【疫学】

前立腺は男性生殖器の一部で、膀胱のすぐ下にある栗の形をした臓器であり、前立腺がんは日本人男性に3番目に多くみられるがんとなります。2014年に新たに前立腺がんと診断された患者は75,400人程度と予想されています。前立腺がんは加齢に伴って罹患率が上昇し、80代前半が発症のピークといわれています。最近は50代の患者も増え、まれに30代や40代での発症も見られます。

【特徴】

前立腺がんのうち悪性度の低いものは進行も遅く、生命に影響を及ぼさない場合も少なくありません。がん以外の病気で亡くなった男性を解剖すると、70歳を超えた人の20~30%、80歳を超えた30~40%が前立腺がんを持っているといわれています。このように死亡解剖にて発覚する前立腺がんのことをラテントがんといいます。

【検査】

前立腺がんのスクリーニング検査はPSA検査(腫瘍マーカー)、直腸診(触診)、超音波検査が用いられます。中でもPSA検査は簡便であり、健康診断の一環のような感覚で受けられることができます。実際、PSA検査が普及したことにより早期前立腺がんの発見率は格段に上昇しました。これらの検査にて前立腺がんと疑われた場合には前立腺の組織を採取して、顕微鏡で詳しく観察して、診断を確定します。診断が確定したら、CT検査やMRI検査などで転移の有無があるかを確認します。

【病期(ステージ)分類・悪性度】

病期(ステージ)とはがんの進み具合を分類したものです。前立腺がんの場合、『がんが前立腺の中にとどまっているか?周囲の臓器までに広がっているか?』、『リンパ節転移があるか』及び『他の臓器に転移しているか』を組み合わせて決定します。
悪性度とはがん細胞をその性質にわけてリスクの高いものから低いものまで5段階に分類したものです。グリーソン・スコアと呼ばれています。病期、悪性度、PSA値を組み合わせてリスクが分類され、治療方針の参考とされています。

【治療方針】

前立腺がんの場合、リスク分類や患者さんの年齢や合併症に基づきPSA監視療法(待機)・手術療法・放射線療法・薬物療法が用いられます。
PSA監視療法は前立腺がんが見つかってもすぐには治療を開始せず、一定の間隔でPSA検査を行い、PSA値をモニタリングする方法です。PSA値が高値に推移してきたタイミングで本格的な治療となります。

【手術】

前立腺がんの場合、他のがんと異なり部分切除という選択肢はありません。前立腺を全て摘出します。前立腺を精嚢や精管などの周囲ごと摘出するほか、周辺のリンパ節も摘出します。手術手法は開腹手術や腹腔鏡下手術といった手法がありますが、2012年に世界的に普及している「ダヴィンチ」という手術支援ロボットを用いる腹腔鏡下手術が保険適応されました。前立腺全摘出術は失禁や勃起不全を伴うリスクがありますが、支援ロボットでそのリスクの低減が期待できます。

【放射線治療】

放射線のDNAを破壊する力を利用する治療方法です。転移のない前立腺がんの場合、放射線治療も根治できる治療法です。治療効果は手術と甲乙つけづらく、患者さんの考え方やライフスタイルに合わせて治療を選択します。放射線治療には体外から患部に放射線を照射する方法と放射線を発生するカードリッジを埋め込む方法があります。放射線治療と薬物治療を併用することもあります。

【薬物療法】

前立腺がんは男性ホルモン(アンドロゲン)の影響を受けて発生・進行するホルモン依存性のがんです。男性ホルモンが存在しないと増殖できません。この性質を理由したのがホルモン療法です。ホルモン療法に使用される薬剤は精巣や副腎からの男性ホルモンの分泌を抑制します。
ホルモン療法は効果が高い治療法ですが、持続しているうちに男性ホルモンがなくても増殖する性質を獲得します。これを去勢抵抗性といいます。去勢抵抗性となった前立腺がんに対する薬物療法はドセタキセル(商品名:タキソテール)という薬剤を使用してきましたが、2014年にアビラテロン(商品名:ザイティガ)、エンザルタミド、カバジタキセル(商品名:ジェブタナ)といった新しい薬剤が登場しました。

【参考】

上記記載にあたり、キャンサーネットジャパン「もっと知ってほしい前立腺がんのこと」を参考にしています。より詳細でわかりやすい記載であるため、より多くの情報をご覧になりたい方は以下にアクセスしてください。

NPO法人キャンサーネットジャパン
> 出版物のご紹介:http://www.cancernet.jp/publish

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