFGFR遺伝子変異陽性進行尿路上皮がんに対するエルダフィチニブ単剤療法は、主治医選択の化学療法群に比べてOSを統計的有意に改善し、安全性も管理可能でした」と結論付けている。
参照元:
Erdafitinib or Chemotherapy in Advanced or Metastatic Urothelial Carcinoma
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