目次
1. 治験とは「未来の標準治療」を目指す大切な一歩
治験(ちけん)とは、新しいお薬や治療法が国の承認を受け、将来的に保険診療として広く患者さんに届けられるために行われる「人を対象とした試験」のことです。 現在、病院で受けられる標準治療(科学的根拠にもとづき、現時点で推奨されている治療)も、過去に多くの患者さんが治験へ協力してくださった結果として利用できるようになりました。治験は、十分な安全対策のもとで行われる臨床研究であり、新しい治療法を受けられる可能性がある選択肢のひとつです。2. 「臨床研究」「臨床試験」「治験」の違い
新しい治療法が開発されるプロセスでは、似たような言葉が使われますが、それぞれ指す範囲が異なります。① 臨床研究(もっとも広い範囲:人を対象とする医学研究すべて)
病気の原因解明、病気の予防法、新しい診断法、手術方法の工夫、患者さんの生活習慣の調査など、人を対象とするあらゆる医学研究を指します。② 臨床試験(臨床研究のなかの一部:人での効果や安全性のテスト)
臨床研究の中で、特に「新しい治療法(お薬や医療機器など)」を実際に人に試してみて、その有効性や安全性を科学的に調べる(テストする)ものを指します。③治験(臨床試験のなかの特別な位置づけ:国の承認を得るための特別な試験)
臨床試験の中で、「新しいお薬や医療機器を、国の承認(保険診療として広く使えるようにすること)を得るために行う」試験を指します。
3. お薬が届くまでの長い道のりと「治験」の位置づけ
1つの新しいお薬が患者さんのもとに届くまでには、一般的に9〜16年ほどの長い年月がかかります。治験は、その開発プロセスの最終段階にあたります。【開発の流れ:基礎研究から承認まで(数万種類から1つへ絞り込み)】
- ステップ①:基礎研究(期間の目安:2〜3年)お薬の「種(候補物質)」を見つけたり、新しく作ったりします。数万種類という膨大な候補の中から、可能性のあるものが選ばれます。
- ステップ②:非臨床試験(期間の目安:3〜5年)試験管の中の細胞や、動物を対象にテストを行います。人に使っても安全か、効果が十分に期待できるかを徹底的に調べます。
- ステップ③:治験(臨床試験)★現在ここ(期間の目安:3〜7年)厳しい審査をクリアしたごく一部の候補薬だけが、人(患者さんや健康な方)を対象に、安全性や効果を確認する段階へ進みます。
※がんの治験においては基本的にがん患者さんが対象となります。 - ステップ④:承認審査・発売(期間の目安:1年)治験で得られた詳細なデータを国(厚生労働省)に提出し、厳しく審査されます。合格すれば、一般的な「標準治療」として病院で使えるようになります。
4. がんの治験はどのように進むの?(3つのステップ)
がんの新しいお薬が患者さんのもとに届くまでには、安全性を最優先にしながら段階的な確認が行われます。治験は一般的に3つの段階(相:そう)に分けられます。第1段階(第1相試験:安全性の確認)
- まずは少数の患者さんを対象に、お薬が体に与える影響や、安全に使える適切な量を調べます。
第2段階(第2相試験:効果と使い方の確認)
- 安全な量が分かったら、特定のがんの患者さんを対象に、実際のがんに対してどれくらい効果があるか、適切なスケジュールを調べます。
第3段階(第3相試験:これまでの治療との比較)
- 多くの患者さんの協力を得て、今病院で受けられる「現時点でもっとも推奨される治療(標準治療)」と「新しいお薬」をくらべ、本当にこれまでの治療を上回る効果や安全性があるかを確認します。
5. 治験に参加する「期待(メリット)」と「事前に知っておくべきこと」
治験は有望な選択肢となる可能性がある一方、開発中の治療だからこその不確定な部分もあります。良い面と注意すべき面を、どちらも正しく知ることが大切です。【参加するメリット(期待できること)】
- 新しい治療を受けられる可能性がある:まだ一般診療では使用できない新しいお薬や治療法を受けられる可能性があります。
- 定期的な検査や診察が行われる:体調の変化を見逃さないよう、医師や専門のスタッフ(治験コーディネーターなど)がチームを組み、定期的な検査や診察を通じて状態を詳しく確認します。
- 未来の医療に貢献できる:あなたが治験に参加して得られたデータは、将来の患者さんの治療選択肢の拡大や医療の発展につながる可能性があります。
【事前に知っておくべきこと(リスクや注意点)】
- 予期せぬ副作用の可能性:まだ多くの人に使われていないお薬であるため、これまでのデータにない予期せぬ体調の変化が起こるリスクがあります。
- 必ずしも効果が得られるとは限らない:開発中のお薬のため、期待された効果が得られない場合もあります。
- スケジュールや条件が細かく決まっている:正確なデータを取るために、通院する日や検査を受けるタイミングが厳格に決まっています。通常の治療にくらべて、通院回数や検査項目が多くなる傾向があります。
- 参加条件がある:治験には、がんの種類や病期、これまで受けた治療、年齢、検査値などにもとづく参加条件があります。安全性や正確な評価のために定められており、希望しても参加できない場合があります。
6. 「安全性」はどのように守られているの?
開発中の薬を使うことに不安を感じる方もいるかもしれません。しかし、治験では患者さんの安全と権利が最優先に考えられています。 治験は、参加される患者さんの人権と安全を守るため、国際的な水準にもとづく国の厳しいルールGCP(医薬品の臨床試験の実施の基準)にしたがって慎重に実施されます。- 事前の厳しい審査:治験審査委員会(IRB)が治験の内容を事前にしっかりと審査します。この委員会は、医療の専門家だけでなく、医療を専門としない有識者や一般の方々などで構成されています。
- 十分な説明と同意:参加前には治験の内容や期待される効果、考えられるリスクについて書かれた文書を用いて説明を受け、納得したうえで参加するかどうかを決めます。参加をする際には、同意書へ署名をします。
- いつでも途中でやめることができます:一度同意したあとでも、理由を問わず自由に参加を取りやめることができます。
- 参加しなくても不利益はありません:治験への参加を断った場合や、途中で取りやめた場合でも、その後の診療や治療に不利益が生じることはありません。
7. お金(費用)の負担はどうなるの?
治験に参加している間も、すべての医療費を自己負担するわけではありません。- 製薬会社などが負担するもの:治験薬の費用や、治験のために追加で必要となる検査費用などは、治験を依頼する企業や研究機関が負担することが一般的です。
※医師主導治験など、試験の種類によっては一部の費用が自己負担となる場合もあります。詳細は、医療機関で治験の詳しい説明を受けるときに必ずご確認いただけます。 - ご自身で負担するもの(通常の保険診療):基本的には、診察料や治験とは直接関係のない治療・検査、入院費などは、通常どおり健康保険を利用して自己負担分(1〜3割など)を支払います。
また、通院に伴う交通費などの負担を軽減するために、治験に参加される患者さんに対して負担軽減費が支給される場合もあります。

※お薬の開発プロセスや期間は、


