肉腫の治療法

手術(外科)療法について

肉腫の治療は手術が基本です。完全切除による根治というベネフィットと、術後機能のリスク、患者さん本人の希望や生活の質QOL)を考慮して手術適応を決定しますが、その判断の根拠として、完全切除の可能性、術後予測される障害、四肢の場合は患肢温存の可能性、温存患肢の有用性、手術による予後改善の見通し、患者さんや家族の希望などを明確にすることが原則です。

周辺の正常組織を含めて腫瘍部位を大きく取り除く広範切除を行います。広範切除の後、例えば骨肉腫で患肢温存が可能の場合は人工関節または自身の骨を移植します。

成長の余地がある小児の患者さんの下肢の手術では、経時的に大きくなる左右の脚長差を解消するため延長型人工関節を導入し、成長に合わせた長さの調整が必要となります。

大きな動脈・静脈を取り囲んでいる腫瘍を切除した場合は血行再建術を行う、あるいは、術後の血流保持困難、運動機能喪失の場合は切断など、患者さん個別に対応し、ガイドラインに則した様々な切除の試みが行われています。

化学(薬物)療法について

切除可能な肉腫の周辺正常組織を含めて大きめに取り除く広範切除術と、術前・術後に実施する薬物療法(化学療法)が導入された1980年代以降は、肉腫の治療成績が飛躍的に向上しました。進行・再発、または転移のある肉腫で切除不能の患者さんには、薬物療法が推奨されています。

欧州臨床腫瘍学会(ESMO)ガイドラインでは、一次治療としての化学療法はアントラサイクリン系抗がん剤が強く推奨されており、その有用性も証明されています。アントラサイクリン系抗がん剤は微生物に由来する一連の薬剤で、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、ミトキサントロンなどが含まれ、他のがん種も適応に効果的な化学療法として広く用いられています。

肉腫を対象とするドキソルビシンの一次治療では、近年、アルキル化剤のイホスファミドを併用してもドキソルビシン単剤治療と比べ全生存率のベネフィットはないことが報告されています。

一方で、無増悪生存(PFS)期間は併用することで有意に延長したという報告があり(川井氏スライドNo.32)、腫瘍縮小が期待でき、かつ全身状態が良好な場合には選択肢となり得るとされています。

一次治療が効かなくなる、または反応しない場合の二次治療で用いる薬物療法としては、パゾパニブ、トラベクテジンなどが中程度のレベルで推奨されています。

日本における二次治療は、2012年以降、下記の3剤が相次いで承認され、肉腫の治療選択肢が大きく広がりました(川井氏スライドNo.56)

(1)パゾパニブ(商品名ヴォトリエント)

血管新生などに関与するキナーゼを阻害する分子標的薬で、治療歴を有する非脂肪性軟部肉腫に対する有用性が証明されました。主な有害事象は高血圧、下痢などです。

(2)トラベクテジン(商品名ヨンデリス)

ホヤに由来する有効成分でがん細胞の細胞死、細胞周期停止を介して増殖を阻害します。治療歴を有する平滑筋肉腫、脂肪肉腫に対する有用性が証明されました。主な有害事象は好中球数の減少といった骨髄抑制肝機能障害、吐き気、倦怠感などです。

(3)エリブリン(商品名ハラヴェン)

クロイソカイメンに由来する有効成分の微小管阻害薬で、治療歴を有する平滑筋肉腫、脂肪肉腫に対する有用性が証明されました。主な有害事象は白血球や好中球の減少、貧血といった骨髄抑制などです。

これら二次治療のどれを選択するかは、有効性が見込める組織型や投与方法(点滴静注、経口投与、入院/外来など)、特有の有害事象などを勘案し、患者さんの希望や体力を考慮して決定します。治療方針決定に至るまでの重要なことは、腫瘍そのものの状況(広がり、部位、化学療法感受性など)、臨床症状(症状の重症度、併存疾患、化学療法歴の有無など)に基づき、患者さん自身が受け入れ可能な治療の目標を設定し、その意思を医療者と共有することです。

開発中の抗がん剤(新規薬剤)

現在、主に抗体医薬オララツマブ、細胞療法NY-ESO-1、免疫療法ニボルマブなどが肉腫を対象に開発されており、臨床試験医師主導治験が進められています。

オララツマブはヒト血小板成長因子受容体α(PDGFRα)標的抗体で、米国では2016年、成人の軟部肉腫を対象にドキソルビシンとの併用療法が承認されました。ドキソルビシンとの併用療法では、ドキソルビシン単剤治療と比べ全生存期間が有意に延長することが実証されました。

NY-ESO-1細胞療法は、肉腫細胞が発現するがん抗原NY-ESO-1を標的とするように患者自身のT細胞遺伝子改変し、活性化してから患者さんに戻す治療法で、要件を満たす患者さん個別のテーラーメイド医療として注目されています。

PD-1標的抗体ニボルマブ(商品名オプジーボ)は既に広く知られている免疫チェックポイント阻害薬で、切除不能で組織型が明細胞肉腫、または胞巣状軟部肉腫に対する治療が試みられています。

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