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前立腺がんの検査と診断

[公開日] 2018.06.21[最終更新日] 2024.10.03

前立腺がんの検査

前立腺がんが早期発見されるきっかけの多くは、「PSA(前立腺特異抗原)検査」です。無症状でも検診などの血液検査で「PSA値が高い」と言われ、前立腺がんを疑ってさらに検査をし、見つかるケースが増えています。何らかの症状があって泌尿器科を受診し、前立腺がんの可能性がある場合は、PSA検査に加えて昔ながらの「直腸診」が多く行われます。ただ、前立腺がんの大きさや位置によっては直腸診では見つからないこともあるため、PSA検査や直腸診で前立腺がんが疑われた場合には、「経直腸エコー」を行います。 PSA検査や直腸診、経直腸エコーによって前立腺がんの可能性が高いとされた場合、確定診断のために「前立腺生検」を行います。前立腺がんとの診断が確定したら、がんの広がり(進行度)や転移がないかを調べるために、「画像検査」が行われます。

PSA検査

前立腺がんの腫瘍マーカーとして最も有用なのが、「PSA検査」です。 PSAは、精液の安定化の働きを持つタンパク質の一種です。PSAは健康な時には一部だけが血液中に存在し、ほとんどは精液中に流れています。しかし、前立腺がんになると、前立腺の組織が壊れ、PSAが血液中に漏れ出すことでPSA値が増加します。 そのためPSAは非常に敏感な腫瘍マーカーとされ、PSA検査は前立腺がんの早期発見に必須の検査項目となっています。PSA値が正常値(基準値)よりも高ければ前立腺がんが疑われます。PSAの基準値は一般的には0~4ng/mLとされていますが、年齢によって基準値を下げる場合もあります。 PSA値4~10ng/mLがいわゆる「グレーゾーン」で、20~30%ほどの方で前立腺がんが見つかります。この確率は、PSA値10~20ng/mLで35-42%、PSA値20ng/mL以上で53-75%と、PSAの値が高くなるほど前立腺がんの発見率も高くなります。PSA値100ng/mLを超える場合には前立腺がんの可能性が高く、転移も疑われます(PSAは前立腺がんの診断だけでなく、がんの広がりや転移の有無の判断、治療効果の判定、再発の診断などにも非常に有用です)。 ただし、PSA値4ng/mL以下の場合でも前立腺がんが発見されることもあり、逆にPSA値10ng/mL以上の場合でも前立腺がんが発見されないこともあります。また、PSA値が高くても100%が前立腺がんであるとは限らず、前立腺肥大症や前立腺炎でも値が高くなることがあります。 PSAには、遊離型PSA(free PSA)と結合型PSA(complexed PSA)という種類があり、前立腺で発生するほかの病気(前立腺肥大症など)との鑑別に、総PSA(total PSA)に対する遊離型PSAの割合(F/T比)が用いられます。F/T比が低い場合、前立腺がんの可能性を強く疑います。

直腸診・経直腸エコー(経直腸的前立腺超音波検査)

「直腸診」は、医師が肛門に指を挿入して、前立腺の背側を触診する検査です。前立腺の背側は前立腺がんの好発部位で、前立腺の表面に凹凸(おうとつ)があったり、左右非対称だったりした場合、前立腺がんを疑います。ある程度大きくなった前立腺がんなら、指で触診し、診断することができます。 「経直腸エコー」(経直腸的超音波検査)は、超音波を発する器具(プローブ)で前立腺の大きさや形を調べる検査です。プローブは指とほぼ同じ太さの機械で、直腸診と同じように肛門から挿入します。前立腺にがんが出来ていると、正常時とは違った像が映し出されることが多く、がんの広がりに伴ってより判別しやすくなります。前立腺がんのほか、前立腺の大きさや前立腺肥大症の有無も分かります。

前立腺生検

自覚症状、高PSA値、直腸診、経直腸エコーなどから前立腺がんの疑いが高いとされた場合、確定診断を得るために、「前立腺生検」を行います。前立腺がんが疑われる部分の組織をわずかに採取し、顕微鏡でがん細胞の有無、がんがある場合はその悪性度を見ます。 「経直腸式前立腺生検」では、経直腸エコーで前立腺の状態を見ながら針で前立腺を刺し、組織を採取します。「経会陰式前立腺生検」といって、会陰から針を刺す方法もあります。近年は、前もって決めておいた10-14箇所から針で組織を取る方法(系統的前立腺生検)が一般的です。通常、前立腺生検は外来で行われますが、合併症のある方や、画像検査の結果によっては入院のうえ実施します。 前立腺生検によるがんの検出率はおよそ30~50%とされています。前立腺生検でがんが発見されなかったとしても、定期的なPSA検査で観察を続け、PSA値が上昇した際には再生検を行うこともあります。 なお、頻度の高い前立腺生検の合併症として、血尿、血便、血精液(精液に血が混じる)があります。その他に、出血、感染、排尿困難なども起こり得ます。重篤な感染症に罹患することはまれですが、生検のあとに発熱などがある場合には担当医に報告が必要です。

画像診断(CT、MRI、骨シンチグラフィー)

前立腺生検で前立腺がんとの診断が確定すると、がんの広がり(進行度)や大きさ、遠隔臓器への転移の有無などを確認するために「画像診断」を行います。必要に応じて「CT」検査、「MRI」検査、「骨シンチグラフィー」検査などを組み合わせます。 ●CT検査(胸部~腹部)では、リンパ節転移や肺転移の有無を確認します。 ●MRI検査(骨盤部)では、前立腺内のどこにがんがあるか、前立腺の外にがんが浸潤してないかどうか、リンパ節への転移の有無などを調べます。  ※CT検査、MRI検査ともに造影剤を使用するので、アレルギー反応が起こることがあります。薬剤によるアレルギー経験のある場合は、医師に事前に伝えるようにします。 ●骨シンチグラフィー検査では、骨転移の有無を調べます。

前立腺がんの診断と病期(ステージ)分類

がんの病期は一般的に、T(腫瘍の大きさ)、N(リンパ節への転移の有無)、M(遠隔転移度合い)に基づくTNM分類に従って分類されます。 また、がんの悪性度を「グリソンスコア」という病理学上の分類に基づき2-10点のスコアで評価します。 そして、病期とグリソンスコアとPSA値の3つの因子をもとに、高リスク・中リスク・低リスクの3段階で評価され、治療方針が決定されます。
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