慢性リンパ性白血病(CLL)の治療

病状がゆっくり進行することが多く、初期に治療を行っても生存期間は延びないことから、病状の進行の程度正確に知ることが治療方針を決定するために重要です。病期分類にはいくつかの種類がありますが、いずれもリンパ節や肝臓・脾臓腫大と貧血・血小板減少の有無で分類します。

また完全に治癒することは難しい疾患ですが長期生存が可能です。また高齢者が多いため、症状緩和や病状のコントロールが治療の目的となるとこが一般的です。治療は化学療法が中心で、抗がん剤分子標的薬を単剤で使用するか、多剤併用療法を行います。染色体17p(17番染色体短腕)の欠失や、治療効果がなく予後不良と考えられる場合には、造血幹細胞移植が検討されます。

一次治療の方針は、前述のRai分類またはBinet分類に基づき決定します。

造血器腫瘍診療ガイドライン2013年版によると、活動性病態がなくRai分類が0からII、またはBinet分類がAからBの場合、海外でも同様ですが、基本的には治療介入をせずに経過観察をします。

その根拠の1つとして海外で行われた臨床試験データがあり、活動性病態のない初期のCLL患者集団にアルキル化抗がん剤のクロラムブシル(国内未承認)を投与した場合と、無治療で経過観察した場合とで生存割合に差がありませんでした

したがって、治療介入の適応となるCLLは、基本的には活動性病態があり、Rai分類がIIIからIV、またはBinet分類がCの進行期の場合です。さらに、治療負担を許容できる全身状態にあるか否か、すなわち通常量多剤併用療法が実施可能(Fit)、または実施困難(Unfit)、そして、17番染色体短腕(17p)欠失があるか否かによって治療方針を決定します

その他、貧血や血小板減少の進行・悪化、脾腫やリンパ節腫大の程度、リンパ球数増加の進行具合などを基準として治療の適応性を判断しています

なお、17番染色体短腕(17p)欠失のCLLは既存の抗がん剤が効きにくいことが実証されているため、保険適用になっているFISH法という検査によって予め確認します。17pには、前述の国際予後指標「CLL-IPI」の評価項目であるがん抑制遺伝子TP53がコードされているため、17p欠失検査は現在の実臨床では実施できないTP53検査のいわば代替の位置付けです。

2018年5月、日本血液学会は「造血器腫瘍ゲノム検査ガイドライン2018年版」を発表し、近い将来において薬事承認・保険収載の可能性が議論されている「遺伝子パネル検査」に含まれることが望ましい遺伝子の1つとして、慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫(CLL/SLL)の適応でTP53遺伝子が選択されました。

慢性リンパ性白血病(CLL)の一次治療

現在のガイドラインに沿った標準治療は以下の併用化学療法、または化学療法とリツキシマブの組み合わせですが、年齢や全身状態に応じてフルダラビン単剤、もしくはシクロホスファミド単剤、またはFCR療法の用量を減らすなどして対応しています。
(1)FC療法(フルダラビン+シクロホスファミド)
(2)FCR療法(フルダラビン+シクロホスファミド+リツキシマブ)
(3)BR療法(ベンダムスチン+リツキシマブ)

リツキシマブ(商品名リツキサン)は抗CD20モノクローナル抗体の分子標的薬で、実は慢性リンパ性白血病(CLL)は保険適応外ですが、近縁疾患であるB細胞性悪性リンパ腫の治療薬として承認されていること、これまでの臨床試験でFC療法と比べFCR療法の方が高い有効性を示すことが実証されていることから、保険適応外で経験的に使用されるようになっています。

また、ベンダムスチン(商品名トレアキシン)は2017年に日本で承認されたアルキル化抗がん剤で、臨床試験データなどから、FCR療法と比べ副作用が軽いため65歳以上の17p欠失がないCLLには有用な治療選択肢となり得ると考えられています。

慢性リンパ性白血病(CLL)の二次治療

CLLは特に日本では希少がんで患者数が少ないため、海外よりも新薬開発が遅れがちですが、2010年代に入ってからは、CLLを適応とする分子標的薬が相次いで承認されてきています。

従来の標準療法で高い障壁となっていた17p欠失がある場合や、一次治療後に再燃した場合の二次治療の選択肢として期待され、国内外で行われている様々なデザインの臨床試験データを蓄積中です。

日本での販売開始順は以下の通りです。
(1)2013年オファツムマブ(商品名アーゼラ):抗CD20モノクローナル抗体(点滴静注)
(2)2015年アレムツズマブ(商品名マブキャンパス):抗CD52モノクローナル抗体(点滴静注)
(3)2016年イブルチニブ(商品名イムブルビカ):ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬(カプセル)

こうした背景から策定された二次治療の方針では、もちろん全身状態(FitまたはUnfit)を考慮した上で、17番染色体短腕(17p)欠失ありで一次治療後の早期再発・抵抗性の場合、または17p欠失なしで一次治療の24カ月から36カ月後の再燃の場合に分けて対応しています

現在、任意治療として最も注目度が高い分子標的薬はBTK阻害薬のイブルチニブで、第1選択として定着しつつあります。17p欠失の有無を問わず同等の有効性を発揮するという点で画期的で、カプセルの内服薬という利便性の強みもあります。日本で行われた第1/2相試験では、再発・抵抗性CLL/SLLに対する二次治療として8例中5例に奏効をもたらし、安全性も確認されました。

なお、海外臨床試験データに基づき、イブルチニブによる有害事象で注意を要するのは心房細動、出血関連事象(主に点状出血、斑状出血)と報告されています。

イブルチニブは、その有用性の高さから初発の慢性リンパ性白血病(CLL)を対象とする臨床試験も海外で行われており、17p欠失のないCLLに対し、クロラムブシルと比べ無増悪生存期間が著しく延長することが報告されました

慢性リンパ性白血病(CLL)に対する同種造血幹細胞移植

同種造血幹細胞移植の適応となるのは、主にFCR療法が無効、または治療後早期再発、17番染色体短腕(17p)欠失あり、リヒター症候群などです。

移植前処置として化学療法や放射線治療で白血病細胞をある程度攻撃した後、移植されたドナー細胞は、残存している白血病細胞を異物として認識し、免疫反応によって攻撃する移植片対白血病(GVL)効果を発揮すると考えられています。

ドナー由来細胞が残存白血病細胞を攻撃・排除し続ければ再発を抑え、根治も可能と考えられます。一方で、ドナー由来細胞が宿主の正常組織をも攻撃してしまう移植片対宿主病(GVHD)とは表裏一体のため、その均衡をコントロールする管理が重要になります

慢性リンパ性白血病(CLL)を対象とする新薬開発状況

画期的なイブルチニブと同様のブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)を標的とする阻害薬のほか、B細胞腫瘍の細胞増殖を促進するシグナルカスケードに働きかけるBTK以外の分子標的薬の開発が活発化しています。

ホスファチジルイノシトール-3-キナーゼ(PI3K)阻害薬、脾臓チロシンキナーゼ(SYK)阻害薬など複数が開発中で、米国ではBTK阻害薬アカラブルチニブ、PI3K阻害薬イデラリシブが既に承認を取得しています。

また、B細胞腫瘍の活性化シグナルとは別の、アポトーシス経路に働きかけるアポトーシス抑制因子(BCL2)阻害薬もCLLの適応で開発され、米国で承認されている経口用BCL2阻害薬ベネトクラックスは、17p欠失がある再発CLLに高い有効性を発揮することが報告されています。

慢性リンパ性白血病(CLL)の類縁疾患

CLL類縁疾患の1つに、非常に稀ですがヘアリー細胞白血病(HCL)があります。

この白血病細胞は毛髪様の突起があり、細胞表面マーカーはCD11c、CD25、CD22、CD103などを発現しています。CLLと同様に進行は緩徐で、予後は比較的良好です。症状もCLLと同様ですが、脾腫大が著しい、血球数の異常減少などの所見がある場合は、フルダラビンと同様の代謝拮抗性細胞障害薬であるクラドリビン(商品名ロイスタチン)やリツキシマブが有効とされています。

また、HCLではBRAF遺伝子変異が高頻度に認められることが分かっていることから、BRAF阻害薬を試みる臨床試験が行われています。

CLL類縁疾患の中で、脾臓の著しい腫大を特徴とする脾辺縁帯リンパ腫(SMZL)があります。CLLと同様に化学療法やリツキシマブを含めた併用療法などが治療の基本ですが、脾腫大の程度によっては脾臓摘出という選択肢も加わってきます。

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