※本記事はEvaluate社の許可のもと、オンコロが翻訳したものです。内容および解釈については英語の原文を優先します。正確な内容については原文をお読みください。
バイオテクノロジーが景気回復をもたらすか?ノバルティスは細胞治療分野を独立させるのか?バイオ医薬品領域に関する予想を紹介する。 Evaluate Vantageの2023年版プレビューの一環として、読者の皆様にこの分野における大胆な予測をいくつか伺ったところ、以下のような答えが返ってきた。中には、遺伝子編集の分野が消滅に向かうなど、実現不可能な予測もあるが、いくつかの意外な予想は一考に値する。 例えば、昨年(2022年)のこのページでは、レカネマブのClarity-AD試験の成功を予測したが、それは12ヶ月前の全くの楽観的な見方であった。では、バイオ医薬の方向性を狂わせるか、あるいは新たな可能性に導くものはあるだろうか? これらの回答は、IPO(新規上場)、M&A(買収)、投資家心理に関する世論調査の一環として実施されたものである。投資家、銀行家、業界関係者ら約150人が回答し、回答は匿名で行われた。 市場動向 来年(2023年)のバイオ製薬業界の状況は、厳しい市場環境と資本コストの上昇という、現在と同じような状況になる可能性が高い。そのため、予想をはるかに超える早い回復を期待する声が多く寄せられた。 バイオテクノロジー分野が非常に好調、市場を低迷から脱却させる、大きな景気後退はない、ナスダックが躍進する、10億ドル以上の新興企業が次々と誕生する―残念ながら、こうした楽観的な見方は、今のところ実現不可能な話と受け止めざるを得ない。 多くの回答者が回復を予想することすらできないでいる。また、ダウンラウンド(上場時の株価が上場前の資金調達時の株価よりも下回ること)やバリュエーション(利益や資産などの企業価値評価のこと)の調整の増加、前臨床パイプラインと高いバリュエーションでIPOをした企業の衰退、リスクキャピタル(自己資本・株主資本)会社の更なる保守的な姿勢を含む予測もあった。こうした予測を非現実的だと考える人はほとんどいないだろう。 バイオテクノロジーについては、インフレ抑制法の一環である薬価に関する米国の新しい法律が変更されない限り、「投資対象外」であるとする意見もあった。この分野での予測は、IRA(米国の個人年金積立て制度)の大規模な修正か、大幅な強化のどちらかであるが、現状維持が現時点での落とし所であろう。 FDA(アメリカ食品医薬品局)はどうだろうか?米国の有力な規制当局は今年、迅速承認の規制を厳しくしており、新薬の承認が後退していることに懸念を抱いている。2023年には承認件数がさらに大きく減少することが予想される。 M&Aと戦略 大手製薬会社のトップが交代するという予想が人気を集めたが、これもまた非現実的な話ではないかもしれない。英グラクソ・スミスクライン社、仏サノフィ社、米ノバルティス社のCEOであるEmma Walmsley氏、Paul Hudson氏、Vas Narasimhan氏の地位が不安定になると回答者は考えているようだ。 スイスの大手製薬会社の経営陣が交代するという予測はよく聞かれることで、このニュースがより現実味を帯びてきたと言えるかもしれない。M&Aの転換と細胞療法事業の独立は、ノバルティス社の方向性を示すものとして挙げられた。 また、グラクソ・スミスクライン社と英アストラゼネカ社のような大手製薬会社の合併は、特別な予測であった。サノフィ社がサノフィとパスツールに分割されるという逆の傾向を予測するものもあった。米ファイザー社が「大型医薬品と大型M&Aの時代へ」と宣言したのは、確かに同社の戦略とは逆行した提案である。一方同社は、2022年にCovid分野に資金を進んで投じた。 もう一つ人気の高い長期的なテーマは、プライベートエクイティ(ファンド)によるM&A活動の大幅な拡大で、資金繰りに窮したり破綻したりしたマイクロキャップ(超小型株式)を巻き上げるというものである。プライベートエクイティは、資金流出よりも資金流入を重視するため、可能性は低い話であるが、最近のベンチャー企業への進出は注目に値する。 M&Aに関する具体的な予測は、プレビューにてご確認ください。 臨床現場では? 研究開発の方向性はどこに向かうだろうか?思いがけずCTLA-4が再び注目されるなど、腫瘍免疫学の方向性を予測する回答が複数あった。また、「別の重要な腫瘍免疫系のターゲット」の出現や、腫瘍免疫学への投資額が大幅に減少するとの意見もあった。 免疫腫瘍学の進歩は、ここ数年の投資額に対して間違いなく追いついておらず、投資額を維持するためには、目に見える進歩がすぐに必要であると言うのが事実だろう。 この分野での苦戦を考えると、「加Oncolytics社が大成功する」という予測は注目すべきだろうし、「固形腫瘍における細胞療法が画期的に進歩する」という予測に関してもそうだ。 細胞療法での大失敗も、それに並ぶ以外な意見としてあがった。「固形がん治療の進歩は…毎年予想が外れるので非現実的!」 オンコロジー以外では、GLP-1/GIP系の薬剤の長期安全性懸念は確実にこの業界を揺るがすだろう。この種の薬剤は、米イーライリリー社のマンジャロ(一般名:チルゼパチド)やその他いくつかの開発プロジェクトに含まれており、大きな将来性が予想される。 来年がどのような年になるにせよ、この分野にはいくつかの意外な出来事がもたらされる違いない。何人かが指摘したような新たなパンデミックは、もう誰も見たくないだろう。ここに詳述されているいくつかのシナリオは、可能性が高いものもある。しかし、アーセナルがプレミアリーグで優勝する?君が一番よく知っているだろう…。あなたは医師ですか。