2つの遺伝子パネル検査が承認取得、一方、肺がん治療スキームは複雑に?


  • [公開日]2018.12.28
  • [最終更新日]2018.12.28

12月26日、シスメックス株式会社は、国立がん研究センターと共同で開発を進めてきた「OncoGuide™ NCCオンコパネル システム」について、がんゲノムプロファイリング検査用のシステムとして製造販売承認を取得したと発表した。本システムは、「OncoGuide™ NCCオンコパネル 解析プログラム」と「OncoGuide™ NCCオンコパネル キット」より構成されるコンビネーション医療機器で、次世代シークエンサーと組み合わせて使用される。なお、シスメックス社プレスリリースによると、今後、本システムの保険適用申請を予定し、2月の発売を目指す。

シスメックス社プレスリリース

国立がん研究センタープレスリリース

また、翌12月27日、中外製薬株式会社は、次世代シーケンサーを用いた遺伝子変異解析プログラム「FoundationOne® CDx がんゲノムプロファイル」に関し、固形がんに対する遺伝子変異解析プログラム(がんゲノムプロファイリング検査用)ならびに体細胞遺伝子変異解析プログラム(抗悪性腫瘍薬適応判定用)を目的とした使用について、厚生労働省より製造販売承認を取得したと発表した。がん関連遺伝子の包括的なゲノムプロファイリングおよび抗悪性腫瘍剤のコンパニオン診断の2つの機能を併せ持ったがん遺伝子パネル検査となる。なお、同社に問い合わせたところ、なるべき早期に本システムの両適応の保険償還を目指すもののその時期は非公表とのことであった。

中外製薬社プレスリリース

なお、以下の記事に関連し、承認された情報となる。

遺伝子パネル検査を厚労省部会が了承 -2019年春から夏にかけて販売へ‐

ファンデーションワンは非小細胞肺がんのタフィンラー×メキニストのコンパニオンとしては承認されず

「OncoGuide™ NCCオンコパネル システム」と「FoundationOne® CDx がんゲノムプロファイル」の技術的な違いは上記の記事にまとめているとおりである。

しかしながら、承認内容について「FoundationOne® CDx がんゲノムプロファイル」は、以下の薬剤使用のためのコンパニオン診断薬となる点が異なる。

非小細胞肺がん
・EGFRエクソン19欠失変異及びエクソン21 L858R変異
ゲフィチニブ(商品名イレッサ)、エルロチニブ(商品名タルセバ)、アファチニブ(商品名ジオトリフ)、オシメルチニブ(商品名タグリッソ

・EGFRエクソン20 T790M変異
オシメルチニブ(商品名タグリッソ)

ALK融合遺伝子
アレクチニブ(商品名アレセンサ)、クリゾチニブ(商品名ザーコリ)、セリチニブ(商品名ジカディア)

悪性黒色腫
BRAF V600E及びV600K変異
ダブラフェニブ(商品名タフィンラー)、トラメチニブ(商品名メキニスト)、ベムラフェニブ

乳がん
・ERBB2コピー数異常(HER2遺伝子増幅陽性)
トラスツズマブ(商品名ハーセプチン

直腸・結腸がん
・KRAS/NRAS野生型
セツキシマブ(商品名アービタックス)、パニツムマブ(商品名ベクティビックス)

上記のように、恩恵を受けるのは非小細胞肺がん患者となる。

今までEGFR、ALK、ROS1の検査を行うのにそれぞれの検査が必要であり、採取した組織が足りない場合、再度組織を採るか見あわせる必要があった。そのため、今回の承認により一度の検査で3つの遺伝子変異が検出できることは大きい。

しかしながら、タフィンラーとメキニストを使用するためのBRAF検査がコンパニオン診断薬として認められなかった(上記通り、悪性黒色腫は承認、中外製薬によると理由については非公表とのこと)。これ故、初回治療前にBRAF遺伝子変異を調べるのには「オンコマイン Dx Target Test CDxシステム」を使用する必要がある。

一方で、シスメックス社と同様に、がんパネル検査としても承認されているため、標準療法がなくなった後にはこの枠でBRAF検査を行うことは可能となる。

肺がん患者連絡会代表の長谷川一男氏は、今回の承認を受け「現状、担当医によって希少変異の検査を行うかはバラバラであり、今後、初回治療開始前にBRAF検査を行わないという事態になりかねない。ファンデーションワンでBRAF検査がコンパニオン診断薬で認められ、EGFR、ALK、ROS1、BRAF検査が同時に行えるようになることを願う」と話した。

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