こんにちは、川上です。2024年3月10日(日)、渋谷のライブハウス「Takeoff7」にて、卵巣がん体験者の会スマイリーが主催する音楽イベント『Music Together 〜音楽とともに語ろう がんについて〜』が開催されました。
*卵巣がん体験者の会スマイリーについては、昨年9月にオンコロの「患者会に聞く」シリーズで取材させていただき、密度の濃いお話を前編・後編の2回に分けて掲載したので、ぜひお読みください。
「患者団体に聞く! 卵巣がんの会スマイリー 片木美穂さん Part1」
「患者団体に聞く! 卵巣がんの会スマイリー 片木美穂さん Part2」
「がん」と「音楽」といえば、オンコロも毎年『Remember Girl’s Power !!』で音楽を通してがん啓発に取り組んでいますので、これは参加せねば!と、行ってまいりました。
なぜ、がんのイベントに音楽なの?と思った方は、イベントの案内ページの後半に書かれている、主催の片木美穂さんの想いを読んでください。もとい、「なぜ」と思わない方にも読んでいただきたいです。
片木さんが縁あって知り合った、岡山発ゆるふわハードPOPバンド EastBellのボーカル ハルさんは20代で乳がんに罹患、手術、放射線治療、抗がん剤を経験したサバイバー。そのハルさんの歌を聞いた、治療の副作用で声が出にくくなっていたスマイリーのある会員さんが、歌うことの楽しさを思い出すとともに、未来志向に気持ちが切り替わったそうです。その会員さんは残念ながら2019年に亡くなられ、スマイリーに寄付を残しました。このイベントは、その寄付の有効な使い道として企画されたものだったのです。企画はコロナ禍でしばらく実現がお預けになっていましたが、この日にやっと実現したわけです。
はじめに、主催のスマイリー代表、片木美穂さんからの開会ご挨拶。この企画の背景や込められた想いが語られました。
第1部の進行は、フリーアナウンサーの石森恵美さん。
石森さんは2010年に夫、翌年に義姉、さらに次の年に義母をいずれもすい臓がんで亡くされたご遺族のお立場で、ホスピスでのボランティア、グリーフケアなどさまざまな活動をされています。
石森さんとは、私が裏方を務めた一般の方向けがん啓発イベント「グリーンルーペプロジェクト2018」でも総合司会を務めていただいたのですが、それ以来の再会でした。
さすが石森さん。会場がすぐに、あったかくて、ほっこりした空気に包まれました。
続いて、勝俣先生がゲストのトークとライブ。
石森さんと勝俣先生のトークでは、2024年2月1日に出版されたばかりの著書、「あなたと家族を守る がんと診断されたたら最初に読む本」に書かれた内容をご紹介しながら、緩和ケアは人生を豊かにするものであり、生活の質を高めることが、寿命を延ばすことに繋がること等が語られました。そこに音楽も大きな役割を果たしている、と。
そして勝俣範之先生のステージ。
勝俣先生の歌は、作詞は勝俣先生の患者さん、作曲は勝俣先生ご自身でされたもので、どの歌も、歌詞の至るところに癒しがちりばめられていました。
「がんばらな~い♪」、「ち~さな幸せみつけよう、今日を生きるちからにしよう♪」、「だらだら過ごす最高の日々~♪」いやー、私も一緒に歌って、癒されましたよ。
そして、更にゲストとして、朝日新聞記者で精巣がんサバイバーの上野 創さんが登場。トークでは、受験や就職などは自分の努力で頑張ってなんとかしてきたけれど、がんを経験したことで、頑張ってもどうにもならないことがあることを実感し、幅広い視点を持つことができたと語られました。上野さんのバイオリンと勝俣先生のギターのコラボもまた素敵でしたよ!
ここで第1部は終了。
第2部開会までの間に物販などを物色。
スマイリーのオリジナルタオル(今治ブランドです!)やカラフルなTシャツ等。なかなかにセンスの良いお品が並んでいました。私もオリジナルタオルをゲット。
さて、第2部は、卵巣がんサバイバーでチャンネル登録者1万人以上のYouTuber、さくらさんが登場。
さくらさんの自己紹介では、ご自身のがん体験だけでなく、2度結婚され、2回ともご主人をがんで看取った遺族の立場でもあることをお話され、第2部のゲストの、ハルさんを舞台に招きます。
ハルさんは、26歳で自分でシコリを見つけたことを機に乳がんがわかり、手術、放射線治療、抗がん剤、とフルコースの治療、数々の副作用や合併症を経験されました。さすがアーティストだけあって、闘病時の体験や心情についてのお話は、表現が豊かで、身に迫るものがありました。
AYA世代でがんを経験した立場のハルさん、ご主人をAYA世代で看取られたさくらさんは、妊孕性についての悩みで意気投合されていました。
ハルさんは、闘病していたときに、沖縄で難病と向き合っている少女のことをSNSで知りました。その少女が渡米して治療できるように、と、SNSでは支援の輪が広がっており、そのことに自身も勇気づけられ、また小さな命をインターネット上の繋がりが救おうとしていることにインスピレーションを受けて作った楽曲「緋寒桜(ひかんざくら)」、をソロで熱唱してくれたあとは、ハルさんがボーカルを務める、岡山発ゆるふわハードPOPバンド、EastBellのメンバーで「Smile」、や「Hope」といったオリジナルソングを届けてくれました。
ハルさんが経験されてきたことを想いながらEastBell の楽曲を聞いていると、歌詞が心に突き刺さります。
つまずいた日 迷った日 ぶつかった日 転んだ日
あるがままの自分さえ 見失いそうになってしまうよ
朝焼けの向こうに見える景色は
僕らの夢描いた明日への扉
病院のベッドの上で何度も眠れぬ夜を過ごし、朝焼けを眺めていたであろうハルさんの心に、こうした歌詞のフレーズがストックされていったのでしょう…。
EastBell のリーダーで、ギター担当のGeorgeさん(写真右)が、MCで「自分はがんになったことがないから、がん患者さんのことは、わからない。でも、わからなくたって、できることはある。音楽で少しでも元気になってもらえたら。」と語ったのが印象に残りました。
久しぶりの音楽イベントに参加して、懐かしい面々とリアルでお会いして、トークと、音楽そのものも楽しむことができました。これまで想いを込めて、長い時間準備してこられた片木さんはじめ、スタッフの方々、お疲れさまでした!丁寧につくられたイベントだということが、そこかしこから伝わる、温かい時間でした。
帰宅して、その日の夜、主催の片木さんから参加者にメールが届き、参加の御礼とご報告が綴られていました。こうした早いアクション、大事ですよね。素晴らしいです!
ご報告によると、イベントで集まった寄付は58,172円。物販の売り上げは149,000円だったそうです。
EastBellさんのCDも「Smile」が入ったアルバムは完売。勝俣先生の本も30冊購入されたとのことでした。
開催した会場の「Takeoff7」渋谷は、これまでに米米クラブやドリカム、最近ではOfficial髭男dismなどもライブをする、由緒ある会場だそうで、多くのバンドがここから羽ばたいていったとのこと。このイベントは、ご協力いただいたライブハウスのオーナーさんからも「良いイベントだった」と褒めていただいたそうです。EastBellも羽ばたいていく予感しかしません。
スマイリーの皆さん、準備・運営とも大変だったことと思いますが、第2弾、期待しています!