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慢性骨髄性白血病とは

白血病は血液がんの1種で、造血幹細胞が(すべての血液細胞のもととなる細胞)がん化して発生します。慢性骨髄性白血病は健康診断にて偶然に診断される場合や貧血の進行に伴う倦怠感、血小板の減少に伴う出血症状、腹痛または腹部の不快感により診断される場合などや脾臓の腫大による腹部不快感、便通の異常なども起こります。
なお 診断時には殆どの患者さんで末梢血中の白血球数が増加しています。

疫学

全白血病のうち慢性骨髄性白血病は、15~20%を占め 日本においての発症率は毎年 人口10万人あたり1~2人程度です。また発症率は年齢とともに上昇し中央値は60歳前後とされています(ヨーロッパ)

発生のメカニズム

原因は 造血幹細胞に起こる特定の遺伝子異常に起因することが知られていますが 何故遺伝子異常が起こるのかは分かっていません。人には46本(23対)の染色体がありますがこのうちの9番染色体(ABL:エーブル遺伝子が存在)と22番染色体(BCR:ビーシーアール遺伝子が存在しています)が途中から切れて入れ替わった染色体(相互転座といいます)をフィラデルフィア染色体(発見された地名に因んで呼ばれています)と呼ばれ、慢性骨髄性白血病の患者さんの95%に認められます。

診断

発症は穏やかなため 進行しないと症状は現れません そのため 定期健康診断や他の病気の検査時に偶然発見されることも多いとされております。
また 脾臓が腫大することによる 左上腹部の不快感、微熱、倦怠感、寝汗などを主訴として医師を訪れて 診断されることも多いようです。

慢性骨髄性白血病と診断する際には 血液検査を行い異常が認められれば NAPスコア(好中球アルカリフォスファターゼスコア:正常な好中球がたくさん活動していれば高値になるが正常な好中球がすくないと低値となる)
の低下を確認したうえで骨髄検査を行い フィラデルフィア染色体およびBCR-ALBL(ビーシーアールエーブル)1融合遺伝子を確認することで慢性骨髄性白血病と確定診断されます。 なお最近は染色体検査より遺伝子診断が優先されるようです。

治療

他の癌腫のように一つの臓器(胃がんや乳がんなど)に発生増殖し、転移を起こすものとは異なり 白血病の患者さんは診断時点で 血行性に前進に散らばっていると考えられます。このため 他のがん腫のように大きさ又は
広がり(深さ)の分類とは異なり 病気の段階としては 慢性期、移行期、急性期(急性転化)の3病期に分けられています。なお 約85%の患者さんは慢性期で慢性骨髄性白血病と診断されます。

慢性期

慢性骨髄性白血病のキーとなる薬剤はTKI(チロシンキナーゼ阻害薬)です。慢性期には 殆どの場合イマチニブ(グリベック)、ニロチニブ(ダシクナ)、ダサチニブ(スプリセル)のいずれかにて治療が開始される事になります。
慢性骨髄性白血病の治療効果に関しては European Lukemia Net 2009及び2013(ELN基準/欧州白血病ネット2009及び2013年コンセンサス)に従いチロシンキナーゼ阻害薬の効果をモニタリングされる必要があります。

治療効果判定は血液学的寛解、細胞遺伝学的寛解、分子生物学的寛解の3段階の効果に基づいて治療が進められます。これは白血病細胞の数を可能な限り減らすことで 慢性期を維持して 移行期や急性転化期に進行させない為です
順調にいけば 血液学的完全寛解、細胞遺伝学的完全寛解、分子生物学的完全寛解と治療が進んでいくことになります。分子生物学的完全寛解を得られることは、ほぼ白血病細胞が体内からなくなったことを意味しますが 白血病細胞が0になったとは限らない為(0になったかどうかは残念ながらわかりません)治療を継続する必要があります。

一方で 慢性期の成人で2年以上の分子生物学的完全寛解を得た患者さんを対象に TKI(チロシンキナーゼ阻害薬)を中止する臨床試験が行われ、長期にイマチニブを中止出来る患者さんの存在が分かってきました。未だ明確な基準が確立されておりませんので 簡単には中止すべきではないと思われますが、そう遠くない将来中止できる基準が確立するかも知れません。

(注:ボスチニブ(ボシュリフ)は二次治療にのみ適応、現在ポナチニブ(アイクルシグ)は国内未発売のためアルゴリズムには反映しておりません)

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*入門腫瘍内科学 改訂第2版 図3CML治療アルゴリズム 一部抜粋
optimal:至適 治療効果が良好という意味
warning:警告 治療効果が良好ではない
failure:失敗 治療薬を変更する事を考える
optimal response: 至適奏効
AML type or ALL type: 此処では急性骨髄性白血病や急性リンパ性白血病に使われる化学療法を選択という意味

*移行期、急性転化期
造血器腫瘍ガイドライン(2013年 一般社団法人 日本血液学会編)によると移行期はチロシンキナーゼ阻害薬(高用量イマチニブまたは第2世代TKI)を推奨するとされ 効果不足の場合は造血幹細胞移植を考慮する
また、急性転化期は チロシンキナーゼ阻害薬単剤または チロシンキナーゼ阻害薬を含む化学療法で最大効果を得た後 可能な限り造血幹細胞移植を推奨するような旨の記載がありますが いずれにせよ イマチニブ、ニロチニブ、ダサチニブ、ボスチニブなどのチロシンキナーゼ阻害薬が無効となって急性転化した場合は、典型的な急性白血病と異なり薬物療法 造血幹細胞移植は 良好な効果を期待できないようです。
従って急性転化をさせない事が重要です。 (注:ニロチニブの適応症は慢性期又は移行期の慢性骨髄性白血病となっております)

*参考
慢性骨髄性白血病とは? ESMO/ACF患者さんの手引きシリーズ  http://www.jsco.or.jp/guide/user_data/upload/File/167/CML.pdf
造血器腫瘍ガイドライン(2013年 一般社団法人 日本血液学会編)
入門腫瘍内科学 改訂第2版(篠原出版)

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