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【がん治験体験】HER2遺伝子変異陽性非小細胞肺がん、治療選択のひとつである治験は自分と未来の患者のための希望

[公開日] 2026.10.22[最終更新日] 2026.10.06

目次

写真はイメージです。(AIによる生成)
プロフィール お名前:清水佳佑さん(本名) 年代:40代 性別:男性 家族構成:妻と子ども2人との4人暮らし 仕事:フリーランスデザイナー、肺がんHER2「HER HER」発起人 がんの種類:非小細胞肺がん(肺腺がん) 診断時ステージ:ステージ3B 診断年:2017年 現在の居住地:滋賀県 治験のフェーズ:第2相試験 治験参加時のライン:2次治療(2番目の治療)
※本体験談は、患者さん個人の経験に基づくものです。治療の経過や副作用には個人差があります。オンコロマイストーリー含め、ネット上の情報には、進行や再発といった厳しい闘病を経験された方の発信が多く残る傾向がありますが、実際には再発なく平穏に過ごされている方も数多くいらっしゃいます。情報の一つとして受け止め、治療方針の決定の際には、必ず主治医や医療従事者にご相談ください。 2017年に肺腺がんと診断を受けた清水佳佑さんは、当初は化学療法に抵抗を感じ、民間療法などを模索する中で病状が悪化し、ステージ4へと進行しました。しかし、遺伝子パネル検査をきっかけに自身のHER2遺伝子変異を知り、それをターゲットとした新しい治験の存在にたどり着きます。1次治療を経て治験に参加した清水さんは、重い副作用や遠距離通院、治験ならではの厳しい制約に苦しみながらも、完全奏効という大きな結果を手にしました。治験を通じて感じた不安や希望、治験コーディネーターのサポート、そして未来の医療へ貢献できたという思いについてお話しいただきました。

遺伝子パネル検査でHER2遺伝子変異が判明

私が肺腺がんと診断されたのは、2017年2月のことでした。前年12月に受けた健康診断の胸部レントゲン検査で異常が見つかり、精密検査を重ねた結果、ステージ3Bと告知されました。当時は化学療法を受けることにどうしても抵抗があり、食事療法や代替療法で治せないかと試行錯誤していました。しかし、その間に体調が悪化し、がん性心膜炎や心タンポナーデを起こしてしまい、ステージ4へと進行してしまいました。 その後、さまざまな治療を模索する中で、2017年9月に大学病院で遺伝子パネル検査を受けました。その結果、私のがんはHER2遺伝子に変異があるタイプだと判明したのです。当時の肺がん治療においては、HER2を対象とした保険適用の治療薬は存在しませんでした。

治験という選択肢がもたらした大きな希望

遺伝子変異が判明したのと同じタイミングで、HER2を標的とした新しい薬の治験が行われているという情報を得ました。正直なところ、最初は治験に対して「実験台にされるのではないか」というネガティブなイメージを持っていました。しかし、自分自身で調べていくうちに、治験は安全性を確認しながら進められるものであり、決して無謀な実験ではないということを理解しました。 何より、治験が実施されていると知ったとき、治療の選択肢がひとつ増えたことに非常に大きな希望を感じました。たとえ標準治療が効かなくなったとしても、私には治験という切り札があると思えたからです。ただ、当時の私はまだ化学療法を一度も受けていなかったため、治験の参加条件を満たしていませんでした。そこで、まずは1次治療としてカルボプラチンとアリムタによる化学療法を開始し、主治医とは「もしこの治療が効かなくなったら、治験に入りましょう」と戦略を立てながら治療を進めることになりました。

1次治療後の増悪と治験参加への決断

1次治療は一定の効果を示し、アリムタの単剤維持療法を含めて約1年近く続けることができました。しかし、2019年2月にがんの増悪が確認されました。残念な気持ちはありましたが、それと同時に「ついにあの治験に参加できる」という喜びや希望も感じていました。治験の枠がまだ残っており、すぐに切り替えることができたのは本当に幸運なタイミングでした。 私が参加したのは第2相試験でした。第3相試験のように比較のためにプラセボ(偽薬)が使われる可能性のある試験とは異なり、治験薬が確実に使えることが保証されていました。また、その薬は乳がんや胃がんなど他のがん種ですでに先行して治験が進んでおり、良い結果が出ているという情報も得ていました。それが大きな安心材料となり、迷うことなく参加を決断しました。 家族に治験の話をした際も、私がしっかりと情報を集め、「実験台ではなく、安全性も確認しながら行われること」「他のがん種では、すでに期待が持てる薬であることが確認されつつあること」を丁寧に説明したため、反対されることはなく、むしろ応援して送り出してくれました。

治験ならではの厳しい制約と遠距離通院の壁

大きな希望を持って参加した治験でしたが、実際に始まってみると大変なことも多くありました。まず苦労したのは、治験ならではの厳格なルールです。説明同意文書に明記されており、例えば薬の減量や休薬に関して厳しい制限がありました。定められた基準以上の減量や休薬をすると治験が中止になってしまうため、3週間に1回の投与スケジュールをなんとか予定通りにこなさなければなりませんでした。 副作用自体も想像以上に厳しいものでした。投与した翌日くらいまでは吐き気止めが効いているのですが、3日目あたりから強烈な倦怠感や吐き気、ひどい下痢に襲われました。1週間から10日間ほどはベッドに横たわったまま動けず、3週間のスケジュールのうち半分は副作用で倒れているような状態でした。フリーランスとして仕事をしていましたが、治験期間中はほとんどまともに仕事ができない状況でした。 さらに、通院の負担も大きかったです。私が住んでいる県から、県外の治験を実施していた大学病院まで通わなければなりませんでした。公共交通機関を使えば片道3時間半、車でも片道2時間半かかります。近くの病院で治験を受けられれば一番よかったのですが、治験を実施できるのは限られた大きな病院だけなので、距離的な課題はどうしても避けられませんでした。 ※がんの薬物療法に伴う副作用の出方や程度には、大きな個人差があります。また、現代の医療では副作用をあらかじめ予防したり、症状を抑えたりする対策(支持療法)が非常に進歩しています。体験談の描写に過度な不安を抱かず、主治医や医療スタッフに安心してご相談ください。

治験参加前に知っておきたかったこと

治験に参加する前に知っておきたかったこととして、検査の頻度の多さが挙げられます。標準治療であれば、CT検査は通常3か月に1回程度のペースですが、治験に参加する際の説明同意文書を読んで初めて、6週間に1回の頻度でCT検査を受けなければならないことを知りました。 短い間隔で検査を受けることは安心につながる面もありますが、それだけ被ばく量が多くなるということでもあります。その事実を知ったときは少し戸惑いました。治験では効果や安全性を細かく確認するために頻繁な検査が必要になることは理解できますが、事前に「これくらいの頻度で検査があり、こういう理由がある」ということを知っておけば、もう少し心構えができたのではないかと感じました。

治験コーディネーターの存在と経済的な負担軽減

もちろん、治験に参加して良かったことはたくさんあります。最も大きかったのは、新しい治験薬を実際に使えたことです。また、交通費や検査費用などの補助が出るため、標準治療に比べて経済的な負担が大きく軽減されたことも非常にありがたかったです。 そして、治験コーディネーターの存在も心強いものでした。毎回の通院時に治験コーディネーターと面談する時間が設けられており、体調の変化やちょっとした悩み、困りごとなどをじっくり相談することができました。主治医には少し言いづらいような些細な不安であっても、丁寧に話を聞いていただいたおかげで精神的にとても救われました。治験という特別な枠組みだからこそ、より手厚いサポートを受けられたと感じています。

完全奏効という結果と未来への貢献

治験を開始してから約1年余りで、完全奏効となりました。本当にありがたい結果でした。本来であればそこで薬をやめてもよかったのですが、当時はまだ薬が未承認だったため、治験をやめてしまうと再び薬が必要になったときに使えなくなる恐れがありました。そのため、副作用に耐えながらも約4年半にわたって治験を継続し、2023年に薬が正式に承認されたタイミングで治験を無事に卒業することができました。 治験を終えた今、強く感じるのは治験への感謝です。治験があったからこそ、私は命をつなぐことができました。そして、自分が治験に参加したことで、薬が世に出て、未来の患者さんたちの治療に貢献できたのだという誇りのようなものも感じています。自分の治療であると同時に、医療の進歩に参加しているという思いを持つことができました。 治験卒業後は経過観察を続けていましたが、2026年2月に縦隔リンパ節への転移が見つかりました。そのため、化学放射線療法を行い、現在はイミフィンジによる免疫療法を続けています。病状の変化はありましたが、あのとき治験に参加したからこそ、今の治療へと確実に命をつなぐことができたと実感しています。

積極的に患者へ治験情報を届けてほしいという願い

治験を実施してくださる病院や医療関係者の皆さまには、感謝の気持ちでいっぱいです。ただ、患者としてひとつお願いしたいのは、治験情報をもっと積極的に患者へ届けてほしいということです。 患者会などを通じて他の方の話を聞くと、医師によって持っている治験の情報にばらつきがあることを痛感します。医師から治験の提案がなく、患者側が自分で見つけて医師に伝えて初めて治験につながったというケースも少なくありません。どんな治験が走っているかという情報は、患者にとって命に直結する重要な選択肢です。だからこそ、一部の限られた病院だけでなく、医療現場の医師からすべての患者へ、平等に治験の情報が提供されるような環境が整っていくことを強く願っています。

治験を検討されている方へのメッセージ

今、治験を検討されている方にお伝えしたいことがあります。 治験を「治療の選択肢のひとつ」として積極的にご検討ください 治験は、うまくいくかどうかは実際にやってみないとわからない部分もありますが、ご自身の治療の選択肢を広げる大切なものになります。決して特別なものではなく、「治療の選択肢のひとつなんだ」という前向きな考え方で捉え、機会があれば積極的に参加をご検討いただきたいと思います。 未来の患者さんのため、一緒に医療の進歩に参加しましょう 治験に参加することは、ご自身の治療のためだけではなく、未来の患者さんを救う新薬の開発にも直結します。治験に参加し、その経験を周りにもお伝えいただきながら、「一緒に医療の進歩に参加するんだ」という気持ちで受けていただけたらと願っています。

清水佳佑さんインタビュー記事

患者団体に聞く! 肺がんHER2「HER HER」 清水佳佑さん 【肺がん体験談】学術集会の患者・家族向けプログラムが与えてくれたもの

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