World Lung 2021 –トレメリムマブは精査には耐えたEvaluate Vantage(2021.09.09)より


  • [公開日]2021.09.21
  • [最終更新日]2021.09.21

※本記事はEvaluate社の許可のもと、オンコロが翻訳したものです。内容および解釈については英語の原文を優先します。正確な内容については原文をお読みください。

 

Poseidon試験の全データにより、抗CTLA-4 抗体の活性が確認されている。しかし、3つの併用療法が確立された今、それだけで十分なのだろうか。

英アストラゼネカ社のPoseidon試験の全データにより、非小細胞肺がんの一次治療において、イミフィンジ(一般名:デュルバルマブ)と化学療法トレメリムマブを追加することで、驚くべきプラスの効果が得られることが確認されたと、世界肺癌学会議のプレジデンシャルセッションで発表した。

トレメリムマブの悲惨な臨床開発の歴史にもかかわらず、そのデータのあらを探すことは難しく、完全な結果では、2つの患者グループが抗CTLA-4抗体から特に強いベネフィットを得ているようだ。しかし、Poseidon試験と他の試験の比較により、米MSD社、スイスのロシュ社、米ブリストル・マイヤーズ スクイブ社の既存の薬剤よりもアストラゼネカ社の薬剤を医師が優先的に処方する理由にはならないだろう。

とはいえ、アストラゼネカ社は今年(2021年)の下半期にPoseidon試験の結果に基づき、規制当局に承認を申請したいと述べている。イミフィンジはステージ3の非小細胞肺がん(NSCLC)で既に適応を有するが、転移性NSCLCの一次治療薬としての適応を取得するのは初となる。トレメリムマブはいかなる適応症においても承認されていない。

Poseidon試験は、昨年(2020年)10月に無増悪生存期間(PFS)が良好と発表され、イミフィンジ+トレメリムマブ+化学療法と同様にイミフィンジ+化学療法を支持する結果となった。今年5月には全生存期間(OS)が、そして今回はトレメリムマブを含む3剤併用療法のみを支持する結果となった。Poseidon試験の主要生存評価項目はイミフィンジ+化学療法の2剤併用療法のみに関連していたが、生存期間中央値(mOS)では失敗したものの、副次評価項目であるOSでは、3剤併用療法の有効性を確認するのに十分なデータ量であった。

良い知らせ

今日(9月9日)の世界肺癌学会議で、米サラ・キャノン研究所のメリッサ・ジョンソン博士は、初めにイミフィンジ、次に化学療法を追加することで、PFSとOSの中央値が数値的に増加することを明らかにした。安全性に関しても良い知らせがあり、「ほとんどの有害事象(AE)は化学療法によって引き起こされた」と彼女は述べている。重度および重篤なAEは3剤併用療法で最も多く発生したが、AE関連の投薬中止は全体的に同等だった。

これは、個別にみれば大変結構なことだが、Poseidon試験の結果に基づきトレメリムマブが承認されれば、アストラゼネカ社はNSCLCの一次治療ですでに承認されている3つの化学療法併用療法、すなわち、メルク社のキイトルーダ、ロシュ社のテセントリク、ブリストル社のオプジーボ+ヤーボイと競合することになる。

これにより、たとえ信頼性が低くても、試験同士の比較を行うことができる。おそらく最も明らかなのは、Poseidon試験とブリストル社のCheckMate -9LA試験との比較だろう。このCheckMate -9LA試験もPD-1抗体+CTLA-4抗体+科学療法の併用療法に関するものだ。

Poseidon試験は化学療法単剤の場合と比較して、PFSとOSの中央値をそれぞれ1.4ヶ月と2.3ヶ月延長したのに対し、ブリストル社の既存薬では1.8ヶ月と3.4ヶ月であったことから、アストラゼネカ社の優位性がないことは明らかだ。

ジョンソン博士の発表の中で特に印象的だったのは、Poseidon試験のにおいて、3剤併用療法の効果が特に高かった2つの患者グループが明らかになったことだ。PD-L1陰性の患者は、2剤併用療法では生存率が上がらなかったが、3剤併用療法では死亡リスクが30%減少し、組織型が非扁平上皮型のNSCLC患者でも同様であった。

ジョンソン博士によると、生存率の向上は扁平上皮型よりも非扁平上皮型で顕著であり、Poseidon試験では非扁平上皮型の死亡リスクは3剤併用療法で30%減少したが、イミフィンジと化学療法の併用療法では18%しか減少しなかった。このように、Poseidon試験では、3剤併用療法が2剤併用療法に比べて有益であったのは、PD-L1陰性および/または非扁平上皮の患者であったという可能性がある。

たとえそうであっても、異なる試験をさらに比較してみると、処方する者にとってはあまり意味がないかもしれない。キイトルーダとテセントリクは、それぞれKeynote-189試験とImpower-130試験という非扁平上皮組織型の患者を対象とした個別の試験に基づいて、化学療法との併用療法としてNSCLCに対する一次治療の適応を有している。

繰り返しになるが、試験同士の比較では、Poseidon試験のPFSとOSの効果はほとんど認められていない。トレメリムマブは承認されるだろうが、既存の製薬会社はほとんど心配する必要はない。

■出典
World Lung 2021 – treme stands up to scrutiny

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