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進行性上咽頭がんに対する放射線化学療法としてのネダプラチン、シスプラチンに対する主要評価項目である無増悪生存率(PFS)の非劣性を証明する

2018年2月28日、医学誌『The Lancet Oncology』にてステージII-IVb上咽頭がん患者に対する化学療法放射線療法としてのシスプラチン療法に対するネダプラチン療法の非劣性を比較検証した第III相の無作為試験(NCT02301208)の結果がSun Yat-sen University Cancer Centre・Lin-Quan Tang氏らにより公表された。

本試験は、18歳から65歳のステージII-IVb上咽頭がん患者(N=402人)に対して21日を1サイクルとして1日目にシスプラチン100mg/m2+放射線療法を3サイクル投与する群(N=201人)、または21日を1サイクルとして1日目にネダプラチン100mg/m2+放射線療法を3サイクル投与する群(N=201人)に1:1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として2年無増悪生存率PFS)、副次評価項目として全生存率(OS)、無遠隔転移生存率(DMFS)、局所無再発生存率(LRFS)などを比較検証したオープンラベルの第III相非劣性試験である。なお、2年無増悪生存率(PFS)における非劣性は両群間における95%信頼区間の上限値が10%を超えないこととして定義されている。

本試験に登録された患者背景は下記の通りである。年齢中央値はシスプラチン群45歳(20-64歳)、ネダプラチン群44歳(18-65歳)。性別はシスプラチン群で男性79%(N=158人)、ネダプラチン群で男性72%(N=144人)。Karnofsky Performance StatusKPS)90-100はシスプラチン群で95%(N=190人)、ネダプラチン群で96%(N=192人)。

病期分類は原発腫瘍(T因子)はシスプラチン群でT1が1%、T2が24%、T3が60%、T4が15%、ネダプラチン群でT1が2%、T2が20%、T3が62%、T4が15%。所属リンパ節(N因子)はシスプラチン群でN0が9%、N1が44%、N2が39%、N3が7%、ネダプラチン群でN0が9%、N1が45%、N2が39%、N3が6%。ステージはシスプラチン群でIIが12%、IIIが67%、IVAが14%、IVBが6%、ネダプラチン群でIIが12%、IIIが67%、IVAが15%、IVBが5%。

なお、計画通りの放射線療法を完了した患者はシスプラチン群で100%(N=201人)、ネダプラチン群99.5%(N=200人)であり、放射線療法治療期間中央値43日(42-46日)、放射線量中央値は70Gy(70-70)、1回当たり放射線量中央値は2.33Gy(2.19–2.33)。また、化学療法を3サイクル完遂した患者はシスプラチン群で65%(N=131人)、ネダプラチン群で57%(N=115人)、2サイクルはそれぞれ39%(N=78人)、33%(N=66人)、1サイクルは1%(N=3人)、0%(N=0人)であった。

本試験の結果、主要評価項目である2年無増悪生存率(PFS)はシスプラチン群89.9%(95%信頼区間:85.8-94.0%)に対してネダプラチン群88.0%(95%信頼区間:83.5-94.5%)、両群間の差は1.9%(95%信頼区間:4.2-8.0%)で非劣性が証明された(P=0.0048)。また、副次評価項目である全生存率(OS)は両群間における統計学的有意な差はなし。局所無再発生存率(LRFS)はシスプラチン群11.6%(95%信頼区間:7.5-16.7%)に対してネダプラチン群17.3%(95%信頼区間:11.0-24.9%)、両群間における統計学的有意な差はなし(ハザードリスク比:1.30,95%信頼区間:0.74-2.27,P=0.36)。無遠隔転移生存率(DMFS)はシスプラチン群12.4%(95%信頼区間:8.2-17.5%)に対してネダプラチン群14.0%(95%信頼区間:9.3-19.6%)、両群間における統計学的有意な差はなし(ハザードリスク比:1.00,95%信頼区間:0.57-1.77,P=0.98)

一方の安全性として、ネダプラチン群よりもシスプラチン群で最も確認されたグレード3または4の有害事象(AE)は嘔吐、吐き気、食欲不振、体重減少、低カリウム血症低ナトリウム血症であった。また、シスプラチン群よりもネダプラチン群で最も確認されたグレード3または4の有害事象(AE)は血小板減少症であった。

なお、両群で10%以上の患者で確認されたグレード1-2の有害事象(AE)は白血球減少症好中球減少症、貧血、血小板減少症、嘔吐、吐き気、食欲不振、便秘、体重減少、粘膜炎、皮膚炎、痛み、疲労、感覚ニューロパチー、口渇、低カリウム血症、低ナトリウム血症、低カルシウム血症、総ビリルビン値上昇、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)上昇である。

そして、両群の治療中止の理由は患者拒否がシスプラチン群70%(N=46/66人)、ネダプラチン群52%(N=42/81人)、有害事象(AE)がシスプラチン群26%(N=17/66人)、ネダプラチン群43%(N=35/81人)であった。治療中止の原因となった有害事象(AE)の内訳としてはシスプラチン群で白血球減少症65%(N=11/17人)、血小板減少症18%(N=3/17人)、ネダプラチン群で白血球減少症37%(N=13/35人)、血小板減少症54%(N=19/35人)であった。

以上の試験の結果より、Lin-Quan Tang氏らは以下のように結論を述べている。”進行性上咽頭がん患者さんに対するネダプラチンを併用した化学放射線療法はシスプラチンを併用した化学放射線療法の代わりになることが我々の試験結果より証明されました。今後は、本治療を導入療法、術後放射線化学療法など新しい治療手段として検討していく必要があります。”

Concurrent chemoradiotherapy with nedaplatin versus cisplatin in stage II–IVB nasopharyngeal carcinoma: an open-label, non-inferiority, randomised phase 3 trial(The Lancet Oncology, DOI: https://doi.org/10.1016/S1470-2045(18)30104-9)

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